二兎社公演42 ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ 永井愛 インタビュー

真実に触れたときに、人は感動する


TV局の報道現場で巻き起こる事態を描いた舞台「ザ・空気」で、読売演劇大賞最優秀演出家賞を受賞した劇作家・演出家の永井愛。彼女が再び、国会記者会館の記者クラブのエリート記者らを軸に、今の日本を取り巻く“空気”を舞台上に紡ぎあげる。

永井「昨年の公演が非常に反響が大きくて。ともすれば敬遠されるテーマですし、もちろん共感してくださる方がたくさんいてほしいと思ってやっていたんですが、会場に入りきらないという事態までは考えていなかった。話を書くにあたっていろいろなことを調べたんですが、書ききれないことがたくさんあったので今回も空気をテーマに書くことを決めました。でも今は現実の方でも賑やかなので、上演のタイミングで世の中がどうなっているか。芝居の鮮度は重要なところなのでまだまだ練り上げていくつもりです」

 

キャストには安田成美、眞島秀和、馬渕英里何、柳下大、松尾貴史と魅力的な名が並ぶ。

永井「面白い5人をそろえられたと思います。楽をしようと思っているわけではないですが、お稽古は非常に楽になるんじゃないかという予感はしています(笑)。皆さん手練れといいますか、自立した役者さんなので、ちょっと言うだけで発展させてくれるという気がしています。役の核心のようなものが掴めたらとても面白いものになるはず」

人々が“空気”に惑い、翻弄され、情報が歪んでいくさまは、もはや恐怖に近い。

永井「私はホラーを書いたつもりはないんだけど、やってみたらなんだかすごく怖くて(笑)。社会派ホラーって面白くないですか?お堅い言葉とエンタメの言葉が合わさっていて。フィクションですけど、本当にあったことをつなぎ合わせたら怖いということは現実も怖いということですよね。でも別に政治的意図があって書き始めたわけではなくて、あくまで“人”を描きたいという思いでやっている。人がちゃんと描かれていれば芝居は面白い。真実に触れたときに、人は感動するものですから。真実に接近しただけで人は元気になる。私はそういう、人の魂に触れるものを描きたいですね」

 

インタビュー・文/宮崎新之
Photo/倉田貴志

 

※構成/月刊ローチケ編集部 4月15日号より転載
※写真は本誌とは異なります

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【プロフィール】
永井愛
■ナガイ アイ ’51年生まれ、東京都出身。’81年大石静と二兎社を旗揚げ、’91年からは単独で主宰し、脚本・演出を務める。