名前を聞いたことあるけど観たことない劇団ってたくさんありますよね。わたしの中で、万能グローブガラパゴスダイナモス(以下ガラパ)もその一つでした(もちろん他にもたくさんあります)。そんなガラパの方が東京にいらっしゃると聞きまして、これはもう何かの縁だと思ったので、ガラパ主宰の椎木樹人さんにお話を伺いました。(ローチケ演劇部・白)
はじめまして(笑)。名前は聞いたことがあったんですけど、ガラパの公演を観たことがないんです。弊社の福岡オフィスにもガラパさんの公演をよく観ているスタッフがいて、「面白いですよ!」なんて教えてくれていたのですが、まだ観れていないんです。こんな状況で大変失礼なんですけど、観たことないからこそ「ガラパさんってどんな劇団?」っていう形でお話お伺いできればと思っています。
ありがとうございます(笑)。
まずは劇団名の由来とか聞こうと思っていたのですが、10周年の時のインタビューでお話されていて、それはそこを確認いただくとして、今回20周年ということですが、東京公演は毎回やられているんですよね?
はい。もう15年くらい、ほぼ毎年東京で公演をやっています。最初は駒場アゴラ劇場で、地方の演劇を呼ぶ企画があって、それに呼んでいただいて上演したのが初めての東京公演でした。それまで僕らはずっと福岡だけで上演していたのですが、その頃(京都を拠点とした)ヨーロッパ企画とかがいて、地方にいながら東京でもやる、みたいなのが一番得だよな、みたいな空気だったんです。僕らも福岡で上演しながら、東京でも上演する、という流れを作りました。
どんなお客様層なんですか?
福岡で観てくれる人は、8割くらいは、“演劇といえばガラパ”な人か、普段演劇を観ないような人が多いんです。それはそれでやりがいもあるし、その人たちを楽しませるのが僕たちの使命だと思っています。
東京での上演には特別な思いがあるものです?
福岡の演劇を盛り上げていくっていう想いもあるんだけど、福岡だけで上演を続けていると、今やっている作品が本当に面白いのかって疑問に思うことも多々あって。お客様は楽しんでいただけるけど、目の肥えた評価が欲しいみたいな気持ちもあって、東京で自分たちの立ち位置を確認する、という思いがあります。最近はそれも次の段階に行かないとなとも思っていて、東京でも待ってくださる方も増えてきましたし、手伝ってくれる方もいらっしゃって、今は東京のそういった人たちに会いに来るっていう感覚が強いかもしれない。
アウェイ感ってあったりします?
以前より気負わなくなったっていうのはあるかもしれません。もちろん作品自体は勝負かけてつくってますけどね。基本はコメディなので笑かしたいっていう思いはありますが、東京と福岡だと笑いのポイントが違ってて、実は東京の方が受けるんです。東京の方は演劇を観慣れている方が多いのか、セリフのやりとりやワードを細かく拾ってくれるんですよ。
客層はどんな方が多いんですか?
ガラパが好き!というファンが3割でしょうか。残りは先ほどもいった普段演劇をあまり観ない方だったり、それこそ初めて演劇に触れる方だったり。旗揚げ当初から、演劇に触れない人に観てもらいたいと思ってて、劇団員が街に出てチケットを手売りしたりしているんです。よく言われるのは「ガラパ演劇の入り口に最適」と。初めて観ても絶対楽しめる、演劇のハードルを下げてくれるという嬉しい感想をいただきますね。年齢層はバラバラで、劇団員も若い子がいるので若いお客様も結構多いです。
東京だと、半分くらいは福岡出身者が応援してくれているイメージがありますね。
劇団員がとても多いですね。
はじめは、同級生と「天下取るぞ!」という意気込みで始めた劇団でしたけど、喧嘩もしたし、音信不通になっちゃった人とかもいたし、10年くらいたったら、上京してしまう人とか、就職したり、結婚したりと人が離れていってしまう人もいました。そんな時にオーディションをはじめたんですよ。福岡でやり続けるっていう使命感みたいなものもすごくあって、コメディをやるにあたっても、若い人をいれて若い人の感性でいろいろ若い人が面白いと思うことを教えてもらいたいなという思いもあって。今ではもう立ち上げたメンバーは僕と川口以外残っていないのですが、後から入ってきたメンバーも「私たちガラパです」って名乗ってくれているのがすごく嬉しいんです。
ひとつの劇団で年齢層が幅広いのも珍しいかもしれません。本当に若い方も多いですよね。
若いメンバーだと23歳とかで、旗揚げした時3歳なんですよ。そういう人たちがガラパを面白いと思って入団してくれるっていうのはまだまだ劇団として続ける価値があるのかなって思ってます。そして劇団にはコミュニティの価値があるなと思っていて。もちろん作品を作る上で、ガッツリやるっていうのは大事なんだけど、例えば子育てしながら手伝える時だけ手伝うとか、デザインだけやるみたいな関わり方をするメンバーがたくさんいる方が集団として強いなって思ったんです。多様性というかいろんな感性がある人間がたくさんいるコミュニティとしての価値がガラパにはすごくあると思っているんです。
素敵なコミュニティ。
ただ若い子たちが例えば売れたい!とか考えた時に、その子たちにとって劇団が利用できる場ではあるべきだと思っています。一方で、そういうある意味“緩い関わり”を求める人がいるならば、それはそれでそういう関わり方もちゃんと認められる劇団でありたいなと思っています。
12月の公演についてお話聞かせてください。過去にも上演した作品の再演ですね。
12月の公演は10周年の際にも上演した作品の再演となります。前回「見上げんな」という企画公演で福岡だけでなく、東京でも多くのお客様に観ていただきました。「見上げんな」は群像劇で、ロード―ムービーのような作品だったのですが、元々ガラパは、ワンシチュエーションコメディの会話のやりとりをメインで作っているんです。今回は「見上げんな」観てくれた方にも観て欲しいって思ったときに、やっぱりガラパが一番得意な自信あるものを見せたいなって思ってこの作品を再演しようとなりました。
ガラパの強みってなんでしょう。
ガラパを立ち上げた当初は、リアルタイムワンシチュエーションコメディという時間も飛ばない設定でやっていたんですけど、それだけだと広がらないなと考えていた時に、SF要素をいれたんですよね。そうすると世界が広がって「これが俺たちのスタイルだ」となったんですよ。今回がそれで挑もうと思っています。さっきも言ってくれましたけど、ガラパの名前を知っているんだけど観たことない、みたいな方がいっぱいいる気がしていて。そんな方に1回見てほしいなって思っています。観た上で「はいはい、なるほどね。」と思う人がいても全然良いんですけど、きっと気に入ってくれる方もいるんじゃないかと思っていて。
最後に今後の野望を!
今後の野望は、大きく言えば「福岡の一部」になりたいってのがめちゃくちゃあって。演劇とか芸能の枠ではないところで、福岡といえばみたいな時にガラパの名前が挙がるようになりたいです。福岡という土地で、劇場という場所だけでなく、いろんなところとつながっていろんなことをやっていきたいって思っています。劇団としては、この先30周年40周年と続けていくこと、そして東京でも足踏みしている感があるので、ステップアップしたいと思っています。20周年なんですけど、あまり集大成っていう気持ちはなくて、常に現在進行形でやっていきたいと思っています。


