ロボット演劇「働く私」アンドロイド演劇「さようなら」 平田オリザ インタビュー

■心のありか問うロボット演劇
劇作家の平田オリザ作・演出のロボット演劇を3月9、10日、浜離宮朝日ホール<小ホール>で上演する。石黒浩・大阪大学教授の協力によるロボット演劇「働く私」と、アンドロイド演劇「さようなら」の2本立て。「働く私」はロボットと暮らす夫婦の物語。ロボットがなぜか家事をする気力を失ってしまうというストーリー。「さようなら」は人間に近い見た目のアンドロイドが登場する。死を目前にした少女と、詩を読み続けるアンドロイドとの関係を描く。いずれも劇団「青年団」の俳優が共演。
9日午後2時、同7時、10日午後2時開演、各3500円。各回終演後に平田オリザによるトークショーがある。

■2作で人間との関係考える 作・演出の平田オリザさん
2作はロボットを登場させることで、人間の心のありかを問いかける。作・演出の平田さんに意図をたずねた。

 

――平田さんの演出は「セリフのタイミングを0.3秒遅くして」とか「15度左を向いて」など表面的な指示で知られています。

平田「私の演出は、非常に具体的な指示しかしないのです。これがロボットの演出にマッチしていた。ロボットのプログラマーに、もうちょっと悲しげになどと言っても意味がないので」

 

――なぜロボットを使って演劇をしようと思ったのですか?

平田「心というのは、人間同士の関係の中で生じるものだと思っています。ロボットに心はあるのかとの問いは、同時に人間は心を持っているのかとの問いになる。では心はどこにあるのというと、それは私たちがあの人に心があると認めるところに生じると思う」

平田「その点、石黒教授と私の考えは近かった。私が大阪大学で演劇を教えるようになった時、すぐ意気投合し、協力して演劇を制作することになったのです」

 

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――平田さんの演出方法であれば、ロボットでも成り立つと?

平田「そうです。これまでの近代演劇は、人間には内面があって、それを言葉などで表出しようという考え方。私はそうではなくて、表れのほうが先にあって、そこに私たちは心を感じるのではないかと思うのです。『悲しげに』とか『うれしそうに』というのでなく、具体的な外側の表れについて演出するべきだと考えています」

 

――今、ロボット技術の急発達が、多くの人間の仕事を奪うのではないかといった議論も出ています。

平田「2作は対になる作品。動き回って働くロボットが登場する『働く私』に対して、『さようなら』は働くという要素から最も遠い、詩を読むアンドロイドが登場します。ロボットと人間の関係について考えてもらえるといいと思います」