写真左から)小松和重、岡本昌也、大倉孝二、後藤剛範、藤谷理子、岩井秀人、川上友里、田村健太郎、伊勢佳世
撮影/平岩享
12月19日(木)に東京・本多劇場にて、ハイバイ20周年『て』の公演が開幕した。
作家・岩井秀人の実の家族をモデルにした本作は、岩井の家族が過去の関係を清算しきれず、お互いの分かり合えなさに沈んでいく様を壮絶に描いた、厚みある悲喜劇。
次男と母、二つの目線で同じ時間を繰り返す構造が、「家族」という切っても切れないはずの関係を力づくでねじ切り、その傷跡を我々に見せつける。ハイバイ流の「笑うしかない」切実さと悲惨さのバランスは、この作品で形成された。
2008年の初演以来、再演を重ねるたびに当日券を求める観客が、劇場前に列をなしてきた本作は、このたび「完全版」としてキャストを一新。そして、岩井が演出するのは今回が最後となる。
ハイバイ初の東京・本多劇場公演に加え、富山オーバード・ホール、高知県立県民文化ホール、兵庫県立芸術文化センターでも巡演。なお、東京公演では下記のとおりアフタートークが開催される。
★ハイバイ20周年『て』 アフタートーク開催回
12月19日(木)19:00回 ゲスト:大倉孝二、小松和重
12月20日(金)19:00回 ゲスト:前川知大さん(イキウメ主宰)
12月23日(月)19:00回 ゲスト:大原櫻子さん
12月26日(木)19:00回 ゲスト:ユースケ・サンタマリアさん
このたびの開幕に際して、作・演出を務めて出演もする、岩井秀人から開幕コメントが到着した。
岩井秀人 コメント
ハイバイの岩井です。
ハイバイ20周年公演『て』が、いよいよ12月19日(木)から本多劇場で始まりました!
この『て』は、2008年の初演時に下北沢駅前劇場にて、当日券を求めて並ぶお客さんの行列ができ、なおかつわたくし岩井が「あ、現実ベースの物語を書いていこう」と心に決めるきっかけとなった作品でもあります。
ご覧いただいた方々から、「自分の家族を思い出した」「自分の過去に別の視点が持てた」といった感想をいただき、「演劇って、そういう効能があるんだなあ」と学ばせてもらった作品でもあります。
あれから16年。全国で公演を重ね、ロンドンでリーディング、韓国ではソウル演劇祭にて作品賞他3冠獲得した、ハイバイの大大代表作に育った『て』が、下北沢へと帰ってまいりました。
岩井秀人という一人の作家の「どーしようもない家族のハナシ」が、16年間も世界を旅した果ての姿を、ぜひご覧いただきたいと思います。
めちゃくちゃ素晴らしいキャストが揃いまして、稽古の進行も猛スピードでした。おかげで5連休ぐらいしました。もうこれ以上のブラッシュアップはないかな、と思います。
つまり、『て』の演出は、これにて完了しましたので、僕が演出するのは、これで最後になります。
ぜひこの機会に見ていただければと思います!
岩井秀人
舞台写真
舞台写真:撮影/平岩享