髙木雄也が音楽と愛に苦悩するロックスターに!
山本卓卓が書下ろすイプセンへの返歌を白井晃が演出!曽我部恵一が作曲!
この度、2026年3月10日(火)よりPARCO劇場を皮切りに、広島・愛知・大阪・福岡にて、PARCO PRODUCE 2026『ジン・ロック・ライム』の上演が決定しました。
孤高の人妻ヘッダが現代のミュージシャンに。
19世紀を代表する戯曲『ヘッダ・ガブラー』を下敷きに、新たな作品がいま・ここに誕生する!
近代演劇の父とも称されるノルウェーの劇作家イプセン(1828-1906)の代表作の一つ『ヘッダ・ガブラー』(1890年発表)。封建的な社会規範に縛られた人妻ヘッダが、彼女をめぐる頑迷な社会と人間関係の中で、自らを貫こうと希望と絶望の間で揺れ動き、ついには破滅の引き金を引く・・・そんな苛烈な愛と人生を描いたリアリズム演劇の傑作を、今に響くリアルな会話劇として大胆に再構築して、上演いたします。
人気ロックミュージシャンのジンはライブで我を失い、そのことがネットをにぎわせている。
窓からライムの木が見える芸能事務所。事務所の社長はジンの妻でもあるショウコだ。
ショウコの母アキコが新人マネージャーのトゴシに付き添われて事務所にやってくる。午後、ジンの元恋人で、今や事務所を背負う存在になったエートがライター・コマによる独占インタビューを受けるという。ノンバイナリーのタレントとして人気を集めているホムラは最近エートと親しい様子だ。
ジンとショウコ、そしてエートを巡る過去と現在、世間からの眼差しと自身とのギャップ、自らの立場と将来への見通し。これらが絡み合い、事態は思いがけない方向に動いていく。
当時の道徳観や常識を破壊する作品を発表し続けたイプセンへの現代的返歌として、本作品を書き下ろすのは、演劇集団「範宙遊泳」を率いる山本卓卓。2024年上演の『東京輪舞』(演出:杉原邦生、出演:髙木雄也、清水くるみ/PARCO劇場)では、オーストリアの作家シュニッツラーが1900年に発表した『輪舞』を、現在の東京に生きる多様な人々の刹那の恋をスケッチする2人芝居に生まれ変わらせた。本作では、『ヘッダ・ガブラー』を下敷きに、現在の日本の芸能界で、愛すること愛されることを求め、ありのままの自分自身でありたいともがく人々を描きます。
演出は白井晃。『2020』(22年/作:上田岳弘 出演:高橋一生/PARCO劇場)など、常に意欲的な作品を世に問い続けている白井が、今回は、自身のキャリア史上最年少の作家である山本とタッグを組み、世代の異なるそれぞれの視点から現代社会を見つめ、一つの物語を織り上げます。
そして音楽を担当するのはサニーデイ・サービスの曽我部恵一。2024年、「範宙遊泳」に楽曲提供をし、その音楽性と演劇との相性の良さを証明した曽我部が、山本、そして白井からのラブコールを受け、劇中歌をはじめ、全ての楽曲を作曲いたします。
辣腕クリエイターが創造する作品に相応しい華やかな実力派キャストが勢揃い!!
主演は、山本作品『東京輪舞』で8役を演じた髙木雄也。本作では、息苦しい現代社会で、アーティストとして、夫として、 一人の人間として、苦悩するジンを演じます。ライブのシーンも見どころです。共演は、ジンの元恋人である人気アーティスト・エートに黒羽麻璃央。人気ミュージカル「エリザベート」でルイジ・ルキーニを演じるなど、ミュージカルを中心に活躍する黒羽が久々のストレートプレイに挑みます。ジンの妻であり所属する芸能事務所の社長でもあるショウコ役には、映画やテレビドラマでの活躍が目覚ましく、その透明感と繊細な感情表現に定評のある蓮佛美沙子が現代劇としては5年ぶりとなる舞台に立ちます。そして、事務所の若手タレントで、ノンバイナリーのホムラを演じるのは、ミュージカルや2.5次元作品での躍動感ある演技のみならず、近年ではストレートプレイや映像での活躍も注目される永田崇人。大手出版社のライター・コマ役は個性派俳優として映画・ドラマ・舞台で活躍する駒木根隆介、事務所の若手マネージャー・トゴシ役は、舞台を中心に活動し、ナイーブな役柄からコミカルな役柄まで幅広くこなす小日向星一が演じます。さらに、ショウコの母であり、ジンやエートが所属する事務所の先代社長の妻であるアキコは、舞台を中心に長年活躍してきた実力派俳優の銀粉蝶。深みのある表現と華やかな存在感で、劇世界に奥行きを与えます。
イプセンの時代から100年以上の時を経て、すっかり相貌を変えた現代。しかし、いま、ここでも、人々は変わらず、愛を求め、自分自身であろうと苦闘する。そんな私たちの姿をリアルに繊細に描く「ジン・ロック・ライム」に、どうぞご期待ください。
STAFF
[作] 山本卓卓 Suguru Yamamoto
作家・演出家・俳優。「範宙遊泳」代表。幼少期から吸収した映画・文学・音楽・美術などを芸術的素養に、加速度的に倫理観が変貌する現代情報社会をビビッドに反映した劇世界を構築する。青少年や福祉施設に向けたワークショップ事業など、幅広いレパートリーを持ち、アジア諸国や北米で公演や国際共同制作、戯曲提供なども行い、活動の場を海外にも広げている。ACC2018グランティアーティストとして、19年9月〜20年2月にニューヨーク留学。
『幼女X』でBangkok Theatre Festival 2014 最優秀脚本賞と最優秀作品賞を受賞。『バナナの花は食べられる』(23年)で第66回岸田國士戯曲賞を受賞。近年の作品に『心の声など聞こえるか』(作・演出・出演/24年)、『東京輪舞』(作/24年)、『愛と正義』(作/25年)、『東京8時58分』(作・演出・出演/25年)など。
<コメント>
『東京輪舞』に続き、PARCOさんと髙木さんとのご縁に感謝です。
キックオフの際に髙木さんが「死について考えさせるような内容のものをつくりたい」と話してくれた時「ああこの人はアイドルとして俳優として、芸術家として、本当に誠実に世界と向き合っているんだな」と思いました。そこに白井晃さんの力強くも柔軟に世の中に問いかける演出が加わること、曽我部恵一さんの音楽、彩り豊かなキャスト陣、総合芸術としての底力が立ち現れるでしょう。この世の中を、この生命を、私はまだ諦めていません。この劇と、観客と、未来を信じているので。
[演出] 白井晃 Akira Shirai
1957年京都府生まれ。早稲田大学卒業後、2002年まで遊◉機械/全自動シアター主宰。2014年よりKAAT 神奈川芸術劇場のアーティスティック・スーパーバイザー、2016年4月から2021年3月まで同劇場の芸術監督を務めた。2022年4月より世田谷パブリックシアター芸術監督。ストレートプレイからミュージカル、オペラまで幅広く発表し、緻密な舞台演出で高く評価される。近年の主な演出作品に、『レディエント・バーミン』(16年)、『アダムス・ファミリー』(14/17年)、『オーランドー』(17年)、『バリーターク』(18年)、『華氏451度』(18)、『春のめざめ』(17/19年)、『怪人と探偵』(19年)、『No.9-不滅の旋律-』(15/18/20年)、『アーリントン』(21年)、『アルトゥロ・ウイの興隆』(21年)、『マーキュリー・ファー Mercury Fur』(15/22年)、『Medicine メディスン』(24年)、『シッダールタ』(25年予定)など。読売演劇大賞優秀演出家賞、湯浅芳子賞(脚本部門)、佐川吉男音楽賞、小田島雄志・翻訳戯曲賞などの受賞歴がある。
<コメント>
劇作の山本卓卓さん、主演の髙木雄也さん共に初顔合わせのお二人です。ですので、この作品を演出する事自体が、私にとっては大きな挑戦です。むしろ冒険と言っても過言ではありません。演劇の形は、さまざまに変化を遂げています。そんな中、自分自身のイメージを自ら解体するような振り切った考えでこの作品に臨みたいと思います。現代における閉塞感とは何なのか。そもそも私たちの閉塞感自体が簡単に言葉にできるものではありません。そんなもどかしさの中にいる登場人物たちと私は語り合っていきたいと思います。
[音楽] 曽我部恵一 Keiichi Sokabe
1971年8月26日生まれ。乙女座、AB型。香川県出身。’90年代初頭よりサニーデイ・サービスのヴォーカリスト/ギタリストとして活動を始める。1995年に1stアルバム『若者たち』を発表。’70年代の日本のフォーク/ロックを’90年代のスタイルで解釈・再構築した全く新しいサウンドは、聴く者に強烈な印象を与えた。2001年のクリスマス、NY同時多発テロに触発され制作されたシングル「ギター」でソロデビュー。2004年、自主レーベルROSE RECORDSを設立し、インディペンデント/DIYを基軸とした活動を開始する。以後、サニーデイ・サービス/ソロと並行し、プロデュース・楽曲提供・映画音楽・CM音楽・執筆・俳優など、形態にとらわれない表現を続ける。
<コメント>
主人公が自我をとことんまでえぐり闘っていくというヘビーな主題。
自分も音楽でとことん付き合っていきたい。
最後には疲れ切って倒れ込んでしまうくらいに。
キャストコメント
髙木雄也 Yuya Takaki
来年は『ジン・ロック・ライム』と云う舞台に出演させていただきます。白井晃さんに演出していただけるのは初めてなのですが、以前白井さん演出の舞台を見た時に、物凄く世界観に引き込まれるし、役者さんの素晴らしいところをすごく引き出される方なんだなと思ったので、色々な刺激をもらい、新たな自分を皆さんに見ていただけるように、精一杯楽しみます!!山本卓卓さんに本を書いていただけるのは『東京輪舞』以来なので、沢山話し合いながら理解を深めて、自分なりに表現させていただきますので皆さん遊びにきてくださーい!待ってます!
黒羽麻璃央 Mario Kuroba
この度、『ジン・ロック・ライム』エート役で出演させていただきます。黒羽麻璃央です。白井晃さんが演出を手がける作品に参加できること、とてもとても嬉しく思っております。そして頼もしい共演者の皆様、スタッフの皆様と共に、個性豊かな登場人物達が悩みもがき、苦しみながら進んでいく新たな愛の物語を稽古場から頑張って作り上げていきたいと思います。よろしくお願い致します!
蓮佛美沙子 Misako Renbutsu
私たち人間のエゴや脆さが、少し怖いくらい宿っている作品になる気がしています。自分らしく生きること。死ぬこと。心の底から、愛したい、愛されたい、認められたいという願い。ジンの心の叫びの根源は、決して珍しいものではなく、誰もが聞き覚えのある声なのかもしれません。生きていたらどうしたってついてくる様々な感情を、刹那的なパワーでお届けできたらと思います。
永田崇人 Takato Nagata
『ジン・ロック・ライム』にホムラ役で出演させていただきます。初めて脚本を読んだとき、鳩尾にずしんと響くような“痛み”を覚えました。脚本だけでここまで心を揺さぶられる作品に携われることを嬉しく思います。ホムラは、男性にも女性にも見える難しい役ですが、丁寧に稽古を重ね、その繊細さと強さを魅力的に演じられるよう努めます。劇場でお待ちしています。
駒木根隆介 Ryusuke Komakine
ここ数年、いわゆる古典と呼ばれる演劇作品に携わる機会が増え、なるほど40代とはこういうものかと思っていたのですが、 リアリズム演劇の古典+最新現代演劇の融合という、濃密な創作が必要な企画に参加できて身の引き締まる思いです。初めてご一緒させていただく髙木雄也さん、10年以上振りになる演出の白井晃さんはじめ、舞台では初めてとなる共演者の皆さまも多いので、身を引き締めつつ楽しみたいと思っています。
小日向星一 Seiichi Kohinata
いつか立ってみたいと思っていたPARCO劇場に素敵な皆様とご一緒に立てること、とても嬉しく思います。山本さんの脚本が白井さんの演出で、どんな舞台に作られていくのか、今からワクワクしています。先輩方のお芝居からたくさん学びながら、楽しみながら誠心誠意に頑張ります!劇場でお待ちしております。
銀粉蝶 Guin-Poon-Chaw
遠い昔、『ヘッダ・ガーブレル』を読んで印象的だったのは、登場人物のだれにも共感や感情移入ができなかったこと。理不尽な感情と常軌を逸した行動の連続に「なんでそうなるの!?」と心で叫んだ挙げ句、気づくとスッカリ作品世界に捉えられている。わたしにはかなりショックな文学体験でした。
さて、その衝撃作を下敷きにした今回の作品、「稀代の悪女」ヘッダを「男性」に置き換えるというトンデモな異常事態が進行中なのであります、SHOCK!!!
