あさのあつこによるベストセラー小説「NO.6」が、2024年11月にミュージカル化される。脚本・演出・音楽は浅井さやか、今牧輝琉と古田一紀がW主演を務め、熊谷彩春、日暮誠志朗、泰江和明、藤原祐規、入絵加奈子、吉野圭吾と実力派が顔をそろえている。紫苑役の今牧輝琉とネズミ役の古田一紀にインタビューを行った。
人と人の出会いで生まれる葛藤や変化を見せたい
――出演が決まった時の思い、意気込みから教えてください
古田 やると決めたからには一生懸命やろうと思いました。役者としての僕のセールスポイント・強みは「誰よりも頑張る」こと。それがオファーをいただける理由だと思うので、今回も成し遂げたいです。
今牧 もちろん嬉しさもありましたが、学生時代に友人が読んでいたので「あの「NO.6」？」というプレッシャーが大きいです。でも、一紀さん同様、死ぬ気で頑張りたいと思います。
――「NO.6」の物語に触れたことはありますか？
今牧 子供の頃は、あまり本を読んでいなかったんです。この作品に出会えたのも何かの縁だと思い、いま小説や漫画を読んでいます。現代社会に対する問いかけのようなものを感じる作品だと思います。
古田 小説と漫画を全部読みました。「一人で生きていくには人生は長く、苦しいことが多すぎる」ということが描かれていると思います。ネズミは失う悲しみを知っていて、背負うものが多くなると弱くなると思っている。リスクを抱えないと誓って生きてきたけど、紫苑に出会って関わらずにいられなくなる。人生ってそういうことなんだと思います。どうしても人と関わらずにいられない、人と人が出会って考え方や人生が変わっていく部分を大切に演じたいです。自分でコントロールできない気持ちに振り回されるネズミを表現することが大事だと思っています。
――演じるキャラクターの魅力、自分との共通点はどこに感じましたか？
今牧 紫苑は自分の行動に胸を張ることができる人。そこが魅力であり、僕が紫苑に憧れている部分でもあります。もし、自分の行動に対して「間違ったことをしたと思ってる？」と聞かれたら、僕なら迷ってしまうかもしれない。でも、紫苑ははっきりと意思を持って揺らぐことなく進んでいくのがすごいなと思います。
古田 ネズミは発言に対してすごくシビア。自分もそういうところがあるので、言葉に対して敏感なのは共通点だと思います。あと、自分が成し遂げようと思ったことを絶対に達成できると信じているのも似ています。
紫苑とネズミに近い関係性から作っていける二人
――ビジュアル撮影はいかがでしたか？
古田 フルウィッグの経験がなかったので、（ウィッグの下で地毛をまとめる）ネットの着け方がわからず（笑）。そのぶん「ウィッグをかぶる」のを役に入るスイッチにできそうだと思いました。普段の自分とは全く違う見た目になるので、ポジティブな影響を受けられそうです。
今牧 ここまでしっかりセットが組まれたスタジオでの撮影が初めてで新鮮でした。「NO.6」のために作られたんじゃないかと思うスタジオでワクワクしました。何より、一紀さんとお会いするのは2年ぶり、2度目なので緊張しましたね。
古田 自分じゃない人物の格好をしてビジュアル撮影をするのもすごく久しぶりでした。どの写真もみんな良くて、シンプルに撮影技術の進化を感じました（笑）。
――改めてお互いの印象、今回の共演で楽しみなことはいかがでしょう
古田 1回しか会ったことがなかったので、出演されている舞台を見に行っても面会はしていなかったです。でも、そのわからない部分を大事にしたいです。ちょうどネズミと紫苑が出会うくらいの関係性から始まるので。
今牧 同じです。でも、2年前にご一緒した時は周りに人がたくさんいる中で一紀さんが僕の緊張をほぐしてくれた。助けてもらって嬉しかった記憶があります。今度は舞台でタッグを組めるのが嬉しいです。
古田 正直、意外じゃないですか？僕は尖っている方だと思うんですが、面倒を見ちゃうのがネズミっぽいと思う（笑）。人とすごく仲良くしたいという気持ちはないけど、なんだか声をかけちゃった。
今牧 さては惹かれるものがあったんですね（笑）？
古田 そこは紫苑とネズミっぽいですよね。
――舞台版の見どころになりそうな部分、楽しみなことはありますか？
古田 戦うシーンですね。自分が作りたいのは、ちゃんと命のやり取りに見えるやりあい。本気で戦っていたら、フェイントを入れたり泥臭い攻撃が入ったりすると思うんです。アクション担当の方と相談しながら、見栄えの良さから一歩踏み込んで、ヒリヒリした戦いを見せたいです。
今牧 「NO.6」に初めて触れた時、ミュージカルにしたらすごく面白そうだと感じました。小説や漫画で少し表現しづらい部分が歌になっている印象を受けましたし、浅井さんの歌詞がまた幻想的で美しいので楽曲が楽しみ。共演する皆様もミュージカル界のすごい方ばかりで、本番はもちろん、稽古も含めた全てが楽しみです。
全力で挑み、「NO.6」を大きく盛り上げたい
――今回W主演のお二人。主演を務めるときに心掛けていること、大切にしていることは何ですか？
今牧 僕はあまり人に強く言えない性格で、ガツンと言わないといけない時は周りの方が助けてくださることが多いです。自分にできる精一杯をやって、その姿でカンパニーの皆さんが何か感じてくださることがあったらいいなと思います。意識してやっているのは毎日絶対に全員と会話することですね。
古田 自分は言うタイプですが、それはあくまで作品とお客様のため。いろんな主役・座長の形があると思います。自分のタイプを考えると、自分が頑張っているからついてこいというタイプ。一番頑張って周りにも「頑張らなきゃ」と思わせたいです。
――紫苑とネズミの奇跡的な出会いから始まる物語ですが、お二人にとって、奇跡の出会いと呼べるものはなにかありますか？
古田 去年、釣りがしたくて沖縄に行きました。現地の方が沖縄の役者さんも集めて釣りをする会をしてくれたんですが、実は沖縄ってそんなに釣れるわけじゃない。でも、5時間くらい粘って僕だけ釣れて、みんなすごく喜んでくれた。その場にいた全員にとって思い出になったと思うので奇跡だったと思うし、“持ってる”なと自分で思いました。
今牧 ありきたりですが、仲良くなった人は全員奇跡の出会いだと思います。後々振り返って、「あの時少しでも何か違っていたら」と考えることがあるんです。でも、それは僕の行動だけじゃ成立しない。相手も行動しなければ出会えなかった人もたくさんいるので、それはもう奇跡ですね。
――楽しみにしている皆さんへのメッセージをお願いします
古田 この作品のための稽古だけじゃなく、今までやってきた全てをこの作品で出そうと思っています。10代後半から20代にかけてやってきたことを集結させた最終決戦くらいの気持ちで臨みたいし、それができそうな箇所がたくさんある。全て作品に注ぎ込むのを見にきてほしいです。
今牧 情報解禁の時に「NO.6」がトレンド入りしていて、海外でも楽しみにしてくださっている方がたくさんいました。前から大好きだった人たちがもっと大好きになってくれるようにしたいです。改めてこの作品を思い切り盛り上げようと思っているので、ぜひ楽しみにしてください。
インタビュー・文／吉田沙奈
Photo／村上宗一郎
