ONWARD presents 劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season 鳥 Produced by TBS 池田成志インタビュー

劇団☆新感線の人気作『髑髏城の七人』連続上演の2シーズン目となるSeason 鳥

新感線への出演は今作で12度目となる池田成志だが、意外にも『髑髏城〜』への出演は今回が初めてになるという。個性豊かな「芝居強者」が集うについて、池田が担う「贋鉄斎」役について、作品へ挑む現在の心境を聞いた。

 

−−池田さんは『髑髏城の七人』初参加ということですが、この作品自体に関してどのような印象をお持ちですか?

 

池田 『阿修羅(城の瞳)』と『髑髏〜』が新感線の看板みたいな作品だということは分かっているけれど、一時期、『髑髏〜』の耽美色が強くなり過ぎて、散りゆく者への美学に重きがいったような気がしたんです。古田(新太)や劇団員たちが若かった頃はみんな相当元気で、お客さんにも「多分このキャラ死なないよね」みたいに見えたと思う。そのキャラたちが芝居の後半で死んでいく、そこが面白かったんだけど、その辺が変容していき、散りゆく者が命を捨てていく、みたいな美学に傾いた時、「ここまで死の匂いがするのは新感線っぽくないな」と感じました。「(物語の終焉を迎えたキャラクターたちが)きっとどこかで生きているのだろう」と思えるくらいが丁度良いと思っていて。今回を観たらその方向へ近づいていたので、個人的に好感を持って観られました。もおそらくそうなると思います。後半の耽美色を強くするより、前半を明るく作った方がいいよと以前伝えたことがあるんです。

 

-−“鳥”らしさ、“鳥”の特徴、その辺りのことはどう思われます?

 

池田 捨之介のキャラが今までと大幅に異なり、それは脚本段階から窺えます。なので、これから稽古を通して、更に「格好良くていなせな捨之介像」はなくなると思う。そうなると、その捨之介と一緒に稽古をすることで、他のキャラを含めた全体像が大きく変わっていきますよね。稽古を踏まえてみんな自ずと変容していくはず。それが一番大きな特徴なんじゃないかなぁ。それと、歌や踊りのエンタメ要素が入ってくるのはいつもの新感線だけど、にあれだけの要素を詰め込み、はそれプラス歌と踊りが入るとしたらどれだけ長くなるんだ!? という心配はあります。稽古場でも「長くないですか?」と言うつもり(笑)。を観ていても「これから髑髏城へ乗り込むぞ」という前に一回休みたくなっちゃって、「一度背伸びをするシーンを入れたらどうですか?」と言いました。やはり長いのは(観客の)負担ですからね。あの劇場だと途中退席も難しそうじゃないですか。だからという訳でもないけれど、なるべくテンポよくやれるよう心掛けたいです。

 

−−“鳥”の上演は“花・鳥・風・月”の二番目という流れになりますが、この「二番目である」ということは意識されますか? 例えば、四コマ漫画の二コマ目とか、起承転結とか、野球で言う二番バッターとか、二番という順番には様々な意味合いが含まれるのでは? と想像しました。

 

池田 起承転結というよりも「序破急」(※三段構成)に近いのかな? 最初はオーソドックスに始めて、二番目は「突破したい、崩したい」のでは。いのうえ(ひでのり)さんもの上演経験を経て、あそこはこう出来る、ああ出来ると考えているはず。だから、で一度崩しつつ、その次は原点回帰を狙うんじゃないかと思います。この企画は、お客さんに「なんだ、同じことやってるじゃん」と思われることが一番まずいわけで、だからこそは大胆に変えてくるだろうと。(阿部)サダヲの捨之介は従来のイメージとは全然違う。(森山)未來くんや(早乙女)太一くんは既に一度やっている役だけど、サダヲの捨之介と関わることで、天魔王も蘭兵衛も変わる。そこの面白さじゃないかなぁ。今回は芝居達者の人ばかり集まっているので、おそらくどれだけ崩しても大丈夫。一本目を観た人が「次も観たいな」と思うような二本目になることは間違いないと思います。

 

−−ガラリと変わる二本目。池田さんはじめ俳優さんにとって、大きなやり甲斐になる?

 

池田 いやー、でもこの企画、役者としてはやりづらいですよ(笑)。お客さんはどうしたって比べますから。一年を通して同じ作品を上演し、お客さんは何度も来て、それらを観比べる。ある種歌舞伎のような、通好みの楽しみ方ですよね。そこに晒される役者は大変(笑)。贋鉄斎も「古田がああいう出で立ちだったから、俺はこうする」とか考えないようにしています。俳優各々がとの比較を意識しちゃうよりも、アンサンブルで魅せた方が絶対に面白くなる。俺がどうこうより、あくまで芝居が成立すれば良いのであって。

 

−−池田さん演じる贋鉄斎。ファンが大いに期待を寄せるポイントだと思います。

 

池田 の古田があまりにも卑怯な手を使っているので、本人にも「お前、卑怯だな〜」と言いました。ああいうのは先出しジャンケンだから、先にやった者勝ち。でも、古田と話していて、「まぁ今度の相手はサダヲだからさ」と言ったら、古田も「なるほどね」と。古田の贋鉄斎に対抗して俺のキャラがどうと言うより、要するに俺とサダヲのやりとりが可笑しければいいわけで。先程も言いましたが、現時点で贋鉄斎をどうしようこうしようということは、あまり考えていません。俺とサダヲが普段喋っている感じのまま、稽古をしたい。新感線の場合はいつも稽古場勝負だから、事前に自分で組み立てないようにしています。サダヲと稽古をするのは楽しいので、とにかく今は稽古が楽しみ。あまり作戦は立てません。一発目の稽古場が勝負です。

 

−−池田さんから見た「俳優・阿部サダヲ」の印象は?

 

池田 いつも「こいつ真剣にやっているのかな?」と思いますね(笑)。そこが人気の秘訣なんだと。あいつ、遊んでいるみたいに芝居をするじゃないですか。笑いながら芝居をしたりするから、つられて笑っちゃうんですけど……、あいつも俺の顔を見ると笑うしねぇ。そこが非常にかわいいし、魅力的なところじゃないかな。ただ、自分たちだけが楽しむのではなく、楽しげにやっている様子そのものが客席へ伝わるようにしたいです。

 

−−今のお話と繋げつつ、「この公演で『楽しみにしていること』を教えて下さい」という質問で、インタビューを締めさせて頂ければ。

 

池田 楽しみにしていること……。いま思い浮かぶのは、暑いだろうなとか、キツイだろうなとか、そういうマイナスのことばかりなんですが、案外こう見えて、サダヲと絡む機会もそうそうないんですよ。一緒の作品には出ていますけれども。未來くんも太一くんも一緒にやったことないし、(福田)転球も(梶原)善ちゃんもない。よく知っている人たちだけど、一緒の舞台に立つことは割と珍しいので、それは楽しみだなぁと思います。今回に限らず、もっぱら「こいつと一緒に芝居が出来る!」ということだけが楽しみなんですよ。他のことはあまり考えない。

 

−−“鳥”の出演者クレジットを見ると「座組の妙」みたいな魅力を感じます。

 

池田 そう、座組の妙はありますよね。あまり見かけない、良い座組だと思います。しかも新感線経験者が多いので、独自ルールの説明がいらないとか、そういうこともプラスに働くかもしれない。今回の座組はの強みになり得ると思います。

 

■プロフィール■

イケダ ナルシ

1962年9月27日生まれ。福岡県出身。俳優。1982年より俳優活動を始める。2013年に紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞。劇団☆新感線には12作目の出演となる。

取材・文/園田喬し

撮影/村上宗一郎