平凡パンチライン『Wife is miracle~世界で一番アツイ嫁~』伊勢志摩&じろう&池津祥子 インタビュー

写真左から)伊勢志摩、じろう(シソンヌ)、池津祥子

大人計画の女優陣が創案し、宮藤官九郎を交えた創作に挑む『Wife is miracle 〜世界で一番アツい嫁〜』。唯一の男性キャストにシソンヌ・じろうを迎え、東北のとある田舎町を舞台に、嫁と夫たちのめくるめく物語が繰り広げられる。キャストのリクエストに応えつつ執筆される脚本、木野花による演出、全ての夫役をじろうが担うなど、既に期待値高めの今作について、池津祥子、伊勢志摩、じろうの三名にインタビューを行った。

キャスティングなど、企画会議のこと

伊勢 最初にじろうさんのお名前が出たのはLINEグループ上のキャスティング会議かな。池津さんか猫背(椿)さんが名前を挙げてくれて、みんなで「それだ!!」と。言葉は悪いかもしれないけど、一斉に食い付いた。

池津 ハートの絵文字が♡♡♡って。

伊勢 会議だから、じろうさんお一人の名前しか出なかった訳じゃないけれど、最終的に「やっぱりじろうさんがいいよね」と。

じろう ……いま人生で一番モテています。こんなに大勢の女性からラブコールを頂いて。

伊勢 特に宍戸(美和公)さんがすごく食い付いた。

池津 あの無口な宍戸さんが。

じろう (笑)。

伊勢 ♡を連打してね。それで「やっぱり宍戸さんも好きなんだ〜」みたいな。

じろう 大人計画の歴戦の猛者女優たちと一緒にやらせてもらえること自体が楽しみですし、「皆さんとどんなやりとりができるのだろう?」と考えて、今からワクワクしています。

ーー公演資料によると、企画会議が大変盛り上がったとか

伊勢 宍戸さんとかすごく面白いんですよ。口数は少ないのに、たまに喋ると「何言ってるの!?」みたいな不思議な発言を。

池津 私は全然時間が足りなくて、会議が終わった後に長文メールでアイディアを送ったり。「先ほどの会議で言えなかったこと」みたいな。

伊勢 みんなパーパー喋るから。

ーーそれらのアイディアは宮藤(官九郎)さんに伝わっている?

池津 最初にやりたいことを伝えた時に伝わっていると思います。

伊勢 それぞれのキャラクターに関することをかなり拾って頂いて。

ーー資料用のプロットを拝読しましたが、すごく面白かったです。宮藤さんすごい

池津 そう!本当にすごいんですよ!!

伊勢 短時間であっという間に。

池津 書き込みの量も半端なかった。じろうさんが出て下さることによって、じろうさんならあれもできる、これもできる、と。

伊勢 じろうさんの負担が増えていく(笑)。

池津 もう「じろう一座」だよね。このチラシも完全にじろう一座(笑)。

伊勢 本当にそう。

ーー稽古場で試してみたいことは?

池津 最終的に「口も利きたくない!」とはなりたくないけれど(笑)、それくらい激しくぶつかり合ってお稽古したいと思っていて。だから色々試したい。

伊勢 池津さんは若い頃から稽古場ではっきりものを言うタイプ。私は、自分で大人計画イチ気の弱い人間だと思っていて、人と絶対揉めたくない。

池津 40代位から「自分に残された時間は少ない」と考えていて、お芝居に出る度に、稽古の最初からトップスピードで臨みたいと思っています。もちろん固めて創るのではなく、演劇は一ヶ月位お稽古できますから、そういう贅沢な時間の使い方ができるからこそ、積極的に取り組んでいきたい。

伊勢 私も「あと何本できるか?」を考えるし、それと、自分の「引き出し」が……。

池津 また引き出しだ(笑)。

じろう 今日は多いんですよ、引き出しの話(笑)。

伊勢 先日青年座さんのお芝居に出させて頂いて(※『Lovely wife』25年3月上演)気付いたのですが、私の引き出しは「声がデカい人」と「声が小さい人」のふたつしかないんじゃないかな。

ーーご自身の評価と周囲の評価は全く異なると思いますよ

伊勢 いや、そんなことない。

池津・じろう (笑)。

伊勢 だから、引き出しの数を増やしたいし、じろうさんから学ばせて頂きたい。一人の人間が何役もやる様子を目の当たりにできることを楽しみにしています。

じろう 僕は、舞台で人の本をやること自体あまりなくて、本の通りにやるのが正解だと思いつつ……、どうなんですかね?自分なりにやったりするものですか?

池津 何でも試して頂いて大丈夫ですよ。

じろう そうなんですね。例えば、自分の中に笑いのメソッドみたいなものがあり、「僕がここでこうすれば多分うける」は分かるんです。でも僕は結構控えめというか、我を出すことがあまり得意ではない。ドラマの現場でも、本に忠実にやって「もうちょっと試しても良かったかな…?」と後悔することが割とあります。ですから、自分なりの「こういうのどうですか?」を、ちょっと勇気を出して、怒られる覚悟でやってみてもいいのかな?と思っています。

役柄などの「見所」について

池津 まだ予想の範疇ですが、私の演じる役がお客様にとって「ガイド」になる役じゃないかと。個性の激しい人たちが大勢出てくるなか、嫁の一人としてそこへ乗り込んでいく。

伊勢 外部から来た人のポジション。

池津 そして、見所はやっぱり、じろうさんの七変化。

じろう ふふふ、どうしましょうねぇ。確か(夫役だけでなく)子ども役もあるんですよね?

池津 娘の役が。

伊勢 私も「やったことない役をやりたい」とリクエストしたので、どうだろう?自分が目標とするお芝居ができるのかなぁ?

じろう 伊勢さんとはドラマで共演したことありますが、他の方とは台詞を交わしたことが一度もないので、全員との絡みが楽しみです。なんか、新しい引き出しを……。

伊勢 引き出しだ(笑)。

じろう 「私、こんなことをするとうけるんだ!」みたいな、新しい発見のお手伝いができれば。

池津 すてき〜!

伊勢 引き出しを増やさせて頂きます!

池津 そして、タイトルが『Wife is miracle』なので、何か奇跡的なことが起こるのか…?それもすごく楽しみです。

伊勢 そのネタを出したのって中井(千聖)ちゃんじゃない?最後にボーン!みたいな。

池津 ああ、そうだったかも?

伊勢 タイトルに関係するオチを一番若いキャストが出してくれるとか、すごくいいですよね。正にパンチライン(※決め台詞・キャッチフレーズなど)。

じろう 僕が色々な役で出てきますけれども、絡む奥さんによって僕のキャラクターもそれぞれ肉付けされていくでしょうし、僕自身も初めて挑むことがあると思うので、そこはすごく楽しみですし、観て頂きたいです。女優さんそれぞれと僕でどういう化学反応が起きるのか。それが大きな爆発として全体へ繋がっていくのなら、一体どんな舞台になるのか、ますます楽しみですね。

インタビュー・文/園田喬し
写真/ローチケ演劇部