Reading Drama『BLINK』│荒井遼×櫻井圭登×阿蒐禰 インタビュー

写真左から)阿蒐禰(あかね)、櫻井圭登、荒井遼

奇妙で切ないボーイ・ミーツ・ガールを描いたフィル・ポーターの戯曲『BLINK』。他者との関わりを恐れながらも願う二人の物語を、豪華出演者による各ペア1回・生演奏を交えたリーディングで上演する。
演出は、2022年に本作の日本初演を手がけ、作者から称賛を受けた荒井遼。音楽・演奏は数々のミュージカルにおける音楽監督、作曲を手がける阿蒐禰。キャストは相葉裕樹、石田亜佑美、笹森祐貴、能條愛未、木原瑠生、小泉萌香、櫻井圭登が務める。
稽古がスタートしたタイミングで、荒井遼、櫻井圭登、阿蒐禰にインタビューを行った。

――まずは作品の印象を教えてください。荒井さんは初演から3年経ち、改めて本作に向き合って見て感じたことなどもあればお願いします

荒井 やはり変な話だなあと改めて思います(笑)。トリッキーな話だけど、ふと理解できたり人間らしさを感じられたりするといいかなと。あと、今回は音楽を生のピアノでやりたいということから始まりました。

阿蒐禰 難しいと最初は思いました。

櫻井 そうですよね。途中まではサスペンスなのかなとハラハラしていたけど、最後のほうは二人の感情、風景がすごく繊細に見えました。ふとしたところに隠れている真実や人間の本質など、見る方によって感じ方も違うんじゃないかと思いながら読みましたね。

阿蒐禰 難しいと思いつつ、分からなくない。「そういうことってあるよね」と思える物語です。でも、そこに辿り着くまでに奇妙な部分が多い。お客様が「なんだこれ?」と思っているうちにお話の核に辿り着けるように、こちらで準備できたら楽しくなるのかなと思っています。

――初演とは風合いを変えるとのことですが、今回の演出におけるこだわりはどこになりそうでしょうか?

荒井 ピアノですね。音楽が伴走するというか、出演者が3人いるような感じです。音楽が物語を運ぶこともあれば、人物から音が出るところもある。それを繊細にやりたいです。テーマ曲すごくいいです!

――音楽のクリエイションについてはどのように進めていますか?

阿蒐禰 最初にお話をいただいた時は、即興でフワッと音楽をつけるという感じだったんですが、徐々に変化してご要望をいろいろいただいています(笑)。でも、すごく信頼してトライさせてくれるのはありがたいです。今回、役者さんの組み合わせが4組あるので、全て同じものにするんじゃなく、それぞれの役者さんから出てきたものに反応して音をつけることもできそうでワクワクしています。

――櫻井さんはコメントで「この作品に触れるのが今でよかった」と書いていましたが、その理由、今だから感じたことなどを教えてください

櫻井 今32歳になったんですが、20代の頃は自分の中の考えがすごく漠然としていて、お芝居についても感性でやってしまっている部分がありました。最近は、台本を読んでいても繊細に描写などを読み取れるようになってきた。この台本をどう表現するかは稽古の中で作っていきますが、客観的な視点が大きくなった気がしています。

――癖のあるキャラクターですが、演じる役の印象、役作りに活かせそうな共通点などはいかがでしょう?

櫻井 現代日本にいたらヤバい人ですよね。ジョナの境遇として、宗教コミューンで育って多分思考も少しコントロールされていると思います。それでももがきながら生きて、一人の人を愛していく。人間らしさがすごく共感できるところです。

――荒井さんと阿蒐禰さんはすでに稽古に入っていらっしゃいます。現時点でのお稽古の手応えを教えてください

阿蒐禰 私は超必死です!!

荒井 生演奏とのコラボは慣れていないので、助けていただきながらやっています。大変ですが楽しいです。以前と全然違うものを作ることを目指してスタッフも入れ替えたんですが、ふと前のことを考えてしまったりする。そういうのが難しいですね。

阿蒐禰 ちなみに、なんでガラッと変えようと思ったんですか?

荒井 一部だけ変えるとバランスがおかしくなったり辻褄が合わなくなったりするからです。以前手痛い失敗をしました。だから、絶対に思い切らないとだめだと思っています。

――今回は様々な分野で活躍する方が揃っていますが、キャストの皆さんの印象、期待することはありますか?

荒井 バックグラウンドが様々で、皆さん役の年齢より上。櫻井さんも言っていたように、経験値があるから理解できる部分を表現に乗せてもらうのが楽しみです。朗読だからこそくっきり見えてくるものもあるだろうし、このキャストだからこその表現があると思って期待しています。素敵な人たちがこのちょっとヘンテコなキャラクターたちをどう演じていくのか楽しみです。

阿蒐禰 変ですよね。プチ犯罪。

荒井 プチじゃない(笑)。でも、見ている方が途中で「これ犯罪だよ!」って引いちゃうと困る。

阿蒐禰 「こんな出会いもありかな?」と思わせなきゃいけない。

荒井 そこがミソですよね。でもその変なところが好きだし面白い。あと、櫻井さんにはこういう合うだろうなって(笑)。

櫻井 自分でも思いました(笑)。好きなセリフで「心が愛だと感じるのが愛だ」というのがあるんです。ジョナが自分に言い聞かせている部分もあるし、その思いを持っていることが素敵だと思う。何が幸せかは人それぞれですし、今が幸せだと思うかどうかも人それぞれ。その言葉を出せる役はすごく好きです。稽古でどうなっていくかわかりませんが、そのセリフにちゃんと辿り着くことを意識したいと思っています。

荒井 前回櫻井さんとご一緒した時、田舎から出てきて都会にうまく馴染めない役がピッタリだったんですよ。ファンの方が櫻井さんに期待しているのはそこじゃない気もして心配はありますが(笑)。でも、櫻井さん自身はそういう方が好きかなあと思って。

櫻井 (笑)。そうですね。僕自身はすごく好きなテイストです。

――曲や演奏に関する注目ポイントを教えてください

阿蒐禰 それぞれの役者さんから与えられる種や刺激をもとに演奏していくのがすごく楽しみです。毎回組み合わせが変わりますし、皆さんがどう反応してくれるかも楽しみ。お客様にとっては、役者さんたちを光り輝かせるための私というところは担保しつつ、彼らとしっかりキャッチボールできたらと思っています。

――荒井さんが本作について「まなざしのドラマ」とコメントしていました。それにちなんで、皆さんにとって忘れられない景色・光景があったら教えてください

櫻井 忘れられないというほどではないんですが、僕は電車から見る景色が大好き。自分の中での精神安定剤のような、大切な景色です。その日によって見るものが違うので面白いなと思います。

阿蒐禰 お芝居関連の話で言うと、『ロッキー・ホラー・ショー』でピアノコンダクターとして見た景色ですね。一度幕が閉じて転換や準備をし、バッと開くと古田新太さんのソロで始まるシーンがあるんです。バンドサウンドが鳴っていたところから古田さんとピアノの1対1になり、私からは古田さんの背中が見える。烏滸がましいですが、「絶対に古田新太をカッコよく見せるのは私!」と念じながら弾いていました。その時の古田さんの背中は本当に美しかったですし宝物ですね。

荒井 パッと思いついたのは、長崎から船で軍艦島を見に行った時の景色ですね。海と空の境界線も分からない真っ青な中に、突然光の中から廃墟が浮かび上がってくる。

――最後に、楽しみにしている皆さんへのメッセージをお願いします

荒井 それぞれ公演は1回きり。その化学反応も今回の面白さなので、楽しみにしていただけると嬉しいです。もし気になる組み合わせがあったら別の組も見ていただけると、全然違う仕上がりになっていて面白いと思います。

櫻井 常々思うのが、作品をお客様に届けるというのは本当に尊くてかけがえのないことだということ。舞台に立たせていただく責任も感じますし、皆様の人生のお時間をいただいて何を残せるのか最近すごく考えます。どの作品もそうですが、誠実にお届けしたいと思います。

阿蒐禰 櫻井さんからお客様のお時間をいただく責任感についてお話がありましたが、私は役者さんたちを全力でサポートして、一番素敵なところを見ていただけるようにピアノを弾きます。安心して、楽しみに来ていただけたら嬉しいです。

取材・文・撮影/吉田沙奈