俳優とバレエダンサー、ピアニストで紡ぐ、夏目漱石が絶賛した哀しくもロマンチックな「愛」の物語『イノック・アーデン』初日開幕コメント&舞台写真到着!

2025.03.07

撮影/井野敦晴

本日、3月7日(金)19:00より新国立劇場 小劇場にて、『イノック・アーデン』が開幕する。
本作は、イギリスの桂冠詩人、アルフレッド・テニスンが1864年に書いた物語詩で、ひたすら愛する人を待ち続けた妻と、その期待に応えるべく努力を重ねた男、そして夫を待つ女性を深く愛しているが故に友情と愛情の狭間で揺れ動く幼なじみの男。3人の登場人物が描く、不変かつ普遍である「愛」をテーマにした哀しくもロマンチックな物語。
作家・原田宗典が渾身の思いを込めて紡いだ翻訳を、二人の俳優が語り、三人のバレエダンサーがウィル・タケットの振付で身体表現し、詩の音楽的韻律美にインスパイアされて作曲家リヒャルト・シュトラウスの楽曲を櫻澤弘子によるピアノの生演奏でお届け。
初日を迎えるにあたり、田代万里生、中嶋朋子、秋山瑛、生方隆之介、南江祐生よりコメント、舞台写真が到着した。

初日開幕コメント

田代万里生
これまでオペラやオペレッタなど、バレエダンサーの方が出演されている作品はありましたが、0から一緒に舞台を作っていくのは初めてでした。特にウィル(・タケット)さんが振付をつけたり、ダンサーの皆さんが何もないところから踊りを自分のものにしていく過程は本当に感動しました。バレエダンサーの方は踊りに特化していると思っていたのですが、お三方ともお芝居がとても素敵で、踊り以外での佇まいや表情、呼吸など演劇的に見える部分が多く、一俳優として踊られているんだなと強く感じました。ウィルさんはとてもフランクな方で、楽しくコミュニケーションを取っていたらいつの間にか素敵なものができあがっていたという感覚です。その中で「ただ朗読と捉えるのではなく、言葉も音楽のひとつだと感じてほしい」と、ピアノの演奏と語りがどちらも音楽に聴こえるよう求められていたのが印象的でした。
今回はバレエ、演劇、クラシックのファンと様々な方が観に来てくださると思います。それぞれ観方も変わると思うのでお客様同士で感想を言い合って盛り上がっていただければ嬉しいです。

中嶋朋子
普通は、演劇、ダンス、音楽とすみ分けしますが、今回は三位一体となって感情の多面性をみんながそれぞれ分担したり、またひとつになったり…と、とても高度な感情、心情、情景の動き全てをみんなで表現しているので、面白いし、やりがいがあります。バレエダンサーの方々とのクリエイションはとても素晴らしく、腕のひと振り、視線のひと投げで巧みに豊かに、表現の美しさや力強さ、繊細な部分も身体で内包して体現なさっているのでとても勉強になったし、自分の感情表現も助けられました。そして演出のウィル(・タケット)さんは、ご自身がイノック・アーデンというような感じで、彼の大海原にみんなで船を漕ぎ出す感覚でした。
『イノック・アーデン』は、音楽、ダンス、芝居、表現の垣根をこえ、新たなクリエイションに身を委ねていただく作品です。私たちと一緒に、皆様も大いなる想像の旅を楽しんでいただけたらと思います。

秋山 瑛(東京バレエ団)
今まで皆さんと創ってきたものを初めてお客様にお見せできるので、すごく緊張すると思いますが、同時にワクワクしています。田代さん、中嶋さんとピアノの(櫻澤)弘子さんとご一緒できることで、自分だけでは出せないアニーとしての心情や表現を引き出していただけていると思います。お二人が読んでくださることで物語がより立体的になり、セリフや心情の説明、情景描写などさまざまな役割の中で切り替わるお二人の語りからたくさんのインスピレーションをいただいています。音楽が語っていること、それから田代さんと中嶋さんの声から感じるお二人の表現を全身で受け止めて、自分自身の表現につなげたいです。
稽古では魔法のようにキャラクターや物語が立ち上がって、気づいたらウィルさんの創る『イノック・アーデン』の物語に没入していましたし、ウィルさんに新しい自分をたくさん引き出していただき、アニー役に導いてくださいました。新しい形の舞台ですが、とても楽しんでいただけると思います。ぜひ劇場にお越しください。

生方隆之介(東京バレエ団)
ウィルさんは、僕たちのやりやすいやり方を一緒に見つけていこうと言ってくださる方で、限られた時間のクリエイションでしたが、濃い時間を過ごさせていただきました。いつもは音楽に合わせてダンサーが踊りますが、今回は朗読という要素が加わって、お客様によりわかりやすく補完されているのかなと感じました。田代さんと中嶋さんの朗読は、言葉自体の重みがすごく心に響いてきます。普段コンテンポラリーなどを観ている方からしたら、言葉という材料があるだけでも作品の印象はかなり変わってくると思うので、そういうところも楽しんでいただけたら嬉しいです。この『イノック・アーデン』は、朗読・ダンス・ピアノという音楽の三要素が加えられている、ほかではあまり観られない作品だと思います。音楽も素晴らしいですし、田代さんと中嶋さんが感情を揺さぶられるような朗読をされているので、自分たちもそれに応えられるように切磋琢磨して良い作品にしたいと思います。

南江祐生(東京バレエ団)
これまでピアノやオーケストラの奏でる音楽で踊ることはありましたが、登場人物の心境や言葉にのせて踊りで表現するのは初めての経験でした。田代さんと中嶋さんの発する言葉やキャラクターに導いてもらえるところがすごく大きく、今回の作品をきっかけに、表現の引き出しをすごく増やしてもらえたと思います。ウィルさんの振付からはロイヤル・バレエのスタイルを感じます。持っているムーブメントのボキャブラリーが多様で多彩で、それはきっとご自身がダンサーとして培われてきたものなんだろうと感じました。
朗読とバレエと音楽が一つになっている作品は、僕たちにとっても新鮮ですが、お客様にとっても同じだと思います。ウィルさんの描く人間性やドラマが、イノックとフィリップとアニーというキャラクターの人生を垣間見れると同時に、ダンサーと俳優たちの生き方も感じられる作品になっています。この劇場は客席との距離がすごく近いので、僕たちが発するものはもちろん、お客様から受け取るものもきっとたくさんあると思うのでとてもワクワクしています。

※南江祐生の「祐」の字は、示(しめすへん)に右が正式表記

舞台写真