朗読劇『したいとか、したくないとかの話じゃない2026』河合郁人インタビュー

©︎AOI Pro./サンライズプロモーション

足立紳による小説を、足立と新井友香の共同脚本によって朗読化し、2023年に初演、2025年に再演された朗読劇『したいとか、したくないとかの話じゃない』。通常の朗読劇とは異なる、映像を多用した斬新な演出や、「セックスレス」をきっかけに夫婦のあり方、子育てのあり方を模索するストーリーが大きな反響を呼んだ。3度目の上演となる今回は、河合郁人と橋本マナミ、そして松崎祐介と宇垣美里の2組が夫婦役を熱演。Wキャストで上演される。朗読劇初挑戦となる河合に舞台に立つことへの思いや公演への意気込みなどを聞いた。

 

――久しぶりの舞台出演になりますね。改めて出演が決まったときのお気持ちを聞かせてください。

正直なところ、最初は悩みました。坂本(昌行)さんが主演していた『Oslo(オスロ)』という作品に出演して以来なので、舞台でのお芝居は5年ぶりになります。主演舞台となると(2020年上演の)『天国の本屋』が最後なので、戸惑いはありましたが、朗読劇はしたことがなかったので、新たな挑戦をしたいという気持ちで、お芝居から逃げずにお引き受けしました。


――久しぶりの舞台に出演しようと思った決め手は?

これまでお芝居に苦手意識があったんです。ですが、ファンの皆さんが「観たい」と言ってくださったり、仕事関係の方からも「お芝居はもうやらないの?」と言っていただくので、自分でもなぜそこだけ逃げているんだろうと感じるようになって。逃げるのはカッコ悪いですし、新しい挑戦となる朗読劇なので、これを機に自分も変わりたいなという思いがありました。せっかくお声をかけていただいたので、挑戦してみようという気持ちになりましたね。


――苦手意識があったことには何か理由があるのですか?

普段、バラエティや情報番組に出させていただくことが多いので、自分の言葉で話すことが多いんですよ。なので、お芝居でセリフを発することに違和感を持っていた時期があったんです。お芝居は好きなのですが、自分がこの人になりきれているのかなとか、僕ではなくもっと演技したい人がいるのではないかという気持ちがどこかにあって。今、思うとそれもただの逃げだったと思うのですが、自分の言葉ではない言葉を話すことに違和感があったんだと思います。ですが、吹き替えのお仕事などをやらせていただくようになって、その違和感が少しずつなくなってきました。だからこそ、これまで苦手なことにも挑戦していきたいと思いますし、今回、しっかりと自信を持てるきっかけになる作品にしたいです。


――なるほど。そうした中でも、きっと舞台に立つことの面白さも感じているのではないかと思いますが、河合さんが思う舞台の魅力は?

コンサートでもそうですが、やはり何かを演じたり、パフォーマンスしたときのお客さんの反応が僕は好きです。なまものだからこそ出せるものや新鮮さがあって、毎回、新しい発見や出会いがあるので、そうしたところも楽しみにしています。


――では、本作の脚本を読んだ感想を教えてください。

妙にリアルだなと感じました。もちろん、自分は結婚していないので想像でしかない部分もありますが、共感しながら最後まで読みました。自分も人の喜びを喜べない時期があったので、そうしたところは共感できますし、結婚している人だけでなく、いろいろな世代の方に楽しんでいただけるのではないかと思います。妙にリアルで、怖くて、楽しくて、悲しくて。意外にも思えるストーリーのオチも、他では感じられないリアル感があって、読んでいて楽しかったです。


――孝志という役柄については、今、どのようにとらえていますか? そして、どんなところに共感できますか?

共感できるのは、先ほどいったように、人の喜びが喜べなかったり、自分がやりたいことを貫き通しているけれど、それがうまくいかなかったりするところです。自分も2020年くらいまで、仕事でしたいことが明確に形にできなかったんです。今思うと、それは自分のせいなのですが、当時は「自分は間違っていない」という感覚でした。周りの方からアドバイスをもらっても、「周りが間違っている」という気持ちがあったので、孝志も似たような気持ちだったのではないかなと。きっと孝志は僕と同年代なんだと思います。僕は今、38歳なのですが、38歳だと結婚してから月日が経っているという方もたくさんいると思いますし、子どもが小学生で、夫婦関係ではこの本で描かれているような問題も起こって…。僕自身は体験してはいないですが、この世界の中でそれを体験していきたいと思います。
逆に似ていないところを挙げるとすれば、孝志の(自分の思いを)隠さずに口に出せるところですね。僕は思っていてもなかなか人には話せなかったので、伝えられるということは尊敬できる部分だなと思いますし、成長するために必要なことだなとも感じました。

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――恭子役の橋本マナミさんの印象や、今回の共演で楽しみにされていることは?

きっと皆さんも同じお気持ちだと思いますが、本当におきれいな方ですよね。美しさもあるけれども、同時に柔らかさや暖かさも感じるので、意外と簡単に「ダメな夫」を演じられるのではないかという気がしています(笑)。甘えたくなるというか、構って欲しくなるような雰囲気があって、安心感があるなと。恭子には、強さと同時に弱さがあって、柔らかさもあるので、そうしたところに(橋本との)共通点があるのかなと思います。どんな素敵な演じ方を見せてくださるのか、楽しみにしています。


――今回、孝志役はダブルキャストでふぉ~ゆ~の松崎祐介さんが出演されます。

ダブルキャストなので、本番で一緒になることはないですが、ふぉ~ゆ~のメンバーと一緒にいるとやっぱり安心感がありますね。松崎はちょっと特殊なのでどれだけ安心できるか分からないですが(笑)、お芝居や舞台経験は松崎の方が豊富なので、分からないことがあったらいろいろと相談しようと思っています。


――松崎さんとは本作についてすでに何かお話されましたか?

まだしていないです。ただ、ふぉ~ゆ~とは昨年も一緒にコンサートをしていますし、中学生の頃からの付き合いなんですよ。松崎は1つ先輩ですが、同級生のようなノリで、いつもわちゃわちゃしています。


――俳優としての松崎さんの魅力はどんなところにあると思いますか?

良くも悪くも、その場の空気をしっかり変えてくれるところかなと思います。「悪くも」と言いましたが、それが良い方向に変わるのが松崎です。型にはまらないやり方だけれど、それが結果的に流れを変えるきっかけになるタイプです。そうした要素を松崎は持っています。今回、この朗読劇では、ガラッと流れが変わる瞬間があるので、僕も松崎に負けないようにしないといけないと考えています。


――河合さんが演じる孝志と、松崎さんが演じる孝志は、それぞれどんなキャラクターになりそうですか?

僕の方が弱々しい孝志になりそうな気がします。松崎の方が、良い意味で“ポジティブなアホ”になるのかなと(笑)。僕のイメージする孝志は、強く見せているけれども、実はめちゃくちゃ甘えん坊で、めちゃくちゃ弱いところがあって、ずっと気張って生きてきたけれども、弱味を見せてから楽しく生きられるようになるというキャラクターです。そうしたところをうまく出しながらも、弱々しい部分を強く出しすぎないように気をつけないといけないとも思っています。弱っちい夫とポジティブな夫になれば、お互いの良さが出るのかなと今は考えています。

――この作品は新たな挑戦となる作品だとおっしゃっていましたが、2026年はどんな目標がありますか?

ソロ活動を始めて2年経ったのですが、1年目は自分の力をつけるための「吸収」の年だと考えていました。そして、2年目は「吸収」にプラスして「攻める」。いろいろなチャレンジをしていく年でした。今年、3年目は、今までの経験を「固めていく」作業ををしていきたいですね。これまでもずっと「MCになる」を目標に掲げてきましたが、その目標を目指しつつ、いろいろな経験をして、挑戦を続けながら「河合郁人はどういう人物なのか」を、もっとたくさんの方に知っていただける1年にしたいです。

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――ところで、この作品では夫婦関係を描いていますが、それにちなんで河合さんが人との関係を築く上での秘訣や、コミュニケーションをする上で意識されていることを教えてください。

僕は、28歳くらいまで人見知りだったんですよ。年を重ねれば重ねるほど、「僕のことをみんなは好きじゃないから」とか「あの人は僕のことを嫌いだから」とか、勝手に自分で決めつけて、誰かのせいにして、人に近づかないようにしていたんです。でも、人のせいにしてばかりいる自分がすごく嫌になって。それで、周りの方に相談をしてみたんです。それまで親にも悩みを相談できないくらいだったんですよ。自分の悩みで人を悩ませるのが嫌だったので、人に相談しようと考えたことがなかったけど、そのとき、きちんと話して、相談してみたら、自分が思っていた以上にみんなが真剣に聞いてくれて、言葉を返してくれました。それ以降、自分の弱味や苦手なものを初めて会う人や一緒にお仕事をする人に早めに教えるようにしています。その方がお互いに楽ですし、甘えられるところは甘えようと。それに、自分1人でできることは限られていますから。なので、相手の年齢を問わず、素直に話をすることは日頃から心がけていることです。


――人に悩みを話すようになったことで人見知りも解消されたんですか?

解消しました。あとは、そのタイミングで人見知りをしている人生がもったいないと思ったことも変わった一つの要因だと思います。その頃からMCをしたいという気持ちがあったので、MCをしたいのに人見知りをしている時間がもったいないと考えるようになって。嫌われるのが怖いから人見知りをしていたというところもあったのですが、どうせ嫌われるなら話してから嫌われた方が気持ちいいなと思うようになり、そこからなくなりました。MCをされている方でも人見知りの方はいらっしゃると思うんですが、僕はあまりお仕事と普段のスイッチの切り替えができないんですよ。切り替えようと試したこともあったんですが、仕事になると人を寄せ付けないような空気を出してしまっていたので、今は、普段と仕事も同じ感覚でいいのかなって思っていますし、そうしてからはすごく楽しくお仕事させていただいています。


――そうしたマインドが変わったきっかけはあったのですか?

きっかけは、もう辞めてしまったジュニアの子と話をしたことです。28歳くらいの頃は、あからさまに周りの人を寄せ付けない空気を出していたんですよ。メンバーとも話さなかったくらい人と話していなかったのですが、その子だけが普通に話しかけてきてくれて。「ご飯行きましょうよ」と何度も誘ってくれて、一緒にご飯に行くようになったんですが、そのコミュニケーション能力がかっこいいなと思うようになりました。彼は、人のことを見ているけれども、人の機嫌を取ろうとはしていないんです。素直にご飯を一緒に食べたいからきてくれる。それから、鈴木おさむさんとお仕事でご一緒したときに、自分の悩みを相談してみたことがあったんです。そうしたら、「こうした方が良い」という直接のアドバイスではなく、その場にいる人たち全員の人生のお話まで広げてくれて。自分が悩んでいることを話してもその場の空気を壊さず、楽しい場を作ることができるんだと気づけました。その辺りから変わっていったのかなと思います。でも、そうしたことに30歳になる前に気づけてよかったなと思います。目標が叶えられていない30代の男には、謎のプライドが生まれるんですよ。それは多分、多くの人に共通している感覚だと思います。例えば芸人になりたい、アイドルになりたいという目標を持ってやってきたけれど、うまくいっていない。それなのに、「自分のやり方は間違っていない」と頑なに思ってしまうんです。僕も28歳くらいまでその感覚でした。でも、そこからが本当に大事な時期だと思いますし、そう考えると、気づけてよかったなと思います。


――ありがとうございました!最後に、ご来場を楽しみにされているお客さまにメッセージをお願いします。

日常生活の中での葛藤がそのままが描かれているので、難しいことは考えずに、そのまま観て楽しんでいただければと思います。この世界観にお客さまが入り込めるように、僕もしっかり演じたいと思います。久々の舞台ですので、ぜひ期待してください!

 

インタビュー・文/嶋田真己