2025年11月に東京・有楽町のイマジンスタジオにて、ニッポン放送×南極『SYZYGY』が上演された。連日大盛況となった本作は、南極とニッポン放送の初タッグ作であり、作・演出を手がけるこんにち博士の最新作。
物語の舞台は、有楽町のラジオ局。生放送前に勃発したトラブルに焦るスタッフがひょんなことから、放送を禁じられていたいわく付きのラジオドラマ「SYZYGY」を発掘する。しかしそれに触れたら最後、収録現場、いや世界は前代未聞の大パニックに…。相次いで起こる予期せぬ事態、果たしてそれらは本当に“予期せぬ”事態か。禁断のラジオドラマ台本「SYZYGY」に記されていた秘密、そして、世界の行末はいかに…!
キャストには南極の劇団員10人が総出演するほか、ポッドキャスト番組『島田秀平とオカルトさん!』でお馴染みの島田秀平が1日限定のゲスト出演を果たした。絶賛配信中の『SYZYGY』の見どころや南極の新たな挑戦や今年の活躍、そして来年の展望について、こんにち博士、古田絵夢、揺楽瑠香の3名に話を聞いた。
※本インタビューは2025年12月に実施
創作も物語も、“予期せぬ方向”へ進んでからが楽しい
―今回はなかなかない、終幕後のインタビューです。キャストとしてはもちろん、作・演出のこんにちさん、宣伝美術やグッズのデザインを手がける古田さん、音楽を担当する揺楽さんに本作の創作の経緯や工夫、見どころや魅力をお聞きできたらと思います。まず、こんにちさん、本作のテーマからお聞かせ下さい。
こんにち ニッポン放送さんとご一緒すると決まった時からラジオの劇にすることは決めていました。イマジンスタジオでやることも決まっていたので、「舞台美術としてもラジオが1番面白いはず」と。ただ、いざやってみると、当初思っていたラジオ劇とは違うものになりました。生放送のラジオドラマを完成させたいけどトラブルが相次いでさあどうする、というバックヤードものっぽい感じになるかなと思っていたんですけど、全く違う、想定外の展開に! ラジオもので言うと、僕は三谷幸喜さんの『ラヂオの時間』がすごく好きなのですが、あれと戦うためには自分たちのフィールドにもっと寄せなきゃいけない。後半にかけては特にそこをめちゃくちゃ意識しました。劇中のセリフにあるように「目の前のものを1つずつ面白くしていく以外に戦う術はない」という気持ちで…。

―そのセリフ、私も南極というカンパニーの哲学が詰まった一言だなと感じながら観ていました。お二人はどうでしょう? 創作と上演を経て感じた本作の魅力をお聞かせ下さい。
古田 私はまさにそのセリフを発する、ラジオドラマの新人ディレクター・小尻という役だったんですけど、ここしばらく人間ではない役が続いていたので、久しぶりに人を演じました(笑)。今回は脚本に先行して、キャストが自分の役をそれぞれ作り込むことから創作を始めたんですよ。どういう人物像にするのかをこんちゃんと練り上げて、脚本に反映してもらう感じで…。
こんにち このやり方で作るのは初めてでしたね。
古田 キャラクターのことを自分が1番知っている状態っていうのがすごく新鮮でした。いつもは脚本を元にキャラを作っていくのに、今回はむしろ脚本に対して「小尻はこういうことは言わない気がする」とか話し合ったりして…。いつもとは逆のアプローチが楽しかったです!
揺楽 私は道路交通情報を伝える、伊豆教子というアナウンサーの役だったんですけど、ニッポン放送で実際に使われている交通情報センターのジングルが流れてから自分の声が続く、というつくりになっていたので、すごくドキドキしました。
こんにち ああ、たしかに! 2幕から出てくる伊豆教子はある意味で一番難しい役所かもしれない!
揺楽 今までの劇団公演は南極の世界だけで作り上げていたからその中で完結する感じがあったけど、今回は現実に使われているスタジオや音の中に自分たちが入っていく。そこで「ラジオのプロとして交通情報の原稿を読む」というお芝居をするのは、思った以上に緊張しましたね。あと、久しぶりにお客さんとの距離の近さを感じながらの上演で、特に今回は会話劇だったから、客席の空気を感じながら演じるのがすごく楽しかったです。自分が出ていない時も裏でモニターを見ていたんですけど、いつもよりお客さんと演者のグルーヴを感じて嬉しかった!

島田秀平さんに全員で手相を見てもらったら…
―1日限りのゲスト、島田秀平さんとの共演はいかがでしたか?
こんにち ニッポン放送さんと一緒に企画を立ち上げていく段階から、「ゲストをお呼びするなら島田さんがいい!」って言っていたんですよ。子どもの時からずっとテレビで見ていましたし、都市伝説とか怖い話とかも聞いていたので…。あと、改めて調べたら島田さんの身長が184cnもあったんですよ。これはもう本人役で出てもらったら、存在感からまず絶対面白いと思いました。脚本を書くのも苦労はなく、イメージの島田さんを描いたら、そのまま島田さんがその状態でそこにいてくれたというか…。稽古も楽しかったですね。
古田 楽しかった〜! やっぱり、すごくプロの芸人さんだっていう感じがしました。声も大きくて、その場の空気とか流れでめちゃめちゃアドリブやアレンジもして下さって、最後の最後まで試していく感じもすごくアグレッシブで…。
こんにち 島田さんが出ていない回も、『島田秀平とオカルトさん!』のブースと自分たちのスタジオを繋ぐような感じで演出はしていたんですよ。島田さんの姿はないけれど登場はしているという感じで…。なので、どの回も島田さんの存在を感じながらの上演ではあったんですけど、やはりゲスト出演回は嬉しかったし、楽しかったですね。やっぱりインパクトがすごいんですよ。配信はそんな限定の島田さんゲスト出演回なので、ぜひ他の回を観た方も違いを楽しんでもらえたらと思います。あと、生の島田さん、やっぱり背がめちゃくちゃ高かったです!
揺楽 あと、毎回すごく美味しい差し入れを下さって…。南極の普段の稽古ではそんないいものは絶対に食べられへんから、遠慮なくバクバク食べました!
こんにち みんな稽古場でいつも空腹やもんな。
古田 めっちゃ嬉しかったですよ〜!
こんにち 島田さん、引いてなかったかな…。
古田 「みなさん遠慮なく食べていいですね!」とは言ってはったかも!
こんにち こんな腹ペコの人間が10人も集まってるの珍しかったやろうなあ…。
全員 あはははは!
こんにち あと、これは南極のみんなとも話していたんですけど、僕らが手相に関心を持ったきっかけも島田さんがバラエティ番組とかで手相の話を沢山されるようになったからだと思うんですよね。
―手相も見てもらいましたか?
古田 1人1人ずつ、全員分を見てくれました!
揺楽 「来年、再来年すごくいいよ」みたいに言われているメンバーがいっぱいいて、私もそう言われて心強かったです! 「頑張ろう」って思える明るい占いでしたよね。でも、こんさんだけ、言われていることが違って…。
こんにち 手相というよりも手の柄について言及されました。僕の手、めっちゃ線が多くて、しかも入り組んでいるらしくて、「シンプルに手の模様がおかしい!」って言われて…(笑)。手の模様について話すのに時間を使ってしまって、手相まで辿り着けへんかったんですよ。
古田 でも、生年月日でも見てもらったやんな?
こんにち そう。手の柄を見なくていい方法で!

『SYZYGY』での挑戦、今年の収穫、来年の展望
―賑やかで楽しい稽古場の様子が伝わってきます。毎公演、果敢に新しいことに挑戦している南極ですが、今回の作品で新たに挑戦したことはありますか?
こんにち 実はワンシチュエーションものをやるのが初めてなんですよ。その上で意識したのは、どうやって“南極らしさ”を出すかということ。ワンシチュエーションの面白い劇は世の中にいっぱいあるから、「自分たちだけの何かで勝負しないと意味がないな」と思ったんです。最初はラジオブースを舞台にすること自体にワクワクしていたんですけど、いざ創作を重ねていくうちに、ラジオブースという場所で何か特別なことは起こらなくて、むしろその先の、ラジオを聞いている側で何か変化があったり、マジカルなことが起こるんじゃないかなって思ったんです。そういう意味で、ラジオブースは「予感をする場所」なんですよね。ラジオ局というクローズドなワンシチュエーションの中で物語をどうドライブさせたか。そこが見どころになっているので、色々“予感”をしながら楽しんでもらえたらと思います。
古田 ビジュアルとグッズのデザインは、とにかくヘンテコでマジカルっぽい雰囲気にしようと思って取り組みました。ただ、ビジュアルは脚本も上がっていない段階で作るから、もはやそれを逆手にとって「ビジュアル先行で石使うから、脚本にも石を盛り込んで下さい!」って気持ちで作りました(笑)。どんな劇になるのかが分からなかったので、当時の私の「この作品、一体どうなるの!?」って気持ちが現れているとも思うし、奇しくもそれが内容にもリンクして、いい感じに仕上がったなって…。
こんにち 大量に拾ってきた石の中から「これはユガミ(ノーマル)っぽい」とか、一人ずつ決めていく時間があって…。
古田 そうそう、一人ずつ決めて、一つずつ石に照明当てて撮影するっていう…。

―ここにも手間暇がかかっている…! ビジュアル撮影においても南極らしいクリエーションの一端をお伺いできました。音楽の方はどうでしょうか? 今回特に工夫したことがあれば教えて下さい。
揺楽 今回は会話劇だったので、かなりささやかに流れている感じで、目立たない曲が多かったんですよ。でも、ほぼ聞こえていないにしろ、音楽は作品を印象づけるためのものではあるから、統一感にこだわって作りました。いつもより大味ではないけれど、だからこそ細かいニュアンスまで慎重に、という気持ちで…。あと、これは毎作品こっそりやっているんですけど、本気で当てにいく音楽だけじゃなくて、ボケとしての音楽みたいなものも仕込んでいて…。「音楽を通じたこの絶妙なダサさやボケを拾ってくれる人がいたら嬉しいな」くらいの気持ちなんですけど、そういう遊び心は毎回大事にしているので、配信でも是非音楽にも着目してもらえたら…!
こんにち みんなで歌った歌もあるんですよ! 一幕終わりで歌が流れるんですけど、それもオリジナルです。
揺楽 こんさんに「絵夢さん演じるディレクター・小尻の不器用さが現れるような曲をつけたい」と言われて、超歌いにくい、不思議な変拍子の歌を作りました。急ピッチで必要だったから「歌詞も今日ちょうだい!」ってこんさんに言ったら、稽古場のホワイトボードに休憩中にバーって書き出して5分でくれたんですよ。難しい曲やのにみんなもすごく頑張って歌ってくれたから、客出しの時もその曲を使いました。
こんにち 作詞の才能が…あるかもしれない…。
―そう聞くと、もう一度聴きたくなりますね。ちなみに、不思議といえば、『SYZYGY』と書いて「シジジー」と読むこのタイトルも不思議ですよね。これにはどんな意味や思いが込められているのでしょう?
こんにち 「造語ですか?」ってすごい聞かれるんですけど、実在する言葉なんですよ。その言葉の意味は……ぜひ調べてみてもらえたらと思います。これから配信を観る方は鑑賞後にでも…。演劇の中にもヒントがあるかもしれません!
―激動の2025年のラストを飾った『SYZYGY』。この1年でますますの大躍進を遂げた南極ですが、最後にそれぞれの役割から今年の振り返りと来年の抱負をお聞かせ下さい!
古田 デザイナーとしては、これからもっともっとヘンテコなものを作っていきたいです。演劇の公演ではなかなかないグッズを作りたいし、今年は手作りで作れる範囲のものを作り続けた感じだったんですけど、その域を広げ、技術も磨き、もっといろんなことができたらいいなと思っています。来年の南極の公演はもちろん、グッズでもびっくりしてもらえるようにがんばります! ちなみに、グッズは通販でも買えるようになっていますので、配信を見て下さった方も覗いてもらえたら…。今回も他のどこを探してもない、ちょっとびっくりするものを売っているので、ぜひ見にきて下さい。
揺楽 音楽は大抵1人で作っていて、私物のシンセサイザーや身の回りにあるおもちゃや楽器を使って録音しているんですけど、『ゆうがい地球ワンダーツアー』でみんなで演奏したり、楽器から音を作ったりしたのがすごく楽しかったので、今後はそういう共作もどんどんできたらいいなと思っています。もちろん、シンセサイザーなどの打ち込みも楽しくて好きなんですけど、みんなで奏でる音を録音したり、その場で生まれるものをもっと活用できたらいいなって…。手触りが音に残り、それが記憶にも残るような。そんな音楽が作りたいです。
こんにち 仕事を辞め、南極を会社化もして、まさに激動の1年でした。『wowの熱』、『ゆうがい地球ワンダーツアー』、そして『SYZYGY』と3公演やって、その間にAマッソ加納さんの単独公演をやったり、映画を撮ったりもして、「作る」ということに重きを置いた2025年。このボリュームでやるのは今年で終わりかな、来年はちょっとゆっくりになるかな、と思っていたんですけど、なんだかんだ、そうはならなさそうです!なので、来年の抱負もやっぱり「いっぱい作る」。止まらずにいこうと思うので、楽しみにしていて下さい!

インタビュー・文/丘田ミイ子
