7/11(火)に行われた『髑髏城の七人』Season風 製作発表の模様が到着!
東京・豊洲にオープンしたIHIステージアラウンド東京で上演中の劇団☆新感線『髑髏城の七人』、この秋9/15(金)からはいよいよ第3弾として『髑髏城の七人』Season風が開幕する。去る7/11の夕方には豊洲の株式会社IHI本社内ロビーにて、その『髑髏城の七人』Season風の製作発表記者会見が行われた。登壇者は脚本の中島かずき、演出のいのうえひでのり、そして松山ケンイチ、向井理、田中麗奈、橋本じゅん、山内圭哉、岸井ゆきの、生瀬勝久という華やかなメインキャスト7名。フロアの前方にはマスコミたち、後方には抽選に当選したファン約250名が参加、さらには仕事を終えて退社するIHIの社員も大勢、興味深げに足を止めて見学している様子だった。
まずは会場内に用意されたモニターにて、観客席が360°回転するという画期的な新劇場、IHIステージアラウンド東京について説明をし、上演中の演目『髑髏城の七人』の“Season花”と“Season鳥”の紹介が行われた。そしてステージに垂らされていた『髑髏城~』のロゴが入った巨大幕が落とされると、そこには既にキャスト7名の姿が! 一気に熱気が増す場内、キャストたちは“Season風”のテーマカラーの山吹色を意識して取り入れたシックな衣裳で並びビシッとポーズを決めていて……、しかし、しばらくするとセンターに佇む松山がまったく微動だにせず、様子がおかしいことに気が付き始める観客たち……。
動揺し、徐々に笑いが起き始める会場、その直後に会場の後方から歓声が沸き起こると、そこには本物の松山の姿が! 拍手と歓声の中、ステージに上がった松山は3Dプリンターで製作されたという人形をしげしげと見て、複雑な表情で横に並んだ。そこで生瀬から明かされたのが「今回の『髑髏城~』の見どころのひとつが“影武者”で、それがキーワードになるんです」ということ。それにちなんだ演出だったのだ。
改めて、中島、いのうえもキャストたちに加わり、会見が始まった。
まずはIHIステージアラウンド東京という劇場を体験してみての印象を各キャストに聞くと、岸井は「“Season花”と“Season鳥”の舞台を観劇させていただいたのですが、まわる瞬間、アトラクションに乗っている感じで楽しかったです。でも、果たしてどうやって出演者は出ハケをしているのかな?と動線が気になりました」、橋本は「自分がやることは置いておいて、楽しみました。いのうえさんならではの演出で、まさにあの劇場でしか体験できないものだと思います」、山内は「観ていると客席が動くという新しい参加型の舞台ですが、これは絶対やる側は相当大変やなと気づき、降板させてもらおうかと思ったくらいです(笑)」、田中は「出演者と一緒に客席の自分も動いている瞬間があって、観るというよりは一緒に走っている感じもありました。躍動感が素晴らしかったです。舞台裏の動線は私も気になりました。私、方向音痴なので大丈夫かなあって(笑)」、松山は「新感線の舞台は本当にお客さんをすごく引き込んですごい世界に連れて行ってくれるのが特長だと僕は思っていて。演劇という一言ではくくれないくらいに、たくさんの要素が詰まったエンターテインメントになっていると思いました」、向井は「単純に暗転がないお芝居になるので、とにかく観やすいです。3時間半くらいの上演時間をまったく感じさせないスピード感で、ストレスなく最後まで気持ちが高ぶったまま観終えられるというのがすごいですね」、生瀬は「僕も“Season花”を観て、そのあとで楽屋に動線を確認しに行ったらセグウェイみたいな二輪のハンドルがついていないものが置いてあって。あれで移動する時もあるみたいなので、それを見たらちょっと楽しみになりました(笑)。最初は客席が動く度に意識するんですよね、「あ、動いている」って。でもそのうち、自分が動いているというよりステージが動いているような、不思議な感覚になっていくんです。まだ観ていない方には、とにかくぜひ一度体験していただきたいですね」と語った。
そして“風”の作品がどう変わるか、その詳しい内容については、まず脚本の観点から中島が「今回は捨之介と天魔王が一人二役なので、松山くんには非常に負荷をかけることになります。そもそも『髑髏城の七人』というのは、本物が消えたあと、生き残った影武者はどう生きるかということを僕が30歳くらいの時に書いた作品で。初演から2004年版まではずっと『髑髏城~』というのは一人二役でやっていたんです。だから今回“Season風”はスタンダードに戻るんですが、ただしブラッシュアップはしますから、またかなり違う、新しいものになるわけです。特に、主役の疲労度は違うと思いますよ」と語ると、松山は苦笑い。いのうえは演出の観点から「“Season花”はシンプルに、“Season鳥”はショーアップした形に演出をしましたが、今回の“Season風”ではまたシンプルにストーリー中心の見せ方で、今度は一人二役の影武者の話をきっちりと人間ドラマとしてやりたいと思っています。2004年版までは僕らも若くて、影武者設定にしても勢いでやってしまっていたところがあったんですが、そこから13年経っていることもありますし、しっかりとした人間ドラマとして捨之介と天魔王を描きたいと思います」と力強く語った。その間、松山だけでなくキャストたちは全員、中島、いのうえからのヒントを聴き逃すまいと身体を前に乗り出すようにして聞いている姿が印象的だった。
さらに記者からの質疑応答の時間にもキャストからはさまざまな名言、迷言がこぼれ落ちる。岸井は「今までいろいろなバージョンの『髑髏城~』を観させていただいて、それぞれの役者さんが違う色を出されていたので、私も自分のできることを一生懸命やり、それが結果として“風”の沙霧になるようにがんばりたいと思います」、橋本は「贋鉄斎役に関しては、たぶん“花”の古田(新太)くんと“鳥”の(池田)成志さんがやりきったと思うので、自分としては今回の稽古場では、初演からずっと僕が演じてきた抜かずの兵庫という役をやる圭哉くんを精一杯応援したいと思っています」と語った。続いて山内は「今回の兵庫は見た目がどっちかというと髑髏城にいてる人のような感じがしていますけど。こういう兵庫みたいな、常に血が湧いていてじっとしていられないような役をやるのは個人的には初めて。今現在“鳥”で兵庫をやられている福田転球さんのことは、軽く超えてやろうと思っています」と言い放ち、爆笑を誘った。田中は「私は劇団☆新感線には初参加になりますので、これまで極楽太夫を演じられてきた先輩方に学ばせていただく気持ちでやりたいです。先日“鳥”の舞台を観に行った時、松雪泰子先輩の太夫がもう優雅で麗しくて最高で、溜息が思わず出ちゃうくらいでした。そんな泰子先輩の素晴らしい太夫のことも忘れずにいつつも、私は私で田中麗奈の極楽太夫を作っていかなければと思っています」と力強く語った。松山は「これまで一人二役をやられた古田新太さんも市川染五郎さんも完璧だったので、そこに近づけるよう、これ以上はもう出ないというところまで自分を追い込みたいと思っています。そこに古田さんや染五郎さんのニュアンスを入れることができたらいいな、とも思います」、向井は「やはり、やるからには自分にしかできない蘭兵衛をやりたいですが、直近で言えば“花”では山本耕史さん、“鳥”では早乙女太一くんがやっていますからね。そこと比較されるのは辛いので、いっそ今回の蘭兵衛は殺陣を封印して、刀を抜かない会話劇にしたいくらいです」と話し、会場を盛り上げた。そして生瀬が「狸穴二郎衛門という役は“花”では近藤(芳正)さん、“鳥”では梶原(善)くんがやっていて、どちらも仲のいい知り合いではありますが、それをぶっ潰して蹴散らしてやるつもりで演じます! そして僕は新感線には初参加になりますので、生き残るためにも今回の共演者全員も役者生命をかけてぶっ潰すつもりです! ま、口で言うのは勝手ですからね!」と宣言し、フロア中を爆笑させたまま会見は終了。
最後のフォトセッションには再び、松山の影武者人形が登場し、キャストらと並んで仲良く写真に納まった。複雑な表情の松山を横目に、向井、橋本らが人形の腕を動かしたりしてはしゃぐ様子も見られ、早くも和気藹々とした“Season風”のカンパニーのチームワークの良さが垣間見られる会見となった。
IHIステージアラウンド東京にて上演される第3弾『髑髏城の七人』Season風は9/15(金)に開幕。新たな魅力、可能性を詰め込んだ“風”の進化に、ぜひともご注目を!
取材・文/田中里津子