『NEO大衆アンダーグラウンド ~壹~』│山崎銀之丞×武田義晴×柳下大×幸田尚子 インタビュー&稽古場レポート

俳優・山崎銀之丞がプロデュースするイベント『NEO大衆アンダーグラウンド ~壹~』。落語や演劇、音楽、お笑い、舞踊などさまざまなジャンルのメンバーが集い、この日限りの贅沢な演目を届ける。
公演に向けた稽古が進む中、『熱海殺人事件』に出演する山崎銀之丞 、武田義晴、柳下大、幸田尚子へのインタビューと稽古場取材を行った。

――まずは意気込みを教えてください

山崎 つかさんが当時やっていた『熱海殺人事件』に近いものを、ベストキャストでお届けしようと思っています。武田義晴は今の日本において熊田留吉をしっかり演じられる稀有な俳優ですし、大山金太郎を演じる柳下大は一度俳優を辞めて復帰し、過去に『熱海殺人事件』をやった時よりも年齢を重ねたことで情念や人間のあるべき姿、心根の良さが出ている。安心して任せられると感じます。また、女優さんはつか作品を怖がる方が多いんです。『アンチヒーロー』での共演をきっかけに幸田尚子に声をかけたところ快諾してもらい、今回出演していただきますが、非常に良い。お客様にも安心してご覧いただけると思います。
僕はつかこうへいの活動をそばでずっと見てきたので、つかさんの声が耳に残っている。それを参加してくれる俳優たちになるべく伝えられたらと思っています。つかさんに30年以上ついていた音響さんが参加してくださることもあり、よりつかさんの世界をご覧いただけると思います。

武田 『熱海殺人事件』は何度か出演していて、熊田を演じることが多かったんですが、歳を重ねて56歳になりました。なかなかこの年で『熱海殺人事件』に挑戦することもないのでありがたいですし、やりがいを感じます。ある程度の経験があることで、今まで見えなかったものが見えてきた部分もあり、もしかしたら一番いい状態で挑めているのかもしれません。
銀之丞さんとは共演経験も多くお世話になっていますし、若いお二人ともいいチーム感で作れていると思うので、最高のものをお見せしたいです。2日間4公演と短いのでスケジュールを合わせるのは大変かもしれませんが、劇場に足を運んでいただけたら嬉しいです。なかなか見られないメンバーですし、銀之丞さんプロデュースで少し変わった作りなので、ぜひ赤坂で目撃していただきたいです。

柳下 僕は21歳くらいの時に『熱海殺人事件』に出会い、最初に金太郎を演じたときにご一緒したのが銀之丞さんと武田さんでした。その時は物語をあまり理解できないまま、お二人についていくのに必死でした。でも、先輩たちのお芝居を見て、舞台の魅力に取り憑かれた。舞台俳優としてやっていきたいという思いが芽生えた作品です。自分の中では大山金太郎はすごく思い入れのある役ですし、『熱海殺人事件』はおそらく一番見てきた作品でもあります。もう演じることはないのかと思っていた中で今回お声掛けいただき、またできる。つかさんの意思をついでいるお二人と一緒にできる貴重な機会を僕自身も存分に楽しみたいです。こんな機会はないと思うので、ぜひお時間を空けてきていただけたら嬉しいです。

幸田 私は大阪芸術大学で初めて立った舞台が、つかこうへいさんの『銀ちゃんが逝く』でした。初めてがっつり触れた演劇がつか作品で、そこから時を経て今回のご縁をいただいたことに、最初はすごくびっくりしました。でも、このチャンスを絶対に逃しちゃいけないと思ってすぐにお話を受けました。個人的に非常にご縁を感じる作品と座組です。今回は“山銀版”ということで、銀之丞さんがつかさんのもとで経験したことが集約された新たな『熱海殺人事件』になっていると思います。銀之丞さんの伝兵衛が見られるのも貴重な機会だと思いながら稽古に励んでいます。ぜひお客様にも四人の姿を見ていただきたいです。

――お稽古の手応えはいかがでしょう

山崎 決定稿を出すのが遅かったものの、正直あまり心配はしていません。本番までにきちんとした状態で仕上げて、お客様をお迎えできる準備は十分に整っています。前半と後半に分けて上演しますが、全体がわかるような構成になっています。今のところ、前半・後半合わせて1時間半くらい。間に舞踊などが入り、2時間弱の舞台になる予定です。

――“山銀版”の見どころはどこになりそうでしょうか?

山崎 なるべく原作に基づいて作っています。言葉も、これだけの長台詞をかける作家は今いないと思う。その魅力は最大限お見せしたいですね。また、過激な言葉もたくさん出てきます。なぜ過激な差別用語が使われているのかは、見ていただけたらご理解いただけるはず。つかこうへいの思いを受け継いでできたらいいなと思い、稽古場で切磋琢磨しているところです。

稽古場レポート

稽古場でまず行われたのは、物語のクライマックスである熱海のシーン。犯人・大山金太郎(柳下大)が幼馴染である被害者の女工と共に海を見に行き、二人の考え方や価値観の違いが浮き彫りになって犯行へと繋がる一場面だ。

方言でまくし立てるような長台詞が続く難しいシーンだが、柳下と幸田は台本をもとに登場人物の心情を読み解き、すれ違いを丁寧に作り上げる。時折山崎がセリフを修正するのだが、語尾やイントネーションが少し変わるだけで、受け取る印象がガラリと変わる。

また、物語の冒頭、熊田留吉刑事(武田義晴)が富山から赴任し、「警視庁にその人あり」と言われた木村伝兵衛部長刑事(山崎銀之丞)や婦人警官(幸田尚子)に出会うシーンの稽古も見ることができた。

こちらは山崎と武田の息のあった掛け合いが心地よく、BGMである「白鳥の湖」と合わせて『熱海殺人事件』が始まったというワクワクを感じさせる。

演じたことがあるキャストが中心となっていることもあり、すでにキャラクターに対する理解は深いことが見てとれる。ちょっとした視線の動かし方、立ち姿からもそれぞれの役作りが伝わる稽古に、本番までの間にどこまで進化するのか楽しみになった。

『NEO大衆アンダーグラウンド ~壹~』は、4月8日(火)より東京・赤坂RED/THEATERで開幕。『熱海殺人事件』は【演劇の日】である4月9日(火)・10日(木)に上演される。

取材・文/吉田沙奈