こんにちは。
いきなり顔面をすみません。

MEMELTの宇城悠人といいます。
いま、非常におもしろい演劇を見ています。
6月10日(水)から小劇場 下北沢B1で開幕する
画餅『ユートピア』です。

コントグループ・テニスコートのメンバーでコント作家・演出家の神谷圭介さんによるソロプロジェクト「画餅(えもち)」待望の最新作。
通し稽古を見学してきたので、レポートします。
<STORY>
どこかなつかしい町、常世町。
女子大生のエミとユキは、常世町の「消えゆくもの」を集めた風変りな雑誌作りに熱中する。
雑誌作りをきっかけにデザイナーを目指しはじめるエミと、ただ楽しく作りたかったユキ。
2人と常世町の人々がすごす少し奇妙な数年間の風景。

画餅作品をほぼコンプリート観劇してきた
強火ファンの僕からお伝えします。
今度の画餅は、切ない。
本公演5作目にして新境地

これまでの画餅の作風といえば、
洗練されたセリフと
ポップで可愛いビジュアルによる
都会的なハイセンスコメディ。
いわゆる主人公のいる”ドラマ”は描かれてきませんでした。
ところが
本作『ユートピア』では、
鋭い笑いはそのままに
確実にドラマが描かれます。

※以下、ややネタバレあり。
消えゆくもの
ユキとエミの雑誌に載っているのは、
常世町の雑踏の音や、川辺の小石など、
日常のなかで忘れ去られていくものばかり。
それらはどれも、
消えゆくからこそ
2人にとって特別な魅力を持っています。

ところがまるで雑誌そのもののように、
楽しかった2人の日々さえも過去のきらめきに変わってしまう。
ユキとエミがいったいどうなるのか?
それは本番においといて。
僕がとくに印象に残ったセリフを紹介します。
大人になったユキのセリフ↓
「自分だけは好きなままでいたいものってあるじゃないですか」
『ユートピア』には、
「変なもの」を全力で好きでいる少し変な人がやたらに登場します。
しかしユキは彼らをけしてないがしろにしません。
ユキにとっては2人の雑誌が、
「変に見えても、自分だけは好きなままでいたいもの」を
衝動のままに集めたものだったから。
そして同時にそれは、
画餅の作品そのもの
でもあるのではないでしょうか?
「ここは変な論理で押し切っちゃうところです。この人なりの、熱を伝えようとする感じでいきましょう!」
神谷さんの稽古場でのディレクションも、キャラクターの偏愛に寄り添う言葉が印象的でした。

が、しかし
このように書けば、
神谷さんが嫌がる
ことはわかっています。
なぜなら神谷さんは、
作品で自身のことを
ストレートに表現するのを避ける、いや
照れる劇作家
だと思われるからです。
しかし、ご本人が言わないなら
僕のようなサムウェアズ馬の骨が声を大にして言いたい。
今度の画餅は、切ない。
と。

その点、聞いてみました
神谷さんは、こう語ります。
「私小説的な作品は避けてきたんだけど、結果的に少しだけそうなってきた気もしています」
「”ユートピア”は、存在しない空想上の楽園。実際には触れられない理想という意味で、『画餅』の名前の由来である『絵に描いた餅』と一緒です。人生はいいときに終わってくれないから、幻想的に思い描いていた憧れがいつまでも心のなかに残っている。みんなその景色をどう処理しているんだろう。そんなことを思って『ユートピア』というタイトルをつけました」
僕、大好物なんですよね。
喜劇人のシリアスな面が見える作品が。
ビートたけし『浅草キッド』
リリー・フランキー『東京タワー~オカンとボクと、ときどきオトン~』
チャップリン『ライムライト』
リッキー・ジャーベイス『アフターライフ』……
枚挙にいとまがありません。
本作『ユートピア』にも、僕はそのエッセンスを嗅ぎ取りました。
ドリームチームの俳優陣
名古屋愛さんと西出結さんコンビの低体温なやりとりが独自のトーンを作り出す本作。
2人のまわりをかためるキャスト陣も強力に魅力的です。

「特技:大声」というプロフィールに一点の偽りもない八木光太郎さん。
圧倒的な声の大きさに、新幹線が通ったのかと思い
おもわずJR東日本に電話しました。
舌根(ぜっこん)を見せてくれます。
おもしろすぎます。

上品かつ様子のおかしい櫻井成美さん。
意味不明なことを言っているのに、
優雅なまでにさりげないのでワンテンポ発見が遅れる
いっこく堂的なおかしみがあります。

役への憑依度でコメディの域を超越する荒威ばるさん。
どんな突拍子もないキャラクターでも、
「この人にはこう言うまでの人生があったんだろうな……」
と思わされるドキュメンタリー性が唯一無二すぎます。

華と影をあわせもつ石井博物館さん。
不条理なギャグに不可欠な不穏さをもたらします。
いい意味で怖いのです。
歩くリミナルスペース。
ほとんどのキャストが
それぞれ画餅の過去作での出演から集まったドリームチーム。
とにかく画餅の作品といえば、
ギャグのなかにひそむ旅情や詩情が、
ベロン

あ、すみません。
BeRealの時間なので失礼します。

おまけ
〇ユートピアの対義語って知ってますか?
ユートピアは日本語で「理想郷」や「桃源郷」。
その反対、絶望に支配された「暗黒郷」を「ディストピア」といいます。
ディストピアといえば、私・宇城が脚本をつとめる
舞台『おいしいディストピアの作り方』が7月8日(水)から開幕。
専門家監修のもと、AIが暴走する暗黒社会をリアルかつ超リアルに描きます。
こちらもぜひご留意ください。
公演詳細はこちら⇒https://memeltweb.studio.site/news/stage5release2
取材・文・写真:宇城悠人(MEMELT)
1998年生。「可笑しいアート」を掲げ、演出家/作家/デザイナー/音楽家/写真家/保育士の6人で活動するクリエイター劇団MEMELTの共同主宰・作家。サイエンスや歴史などを創作のテーマとすることが多く、取材やリサーチに基づいた事実ベースの情報を、笑いや発想の転換を用いて突拍子もない表現に翻訳することを得意とする。佐藤佐吉賞2024優秀脚本賞受賞。出版社の児童・教養編集部勤務を経て編集者/ライターとしても活動している。
