Classic Movie Reading Vol.5「カサブランカ」|廣瀬智紀・鍵本輝

名作映画を朗読劇として上演し、作品が持つ魅力を改めて伝えるプロジェクト『Classic Movie Reading』。これまで『ローマの休日』『自転車泥棒』『風と共に去りぬ』『若草物語』『東京物語』を上演してきた本シリーズが次に挑むのは、ハンフリー・ボガートとイングリッド・バーグマンが共演した名作ラブストーリー『カサブランカ』だ。

リック役の廣瀬智紀とラズロを演じる鍵本輝にインタビューを行った。

――名作映画の魅力に改めて焦点を当てるClassic Movie Readingという企画について、どんな印象を持たれましたか?

廣瀬:誰もが知る名作を、自分たちが生きる現代において、自分たちの手法で語り継いでいくというところが醍醐味なのかなと感じています。

鍵本:シンプルに光栄だなと思いました。自分があの世界観に入れるのかという喜びもあります。名作ということでファンも多いでしょうから、「あのキラキラした思い出を壊さないで!」と言われてしまわないように、正しいフィルターを通した上で作品に携われたらと思っています。

――原作となっている映画の印象を教えてください。廣瀬さんは「大学時代と今で印象に変化があった」というコメントを出されていたので、具体的にどう変わったかも知りたいです。

廣瀬:大学の時に講義でこの作品に出会いましたが、決して真面目な生徒ではなかったので、「こんな映画があったのか」とか「白黒だなあ」とか(笑)。戦時中の作品ということもあり、恋愛の場面もちょっと大人っぽく感じて、「大人が見る映画」という感覚がありました。

でも、今の歳になってみると、色々なことに興味が湧きました。「本当にこの作品を戦時中に撮ったの?」とか、「第二次世界大戦中に撮っていてプロパガンダ的な意図もあったんだ」とか、歴史的背景に興味を持って調べることで、受け取り方も変わりましたね。戦時中に色々な国のキャストさんが集まってたことを知って、「どうやって撮ったんだろう?」とか、制作背景にも興味が湧きました。

そして、その環境で「名作」と言われる深い映画を撮れるのはすごいなと。そんな作品に自分が携われるというのはどこか夢のようです。長年愛されてきた作品だからこそ、半端な気持ちではできないなというプレッシャーもより一層強くなりました。

鍵本:第一に、喫煙率が高いなあと思いました(笑)。それも時代を感じます。あと、出演しているキャストの皆さんの年齢まではわかりませんが、感覚としてはすごく大人だなと思いましたね。生き死にが身近にある世界で、今日隣にいた仲間が明日死んでいるかもしれない。その中で生きているから、人間力が違うんだろうなという印象。そんな役を、今の僕がちゃんとできるのかなという葛藤は最後まであるんだろうと思いますね。

――そんなキャラクターたちを演じる上で、大切にしたいと考えていることはありますか?

鍵本:ラズロに関しては、複雑な思いも抱えつつ一本強い軸を持っているキャラクターなので、それをちゃんと演じたいです。レジスタンスとしての活動、この世界をどうにかしたいという軸を大切に表現したいですね。

廣瀬:リックは心の揺れ動きがある役。イルザと出会った時のパリでのリックと、カサブランカに行ってからの塞ぎ込みがちなリックの印象は違うものだと思いますし、そこはイルザやラズロ、サムなど、色々な登場人物とのやり取りの中で自分の役を深めていきたいです。ボギーさんが演じた印象がすごく強いんですが、自分はちょっと離れていると思うので、自分自身がリックとしてしっかり立てる方向性を模索して、自信を持って演じたいです。

――以前にも朗読劇『あの空を。』でご一緒しているかと思います。改めてお互いの印象、俳優としての魅力を教えてください。

鍵本:前回からずっと思っているんですが、めっちゃ仲良くなれそう!

廣瀬:(笑)。

鍵本:朗読劇って基本的に稽古が短いので、「そろそろ心の扉を開けてもいいですか?」というタイミングで終わってしまうじゃないですか。今回より仲良くなれたらなという思いがあります。

廣瀬:嬉しいです(笑)。前回、仲良くなれそうなところで終わってしまったので。(鍵本は)明るくてキラキラしていて周りを笑顔にするキャラクター性があります。近くにいたら自然と笑顔になれそうですし、そんな人柄の方が今回ラズロという役でどういうお芝居をされるのかもすごく楽しみです。お互いに影響しあって、いい関係性のリックとラズロを生み出したいと思っていますし、一緒にやっていく中で方向性を見つけるのを楽しみにしています。

鍵本:あと、絆が半端ないなと思っていて。当時の作品になってしまいますが、本番で共演者さんが台本を半ページくらい飛ばしてしまったんです。

廣瀬:あった!

鍵本:「これどうする!? 次、誰が喋る?」となって。多分一瞬の間だったと思いますが、僕たちの中では2、30秒くらいに感じられました。でもそこで智紀くんが本役の人が喋らなきゃいけないセリフをカバーして自分のセリフに戻すスーパープレイをしてくれて。あれを乗り越えた仲間なので、今回も何が起きても大丈夫だと思います!

廣瀬:頑張ります!

――朗読劇には本から目を離さず席を立たないものもあれば、台本を持って動き回るものもありますが、いずれにしろ、普段のお芝居やミュージカル以上にセリフや声のお芝居が大事になってくるのかなと思います。朗読劇で大切にしていること、朗読劇に感じる面白さはあるでしょうか。

廣瀬:自分の中では、朗読劇って表現力やスキル、練習量や熱量が如実に出るものだと思っています。普段のストレートプレイやミュージカルよりも、個人で高めていく作業が必要だと感じます。稽古日数が少ないことも多いので、自分自身が朗読劇をする目的を持っていないといけないし、台本を持っているからこそ、より一層集中していないとお客様を巻き込んでいけない。朗読劇と言ってもスタイルは色々あり、演出家さんによって見え方や感じ方も変わるので、今回は坪井(彰宏)さんのスタイルの中でどう表現するか見えてきたらいいなと思っています。

鍵本:細かいスキルはわからないですが、僕はどちらかというと表現芝居に頼ってきたタイプです。音楽活動をやっていることもあって、見栄えを意識した芝居をしがちだと思う。朗読劇は体を使った芝居ができないなと思ってしまいますが、縮こまらずにやりたいです。坪井さんがどんなものを目指すかわからないけど、色々なアプローチを稽古の中で試したいですね。あと、朗読劇には色々な魅力があると思いますが、セットや背景に頼らずに状況を見せていくのが素敵だなと感じます。だからこそ、観劇してくれている皆さんが頭の中で何を足していくのかもそれぞれ。例えば「黄色い銀杏並木が……」という言葉を聞いて、皆さんがそれぞれ風景を想像しますよね。想像力によって色々な膨らみ方をするのが魅力だと思います。

――今回、奥村(健介)さんの生演奏も一つの見どころになるのかなと思います。音楽とセッションしながら作っていく魅力や面白さなども教えていただけますか?

鍵本:ピアノの生演奏ということで、まさにサムの状態でやっていただける。その場の空気感で生まれるものもあるのかなと思うと毎公演楽しみです。(ビジュアル撮影中の奥村に手を振られ)ご本人はセリフをもらうのが初めてということなので、それもすごく楽しみですね。

廣瀬:僕も色々なところで生演奏と一緒にお芝居をしているんですが、単純なBGMではなく、「なぜその音楽が流れているか」を理解して芝居をすることで、より一層透き通った形で、お客様に物語が伝わっていくと感じます。演じていて「いますごく気持ちよかったな」という瞬間があるので、音楽も大切にしながらお芝居に入りたいです。あと、奥村さんとは昔一緒に番組をやったことがあり、その時以来の共演。こういった形でご一緒できるのも、奥村さんにとっての初めてのセリフ・お芝居に立ち会えるのも嬉しいです。奥村さんはふざけたりもするけど、内心緊張していることもあるので(笑)、お芝居においては支えたいですし、音楽的な部分は頼りにしつつ。サムとリックの関係に、自分たちの間柄も反映できたらより深い見せ方ができそうで楽しみです。

――現時点で、朗読劇版の見どころになりそうだと思う部分はありますか?

鍵本:台本において大きな改変はないので、あの名作がそのまま朗読劇になるという感じだと思います。僕は、サムがストーリーテラーのようなポジションに加えて演奏もするのが、すごく生感があっていいなと思っています。あと、少し歌うシーンもあって、初めてフランス国歌を歌います。現時点で、音楽と朗読劇が上手くミックスがされている印象です。

廣瀬:劇場で、生で『カサブランカ』を味わえるのが一つの魅力ですし、さらに生演奏があって、朗読劇。一人ひとり受け取り方も変わるだろうし、演出によっても印象が大きく変わると思います。稽古前なのでまだ見えていない部分が多いですが、お客様が役に入り込んで観てくださることもできるし、全体を観ることもできるはず。また、本があるからこそ、印象的なセリフを際立たせていく魅せ方になると思います。そこは映画とはまた違う印象になりそう。作品を知っている方にも初めての方にも、名作を楽しんでいただけたらいいなと思います。

――最後に、楽しみにしている皆さんへのメッセージをお願いします。

鍵本:名作なので、「現代に蘇る」というと烏滸がましいかもしれないけど、「令和になって、あの作品がこの解像度で見られるんだ!」と思っていただけるものにしたいです。ずっと愛されている作品なので、「演じる人が変わるとこんな解釈があるんだ」という新たな発見があったらいいなと思いますね。あとは戦時下の話でもあるので、現代を生きている僕らには想像しにくいところもあるけど、今生きている日常をより大切に思えるようなメッセージを伝えられたらと思っています。

廣瀬:輝くんが深い部分をお話ししてくれたので、僕はライトな感じで。劇場に足を運んで、時間を使っていただくわけですが、本当に気楽に、「タイトルは知っているけど見たことがない」という方にも「昔観た思い出の作品だ」という方にも観にきていただきたい作品に仕上がると思います。我々は、いい時間を過ごしたと思っていただけるよう、名作の名に恥じぬ作品作りに勤しんでいくので、足を運んでいただけたら幸いです。

取材・文:吉田沙奈