これが初共演の三浦翔平、村井良大がピカソとアインシュタインに!
映画俳優にして人気コメディアンのスティーヴ・マーティンが脚本を書き、’93年にアメリカで初演されて話題を集めた舞台『ピカソとアインシュタイン』。世紀の大天才2人が、パリで現存するバー“ラパン・アジール”でもしも出会っていたら……? そんな発想からスタートしたこの作品、日本では’97年と’00年にアメリカ版と同じ演出家、ランダル・アーニーの演出、岡本健一、川平慈英の出演で上演され、好評を博した。それから19年ぶりの上演となる今回、岡本、川平コンビとダブルキャストという形でこの作品に初挑戦することになったのが、三浦翔平と村井良大だ。しかもこの2バージョンの舞台が一筋縄でいかないところは、どちらのコンビも“ピカソ”と“アインシュタイン”として出演しない回には、“シュメンディマン”と“未来からの訪問者(実はアメリカを代表する歌手)”役で出るということ。こんな前代未聞の企画に挑むことになった三浦と村井だが、実は同い年、それも同じ6月生まれだということがこの場で発覚。そしてこれが初共演でもある二人は、この作品への出演の話を果たしてどう受け止めたのだろうか。
三浦「まず、この2役を4人で回すという新しい試みがすごく楽しそうだなというのが第一印象でした。でも、同時にセリフ量がハンパないということにもすぐ気づきましたけどね。僕はこういったスタイルのストレート・プレイは初挑戦なんですが、村井先輩は(笑)いっぱい経験されていらっしゃるみたいなので、いろいろ教えてもらいたいと思っています」
村井「先輩って、同い年じゃないですか!(笑) ストレート・プレイ、それもコメディとなると空気感の作り方が大切なので、最初はそこで苦労するんですよね。なにしろ今回は台本が意外と難解なので、空気をつかむまでに時間がかかりそうな気がしています。あと海外の演出家の方なので、日本語の感じと英語の原文の感じが、どうズレていくか、もしくはうまく一致するのか、その戦いがありそうだなと予想します」
――そして今回の舞台では、この誰もが知る天才たちをそれぞれ演じることになったわけだが。
村井「僕が台本を読んで思ったのは、意外とピカソだ、アインシュタインだということはそれほど強調していないので、そこがとてもいいなあと。もちろんお客さんは、ピカソとアインシュタインだと思って観るんでしょうけどね。またそこに、ピカソとアインシュタインがもし出会っていたらどうなっていたかというフィクションが、大嘘があるというのもすごく面白い。まあ、演劇って大抵のものが大嘘なんですけれども(笑)」
三浦「僕は、そもそも出会わないはずの二人が出会うところから始まる話というのが、あまりにもファンタジー過ぎてまだよく意味が分かっていないんです(笑)。でも僕が演じるピカソは、今自分にある知識の中ではものすごく歴史的でアートな人物。一方のアインシュタインはといえば、相対性理論を発見してベロ出してたおじいちゃんってイメージですが(笑)。でも絶対にそれだけではなく、いろいろ掘り下げていけば、なぜこの時期にこの絵を描いていたのかといった話も見えてくるだろうと思うので、そこは稽古が始まる前までには調べて、少しでも役に近づけていけたらと思っています」
村井「僕は、アインシュタインのことをとりあえず付け焼刃で調べてみたんですけど(笑)。アインシュタインといえば、三浦くんも言っていた、あのベロを出している写真が有名ですけど、ああいう表情は実はあの一枚だけなんですよね。基本、笑わない人だったらしいです。あの写真のせいで陽気な人だったみたいなイメージにとらわれやすいけど、実際はそうじゃないとか。そういうギャップも、今回の物語の面白さにつなげられるのかなあとも思っています。そういう意味でも、あまり固定概念に縛られずに、もちろん台本に書いてあることには沿いますが、ひとりの人間としてアインシュタインを描きたいですね」
――さらに岡本、川平コンビが主演の回には三浦が“未来からの訪問者”、村井が“シュメンディマン”を演じるということも、なかなかいい刺激になりそう。
三浦「いやあ、でも未来からの訪問者ってざっくりしすぎてませんか(笑)。未来によってもいろいろあるはずなのに、って。とにかく演出家の言うとおりに、言われたまんま、やるつもりですよ」
村井「シュメンディマンというのは、自分を天才だと思っている発明家ということなんですけど。だけど自分がアインシュタインを演じている時は川平さんがこの役をやるわけなので、稽古ではなるべく川平さんの芝居を見ないようにしないと、と思っています。だって、なんだか引きずられそうじゃないですか。ずるいんですよ、きっと川平さんのあの破壊力のまま出てくるから、どうにかして無視しないと!(笑)」
――この時が初対面とはいえ、常に自然体でお互い早くも馴染んだ空気感を醸し出していた二人。岡本、川平コンビとはまた全然違うムードと解釈で、ピカソとアインシュタインを演じてくれるはず。そこをじっくり見比べてみるのも、この舞台でしか味わえない貴重な面白い体験になりそうだ。
インタビュー・文/田中里津子
【プロフィール】
三浦翔平
■ミウラショウヘイ ’88年、東京都出身。舞台活動は’10年に『SAMURAI7』、’17年に劇団☆新感線『髑髏城の七人Season月 上弦の月』に無界屋蘭兵衛役で出演。
村井良大
■ムライリョウタ ’88年、東京都出身。’18年は『魔界転生』、ミュージカル『あなたの初恋探します』、朗読劇『最果てリストランテ』、『99才まで生きたあかんぼう』に出演。