根本宗子が作・演出を手がける舞台『超、Maria』が、東京・有楽町のI’M A SHOWにて、再演される。今回は初演キャストである根本・もも(チャラン・ポ・ランタン)に加え、田村芽実・清水くるみによるWキャストで上演される。かねてより本作への出演を熱望していた田村と、彼女が絶大な信頼を寄せる清水。数々の作品で共演を重ね、互いを高め合ってきた2人が、この濃密な音楽劇にどう対峙するのか。作品への思いなど話を聞いた。
――お2人のご出演が決まった時のお気持ちを聞かせてください。
田村 元々ずっとこの作品をやってみたくて、根本宗子さんも「機会があったらやりたいね」と、言ってくれてはいたんですね。でも、なかなかそんな機会ってなくって……やっぱり演劇は一緒に作ってくれる方がいないと難しいものなので。でも今回は、私がやりたいと言ったから決まったということでは無いんです。まったく別のところでやろう!という話になっていたそうで、そこに私が「くるみん(清水)とやりたい!」と話をしていたことや、根本さんも「この二人でやりたい」という思いが重なって、いろんなことが合致して叶ったという感じですね。
――根本さんのお気持ちとしては、田村さんの「やりたい!」という言葉が大きな後押しになっていたそうですよ。根本さん自身では再演をやるタイプではないと思っていて、タイミングもなかったところに田村さんの言葉があったから実現できたとお話されていました。
田村 そうなんですね! 嬉しい! ずっと言い続けていてよかったです(笑)。根本さんの作品はたくさん観てきましたけど、やっぱりその時に出ているその人がやることに意味がある役が凄く多いなと思っていて。当て書きも多いですし。だから「またあの作品を観たいです!」という話もよくしているんですけど、「あの作品を私がやりたいです」と言い続けているのは、自分がやった役以外で『超、Maria』だけなんです。初めて観た時から「自分みたいだな」と感じる部分があって、だからこそ私も演じたい、とずっと言い続けてきました。私の父も単身赴任で離れている時間も多かったので、自分の人生とも凄く重なったんです。
――共感の多い作品だったからこそ、「また観たい」ではなく「私もやりたい」に繋がったんですね。清水さんは今回のお話を聞いた時、いかがでしたか。
清水 めいめい(田村)とミュージカル『ヘアスプレー』でご一緒した時から、ずっとこの作品の話をしてくれていたんですよね。その時、私はまだ観られていませんでしたが、めいめいが相手に私を選んでくれたことが嬉しかったです。きっと、めいめいが、ずっと言い続けてくれたのもあるでしょうし。別のところでいろいろな方が動いてくださっていたのも含めて、凄くタイミングというか、ご縁を感じますね。

――一緒にやるなら清水さんと、というのは当時からの想いなんですね。根本さんが田村さんを“裏プロデューサー”と言っていたのもうなずけます。
田村 それは…責任重大だ(笑)。でも、くるみん以外の人とやる想像が全然つかないですね。
清水 めいめいとは、『ヘアスプレー』の作品の中ではあまり関わらない役だったんですが、楽屋は一緒で仲が良かったんです。そういうのもあって、一緒にやるイメージもつきやすかった部分もあるのかな?
――根本さんからも「私の役を託せる女優さんは清水さんだ」という思いがあったそうですよ。
清水 そう言ってくださるのは凄く嬉しいです。私は、すごく根本さんが好きなので。もう20代前半の頃の話なんですけど、根本さんのしゃべり方や癖とかも真似しちゃって、それが自分の中に染み込んでいるんですよ。それが自分みたいになっちゃってます。「似てるよね」って言われるんですけど、心の中で「私が根本さんの真似をしてるんです、すみません」っていう気持ちです(笑)
――それは根本さんの世界観への共感や憧れがあったということでしょうか。
清水 そうですね。というか女の子としての憧れというか……すごく魅力的に見えました。「女性」というよりかは「女の子」という言葉が合う、いつまでも少女っぽさのある方だというのが、とても魅力的に見えたんです。根本さんが書く言葉も素敵だし、こういう言葉を日常的にもしゃべりたいと思いました。ちょっとめんどくさい子でも、根本さんが書く言葉を発すれば、むしろ可愛く見える。根本さんは、女の子のめんどくさい部分を可愛く見せる天才だと思っています。そういう女の子であれば世の中も楽しくなるだろうな、生きていても楽しいはず。だから、根本さんの書く女の子を演じたいし、そういう女の子になりたいという気持ちがありますね。

――田村さんにとっての、根本さんというのはどういった存在ですか。
田村 もう本当に「天才」。その一言ですね。もはや「神様」みたいな気持ちです。やっぱりどれだけ近い存在になっても、リスペクトはずっと変わらず、いつどこをとってもスゴイと思っています。プライベートの相談とかも結構していて、電話で「今、めいめいの中ではこういうことが起こっていて、こういう状況だから、きっとこうするのが正解」って分析してくれるんです。私にとってはお医者さんみたいな存在かもしれません。作品が素晴らしいのはもちろん皆さん知っていますけど、あれだけ忙しいのに、ご飯に行く時も根本さんは絶対にお洒落な、いいお店を予約してくれます。それも凄くスマートに。それでいて、いつも違うお店に連れて行ってくださるんですよね。
――演出家としての根本さんの凄さは、どういうところに感じますか。
田村 やっぱりまずは脚本家として作品のすごさを感じてしまうんですが、演出でも根本さんの頭の中に絶対的な正解があるし、しかもそれが一番面白いはずだという確信があるんです。細かいコンマ何秒の間まで指示があるんですよ。役者の自由度がない、と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、根本さんの作品の場合はそこに絶対的な意味があるので、役者もやりがいを見出せますし、楽しいんです。それに、10代後半の時からいろんな大人たちを率いて、ずっと先頭で旗を振ってきていること自体がすごいことですよね。演出家や脚本家として素晴らしいのはもちろん、それ以前に人間としてすごいんです。私とは、次元の違う人だと思っちゃいます。
清水 私が最初に根本さんとご一緒した時に、あの独特な台詞回しを上手くできなかったんです。そうしたら根本さんが、実際にやって見せてくださったんです。根本さん自身、俳優でもいらっしゃるので、見せていただいて「なるほど、こういう台詞回しか!」とストンと入ってきました。この音の高さ、このリズムで言えば、このシーンが面白くなるんだ!という“お芝居のノウハウ”を教えてくれたのは、根本さんだと思っています。私の中でお芝居の基準となっているのは、根本さんと、劇団☆新感線のいのうえひでのりさんですね。

――『超、Maria』の作品としての魅力はどのようなところに感じていらっしゃいますか。
田村 私はもう、初めて観た時に全ての常識がひっくり返っちゃいました。子どもの頃からいろんなミュージカルを観たり、出演したりしてきましたが、それが本当に世界の中での一部分でしかなかったのかも、と思わされました。そこには根本さんの世界にしかない常識があって、外の世界の常識は通用しないところもあります。でも、だからこそ人間はエンタメが好きで、エンタメを観に来てるんだ、と私は思いました。日常を観たくて来てるわけではなくて、その世界観、そこで必死に生きる人たちを観に来ている。わざわざリアルに寄せすぎる必要はないし、でもちゃんとリアルを生きている我々の心が共鳴できる。『超、Maria』に関わらず、根本さんは毎度それを提供してくださるので、やっぱりすごいです。
清水 『超、Maria』は結構ヘビーな内容だし、昼ドラにしようと思えばできてしまう内容です。でもそれをポップな音楽劇にして明るく描いています。それを観た時に「自分も落ち込むことがあってもポップに考えよう」とか「自分の中で音楽流しちゃおう」みたいな感覚になれるのが根本さんの作品の魅力だし、今回は特にそれを感じますね。
――幸せと不幸せの表裏一体感や、人を羨む気持ち、そこから生まれる葛藤などが描かれていますが、そこに対してはどう受け止められましたか。
田村 私自身、あまり人を羨ましいと思うことがなくて。やきもちとか、「あの子になりたかった」と思ったことが一度もないので、そこに対しては、あまり思うところはなかったですね。ただ、子どもの頃から姉が唯一のライバルでした。同じ夢を追っていたので、片方だけがオーディションに受かると、そっちに親が付きっきりになったりすることもあって、そういうときは疎外感もあって。今はとっても仲良しですけど、正直、お互いに複雑な感情を抱えた時期もありました。姉はすごく優秀で何でもできるタイプ。一方、私は出来の悪い子どもだったので、姉へのコンプレックスもありました。でもオーディションに私が通ることも多くて、姉は姉でなんで妹の方が選ばれるんだろう?と、悩んだり苦しんだりしたんじゃないかな。
――確か田村さんがアイドルのオーディションを受けたきっかけもお姉さまの後押しがあったとお聞きしました。きっと互いにライバルであり、よき理解者でもある、素敵な関係じゃないかと思います。
田村 そうですね。私がアイドルをやっていた時期にも、難しい時期はありましたが、今はお互いをリスペクトしていますし、姉妹であり一番の友達でもありますね。

――清水さんは作品で描かれる羨望や嫉妬についてどのように感じていらっしゃいますか。
清水 私は普通に「あの人いいな」と思ったりします(笑)。でも、「まあ自分はこういうところがいいと思うし、そこを伸ばそう」ってなりますね。どちらかというとポジティブで、根本さんの演劇っぽい思考やマインドがある。たぶん、そこが似ているから好きなのかな。私は一人っ子なので、めいめいの話を聞いて「姉妹で同じ世界を目指していると大変なんだな」と、思いながら聞いていました。
田村 でも、この仕事をしている人で、羨ましいと思う人いるのかな?私も、自分が落ちたオーディションのキャストを見て「あ、この子になったんだ、そっか」と悔しい思いをすることはありますけど、その子自身を羨ましいとは思いません。ただ、自分のやるべきことをやるだけ。
清水 自分が落ちた作品って、観に行く?
田村 あんまり行かないかも。
清水 私は、むしろ観に行くんですよ。そこがめいめいと違うところかも。観に行って「なるほど、こういうアプローチね。これは私にはできなかった」と納得したり、「なんで? これ私でもできたんじゃない?……でもまあ、いっか!」となるか。
田村 「まあいっか」なんだ(笑)
清水 その作品をやらなかったから今の仕事があるし、まあいっか。って思えるようになりました。これも、大人になったってことですかね(笑)

――(笑)。さて、本作の大きな魅力の一つである音楽についてもお聞きしたいと思います。チャラン・ポ・ランタンの小春さんが楽曲を手掛けられていますが、音楽が作る世界観についてはどう感じていますか
田村 本当に最高です! 元々チャラン・ポ・ランタンの音楽は聴いていましたし、以前根本さんとご一緒した時も小春さんが曲を書いてくださっていて、とにかく大好きです。アコーディオンだからこそ作られる旋律や音楽性が、根本さんの奇抜な世界観にすごく合っていますよね。なんていうか…「タバスコの上にさらにタバスコとかブラックペッパーとかスパイスをガツンと入れちゃう」みたいな、刺激的な感じが気持ちよくて。どんどん刺激中毒になっていく感覚があります(笑)。いい意味で、わびさびなんかは感じさせない、激甘な瞬間はとことん激甘、という振り切った感じが大好きです。
清水 根本さんの作品のような、少し奇抜な世界に本当にぴったりの音楽ですよね。キャッチーで耳に残る曲ばかりですし、根本さんが書く歌詞との差が全くない。台詞と歌詞が繋がっている感じが凄いです。実は、『キンキーブーツ』でもめいめいとはWキャストで同じ役を演じていたんですけど、その時に稽古場や楽屋でめいめいが一人で『超、Maria』を歌ってくれていたんですよ(笑)。
――そうだったんですね(笑)。 田村さん版で一通り予習していたような感じですね。
田村 でも、それを根本さんにボイスメモで録音して送ったら「歌詞違うよ」って返ってきちゃって。すいません……って(笑)
清水 でも、何回か観ただけで歌えるって凄くないですか? 私、めいめいの歌を聴いてから本家を観たんですけど、ほぼ一緒でしたよ(笑)。それくらいキャッチーで耳に残る音楽ってことなんですよね。

――今日のお2人の掛け合いを聞いていても、すごく仲がいいのが伝わってきますが、お互いの印象についてお聞かせください。
田村 最初にくるみんと会ったのは『ファクトリー・ガールズ』の楽屋で挨拶した時だったかな。くるみんは私にない魅力をたくさん持っている女優さんなので、凄く尊敬します。私にはどうやってもできない表現をいっぱい持っているので。今回もそうですし、今後もちょくちょくご一緒する機会が多そうな、縁のある方なんだろうなと思っています。
清水 嬉しい!私はめいめいの舞台を観てましたし、「なんて素敵な女優さんなんだ」と思って、もう好きになっちゃって。私はめいめいの「引き出しの多さ」が凄いなと思いながら、いつも観ていました。稽古でも「今日はこれを試してみよう」って感じで、常に新しいことに挑戦しているんです。私はそれがなかなか試せないタイプなので、どうやったらそんなにレパートリーが出てくるんだろうって。
田村 あと、私は『FNS歌謡祭』の練習の時をよく覚えてるよ。くるみんはまだハンドマイクで歌うのに慣れていなくて、マイクがグイグイと動いちゃってて、それを見て笑っちゃって。
清水 そう!こっちは必死なのにずっと笑ってくる(笑)。その時はまだ人見知りモードが発動していて、めいめいに対しても私がクールぶってたときので、「くるみん、可愛い!面白い!」って後から言われて、めちゃくちゃ恥ずかしかったです。
――そこから距離が縮まって、今では阿吽の呼吸という感じですね。今回は「超ドレスアップデー」など、客席を巻き込んだ企画もいろいろあるようですが、いかがですか。
田村 めちゃくちゃ楽しみ! ドレスアップしたみなさんを見るのが楽しみです。
清水 私たちもドレスアップして観たいよね。こういうイベントが似合う作品だと思うので、ドレスアップDayに限らず、どんどんおしゃれして来てください! カーテンコールなどでも、みなさんと絡みたいですしね。今回は客席降りのシーンもあるので。
田村 私、コロナ禍以降で初めての客席降りかも。嬉しいな。

――これから本格的に稽古が始まるかと思いますが、忙しい中でのルーティンなどはありますか。
清水 美味しいご飯を作って食べることですね。舞台は意外とスケジュールが規則的なので生活リズムが整いやすいんです。だからお弁当を作って持っていったりします。私は自分で作るご飯の方が体に合うので。
――ちなみに、気合を入れる時のメニューは?
清水 特別なものはないですが、コンビニのおにぎりみたいに海苔がパリパリの状態で食べられるラップを使って、シーチキンのおにぎりを作ると「よっしゃ、頑張るぞ」ってなりますね。
田村 私もおにぎりを作ったりもしますけど、マネージャーさんが私の様子をうかがって、今日は肉、今日は魚ってお弁当をセレクトしてくれるんです。それを楽しみに頑張ってます(笑)。「今日は本当にお肉が食べたかった!」という時にバシッと生姜焼き弁当が出てきたりすると、マネージャーさんからの愛を感じて頑張れますね。
――最後に、公演を心待ちにしているみなさんへメッセージをお願いします。
田村 アトラクションのような、サーカスのような楽しさがある作品です。個人的には、年齢を重ねた女性の方にもぜひ来ていただきたいなと思っています。私がそうだったように、演劇の概念や常識が気持ちよくぶち壊される体験になるはずですし、これからの演劇を観る視点もきっと変わるはず。演劇が初めてという方はもちろん、演劇がお好きで見慣れている方にも、ぜひ来ていただきたいです!
清水 上演時間も約75分(予定)と見やすいですし、有楽町や銀座でショッピングやデートをする合間に、映画やライブを観るような感覚で気軽に来てほしいです。ドリンクを飲みながら、私たちとの一体感を楽しんでもらえたら。みんなで最高の作品を作っていきます!
インタビュー・文/宮崎新之
