つかこうへい十七回忌特別公演『熱海殺人事件』ラストメッセージ|荒井敦史・村山彩希 インタビュー

写真左より)村山彩希、荒井敦史

つかこうへいの代表作の一つ『熱海殺人事件』が、つかこうへい十七回忌特別公演『熱海殺人事件 ラストメッセージ』として2026年2月・3月に上演される。
木村伝兵衛部長刑事を演じるのは、今回が6度目の出演となる荒井敦史。水野朋子婦人警官を大原優乃と村山彩希(Wキャスト)、犯人大山金太郎を横田大雅(CLASS SEVEN)と百名ヒロキ(Wキャスト)、そして熊田留吉刑事を高橋龍輝が演じる。演出は2024年に『熱海殺人事件 Standard』の演出を務めた中江功が引き続き担当。荒井と再度タッグを組む。
おなじみのシャッフル公演や、十七回忌特別公演も予定されている本作。6度目の出演となる荒井敦史、そして先日、『新・幕末純情伝』で役者として存在感を示した村山彩希に、意気込みや作品への思いを聞いた。

――荒井さんは今回で6回目の木村伝兵衛役です。いまはどんな心持ちで稽古を待っていますか?

荒井 また新しいキャストの皆さんと一緒に作品を作れることが嬉しいです。この作品って、何かが起きたときに役者がブレる瞬間がすごく面白い。村山さんと一緒に芝居をするのが初めてなので、稽古場でどんな感じになっていくのか楽しみです。

――村山さんは初参加となります。出演が決まっての心境をお聞かせください

村山 まさかまた、つかさんの作品に出られるなんて思っていなかったので驚きました。先日出演した『新・幕末純情伝』では、ずっと答えが分からないまま突き進んでいて。達成感はあったものの、「本当にあの沖田総司で良かったのか?」という不安が残っていました。
そんな中、こうして声をかけていただけたので、総司を自分のものにできていたのかも、と思えて嬉しかったです。まだ、演技が大好きと言えるところまではいけていないので、今作でちゃんと演技を好きになりたいなって思います。

――『新・幕末純情伝』では見事に主演をやり遂げていらっしゃったので、「まだ演技が好きとは言えない」と聞いて驚いています

村山 好きになりたかったけど、やっぱり歌やダンスと違ってコツがつかめないことが多くて。事前につかさんの作品は台本に書かれていない情報が多いという話を耳にしていたこともあって、「じゃあどこから情報を得たらいいんだろう?」ってなっちゃったんです(苦笑)。
がむしゃらにやっていく中で、「これが表現したいものなのかな」とわかった瞬間は、すごく嬉しかったし幸せでした。今回もそういう感覚をつかんで、役を自分のものにできたらいいなと思っているのですが、正直不安も大きいです。

荒井 僕もずっと不安ですよ。幕が上がる直前、「白鳥の湖」が流れる瞬間、毎回嗚咽していますからね(笑)。つか作品はやってみないとわからない。狙ったことがうまくできた試しが一回もなくて、永遠にキャッチボールをしている感覚です。不安が解消されちゃったら、それはもう自分のエゴで、その先がないと思う。
だから、ずっと不安でいることは、自分を叱咤するという意味で重要なことかもしれない、と今思いました。

村山 それを聞いて安心しました。このまましっかり不安を持っていようと思います!お話を聞いて、改めてすごく心強いなって感じています。

荒井 でも僕はずるい男なので、「と思う」としか言わないから(笑)。実際のところはわかんないかもです!

村山 (笑)。やってみるしかないですね。

荒井 そうそう!ちゃんと不安も持ってるから、やってみれば大丈夫……だと思う!

一同 (笑)。

――村山さんは水野役とどう向き合おうと思っていますか?

村山 前回が初めて尽くしで、役をつかむのに時間がかかったんですよね。その経験も踏まえて、まずは自力でどこまでやれるのか挑戦した上で、行き詰まったら歴代の水野の映像を見ていこうかなと思っています。

荒井 過去作品の水野を見るか見ないか。これは悩ましいね。

村山 そうなんです。

荒井 一切見ないのも手だとは思う。水野という役の型はあるけど、先に見るとその印象が強くなっちゃうだろうから。逆に何も準備しないで稽古に入るっていうの、めちゃくちゃ面白いなと思います。

村山 映像を見ると、それが正解だって思い込みすぎてしまうところがあるんですよね。違うことは違うと言ってくださる方々ばかりだと思うので、今のところ、あまり前情報を入れずに挑もうかと思っています。

――荒井さんは6度目の伝兵衛役。目指す伝兵衛像とは?

荒井 初出演以前から稽古場に押しかけて見学していたんですが、その頃からやりたい伝兵衛の方向性が一貫してありました。それが、損をしてもいいから全部を拾う伝兵衛。
その伝兵衛像っていうのは、真ん中にいるイメージとはかけ離れているし、下手したら伝兵衛が周りに振り回されているようにも見えかねない。でも、僕はそんな伝兵衛がやりたくて、公演を重ねる中で、伝兵衛がちゃんと捜査しているニュアンスを足していくようにしています。
最初から「こう演じたい」と決めていたので、事前に見ないで演じるっていうのはできる気がしない。って考えると、僕さっき村山さんにすごく酷なことを言ったなと反省しています。すみません。すぐ謝ります!

村山 (謝るの)早すぎる(笑)。

――お二人の今作での目標を教えてください

村山 稽古場でのオーダーをしっかり自分のものにして、今までの水野役の中で一番良かったと、誰かの印象に残るものが作れたらと思っています。

荒井 “君臨する”かな。デカいことを言って自分を追い込んできた人生なので、“唯一無二天上天下唯我独尊ハイパーウルトラに降臨する”くらい書いておいてください(笑)。
全てを制してみたい。振り回されているように見えて、最後はすべてが僕の手のひらの上にある、というところに持っていきたいです。
前回が2024年の「Standard」で、ちょっと期間が空いたんです。それがすごく寂しかった。2025年12月上演の『熱海殺人事件モンテカルロ・イリュージョン』(以下「モンテ」)が発表されたときも嬉しいと同時に、「モンテ」の単独があるということは「Standard」がない年もあるんじゃないか……とか、いろんなことを考えました。
そんなことを経ての本作。キャストが変わることで変化が生まれますが、不思議と収まるところに収まる瞬間がある。そんなつかさんの戯曲のすごさを感じながら、今回も純粋に楽しもうと思います。

――最後に公演を楽しみにしているファンへの“ラストメッセージ”をお願いします

村山 荒井さんはいろんな水野さんを相手にしてきたので、私も最初は手のひらの上で転がされると思うのですが、いつか私が手のひらの上で転がしたいなって(笑)。稽古序盤でアドリブが生まれるような仲のいいチームになれたらと思いますし、毎公演違うものをお届けできるよう頑張ります!

荒井 左に同じくです。いや、もう楽しみにしておいてください。みんなすごいですから。

村山 急に巻き込まれた(笑)。

荒井 みんな同じ船に乗るワンチームだからね(笑)。兎にも角にも、お楽しみにしていただければ、ということです。

インタビュー・文・撮影/双海しお