フランスの劇作家ロベール・トマの傑作サスペンス劇『罠』。2024年に上川隆也主演にて、「読売新聞創刊150周年記念舞台」として上演された本作がはやくも2026年に再演が決定。6月から7月にかけて、全国8都市を巡る。
ダニエルの行方不明の妻が戻ってくるも、それはまったくの別人で……。というところから始まる本作。6人の男女が登場するが、果たして何が嘘で、何が真実なのか。最後まで結末のわからない“罠”が張り巡らされている。出演には、主演の上川隆也をはじめ、藤原紀香、渡辺大、財木琢磨、須藤理彩、藤本隆宏の豪華顔ぶれが揃う。
再演を前に、前作に引き続きダニエルを演じる渡辺大にインタビュー。初演での手応えや役へのアプローチ、再演への期待などについて話を聞いた。
――まずは舞台『罠』再演が決まったときのお気持ちを教えてください。
初演の際に、みんなで「またやりたいね」という思いがあって解散したので、こんなにはやく再演をさせていただけて嬉しかったです。反面、ドキドキするというか。僕にとってこの作品は、軽やかに始まる舞台ではなく、ドロドロとしたところがある作品なので、その怖さにまた触れる緊張感もありました。
――改めて、ダニエルという人物について教えてください。初演の際はどういったアプローチをされたのでしょうか?
本当に素朴でいいやつというか、純粋だなと感じていました。純粋だからこそ迷いがない。その時々の行動が自分にとっての最善策だと思っているし、純粋に行方不明となった妻を待っている。この作品は6人の登場人物に秘密があり、互いに騙し合います。ダニエルにも表に見えていない秘密があるのですが、演じるうえでは、その秘密に完全に蓋を閉じるようにしています。なので、僕のダニエルは秘密を隠し通すために演じるということをしていないんですよね。この絶妙な人物像を描くのが、ロベール・トマさんの作品の面白さだなと感じています。
――騙し合いの物語だけど、騙そうと思って演じてはいない?
そうです。前回、登場人物たちが自分の中に濁りを持っているとダメだなという感覚があって。一点の濁りもなく生きて、騙し合うことを感じさせないことが、この作品、ひいてはこの座組の面白さだなと感じたので、ダニエルに関してもそういった演じ方をすることに迷いはなかったですね。
――そこは演出の深作健太さんとも話しあわれた部分ですか?
けっこう話しましたね。ダニエルは騙すための芝居をするというより、完全に蓋をしていると思う、というところから始めて、物語の前日譚も一緒に考えました。物語としては冒頭の時点で妻のエリザベートが行方不明になっていますが、その前の、エリザベートとダニエルの出会いから順を追って考えて、そのなかでのダニエルの生き方というものを考えました。

――前作で初めて深作さんとご一緒したとのこと。ほかに深作さんとの作品づくりで印象的だったことを教えてください。
深作さんは本番中でもノートを出す(※演劇用語でフィードバックやヒント、提案を出すこと)方なんですよ(笑)。初演でも、本番期間のラストの方まで修正をしていたので、きっと深作さんの中にも「もっとこうしたい」がたくさんあるんだろうなと。それによって、今回の『罠』も前回とはまた違ったものになるかもしれないですね。
――ダニエルは登場人物のなかで唯一、他の全員と会話を重ねていくという役です。他の役、役者との掛けあいでとくに記憶に残っているものはありますか?
個人的に好きなのが、登場人物のなかでも変化球な人物であるメルルーシュです。序盤からずっと緊張感があるまま走り続けてきたところで、彼が登場すると一瞬、緊張が緩む。お客さんも、一回油断するところだと思うんですよ。そこにまた緊張感が入り混じる緩急がとても面白い。僕としては、そこを経て、そこから続くシーンを走らせるという意味でも思い入れがありました。
――最初から最後まで舞台上にいるというのも、なかなか経験しないことですよね。
そうなんです。だから僕は客観的にこの作品を観たことが一度もないんですよ(笑)。他の人のシーンを袖から眺めるという時間も存在しないので、すごく不思議な感覚。始まったと同時に駆け抜けて、気づくとカーテンコールになっている作品です。
――初演をご覧になったお客様は「真相を知っている」状態で観ることになります。そういった方々には、どんなふうに楽しんでほしいですか?
初演のときも「もう一回観たい」というお声をたくさんいただいたんですが、やっぱり真相を知っているからこそ、答え合わせをしながら観てもらいたいですね。真相がわかるのが、本当にラスト数分です。驚いている間にカーテンコールになっていると思うので(笑)、例えば東京で観てから違う劇場で観てもいいし、なんなら記憶が新鮮なうちに続けて観るのもいいかもしれないですね。ここでは誰が犯人というのは言えないのですが(笑)、真相を知ってから振り返ると犯人の狂気が浮き彫りになってくると思います。犯人なのに、そんな言動してたの? と。そこを楽しんでもらえたらと思います。
――逆に、今回初めてご覧になる方には、どんなところに注目してほしいですか?
絶対に初回は前情報なしで観てもらいたい! どこにどんなヒントが隠れているのか、気を抜かずに言葉ひとつひとつを拾ってみてほしいです。
――最後に公演を楽しみにしているファンへのメッセージをお願いします。
初演時もたくさんの方に観ていただいたサスペンスの傑作です。前回をご覧になった方も、そうでない方も、ぜひこの機会を逃さず、衝撃の結末をご覧になってください。
取材・文・撮影/双海しお
<衣裳>
スーツ(ラルディーニ)/シャツ(ジャンネット)
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