画像左から)西出結・名古屋愛
6月10日(水)から下北沢小劇場 B1Fにて、画餅『ユートピア』が開幕する。ニッチで独創的な視点と、それに裏打ちされたリアリティとユーモアに富んだ笑い。テニスコートの神谷圭介が作・演出を手がけるソロプロジェクトとして始動した画餅は、2022年の旗揚げから4年、公演を重ねる毎にますますそのオリジナルの世界観に磨きがかかっている。
昨年は石山蓮華とともに短編公演『偏愛』を、今年はワークショップを通じて知り合った俳優陣と新たな表現の可能性を探る『RICE CAKE OF THE PICTURE』シリーズを上演し、番外公演でも注目を集めた。そんな画餅にとって、2年ぶりの待望の本公演となるのが『ユートピア』だ。本作は、過去作品で取り組んできた短編の群像劇スタイルとは一味違う、画餅史上初の長編ものでもある。そんな物語の中でキーを握るのが、名古屋愛演じるエミと西出結演じるユキの女子大生2人組。本作の見どころについて、名古屋と西出に話を聞いた。
映画『ゴーストワールド』を彷彿?
名古屋愛×西出結の名コンビ
―人々が行き交う、賑やかな駅前広場。ユキとエミの女子大生二人が、とある “収録”をしている。そこに駅員が現れ、2人の素性を取り調べようとするのだが…。台本を拝読し、冒頭から二人のやりとりにグッと引き込まれました。
名古屋 私は画餅には第一回公演『サムバディ』と番外公演の『偏愛』に出演をしているのですが、たしか、ずっと「エミ」っていう名前の役なんですよ。
西出 へえ〜!
名古屋 同じ人物なのかわからないのですが、もしかしたらそんな繋がりもあるかもしれないなって思いながらやっています。
西出 私は画餅に参加するのは今回が初めてなんです。
名古屋 でも、神谷さんが「西出さんに当てたユキちゃんのセリフとかは何の困難もなく書けた」って仰ってましたよ!
西出 だからかな、「すごくやりやすいな」って思ってやりやすいままやっていたら、どんどん低音な感じになっていって…。私も名古屋さんもどちらかと言うと、ぼそぼそしゃべる方だから、最近は「もう少しテンションを上げていこう!」という話になって、頑張って上昇しているところです(笑)。

名古屋 私の演じるエミは関西弁を話すキャラクターなんですけど、神谷さんに「ゆっくりでいいから」と言われて、スローペースな感じで関西弁を話すキャラになりました。
西出 実はこれにも裏設定があるんですよね。
名古屋 そうそう。エミちゃんは幼少期からおじいちゃんと吉本新喜劇を見て育ったんです。だから、関西人ではないんだけど、自分なりの関西弁を汲み取って喋っているっていう…。つまり、エセ関西人なんです。
西出 この間の稽古で、神谷さんに「今、私たちって何県にいるんですかね?」って聞いたら、「群馬!」って言われましたもんね(笑)。
名古屋 「じゃあ関西人じゃないんだ!」みたいな話をしたら、この裏設定を教えてくれて。台本でも一切説明していないから言ってよかったのかはわからないんですけど(笑)。
西出 ユキとエミちゃんは教習所で知り合って、一緒に雑誌を作っているんですけど、これも最近加えられた設定ですよね。
名古屋 そうですね。出会いが教習所ってところがなかなかないですよね。西出さんは免許って持っていますか? 私は持っていなくて。
西出 持っているんですけど、教習所出てから1度も乗ってないので本当のペーパーです。もう誰も乗せられないと思っています!

コントだけでなく、ドラマも
画餅史上初となる長編作品へ
―関西弁を話しているからと言って関西人とは限らない。そうした人物造形にも神谷さんならではのニッチな視点が忍ばされているように感じます。今回は画餅にとっては初の長編ものでもありますよね。神谷さんから「お二人のペアがすごくよかったので、もう少し二人のドラマを見せたいという気持ちもあり、こういう形になった」とお聞きしたのですが…。
名古屋 そういえば、西出さん、この間の稽古の途中に「まさかこんなことになるとは!」とつぶやいていましたよね(笑)。
西出 これまでの画餅のイメージから、短編のコントでいくつかの人物を演じるのだと思い込んでいたんですけど、蓋を開けたら、長編で決まった役だったので、びっくりしました! でも、外から見ているだけじゃわからないこと、中に入って初めてわかる魅力や個性もあるなと思いましたね。実は私、画餅の過去作品をほぼ全部客席で観ているんですよ。
名古屋 へえ〜!
西出 そういうカンパニーって、私にとってはすごく珍しくて…。
名古屋 私は西出さんとは今回が初めましてだったんですけど、西出さんはみんなが笑っている時に1人真剣な顔をしていたり、逆に、みんなが笑ってない時に1人でニヤニヤしていたり、なんか独特の笑いのペースや間合いがあって、すごく面白いんですよね。
西出 そう言われてみると、私生活でもあまり物事の渦中にいないタイプかもしれません! 何かが起きた時も少し遠くから「あ、なんか起きてるな」って見ていることが多いかも。それで、なんか気づいたら、世界と関わっちゃってる…みたいな(笑)。
―西出さんは、アンパサンドや東京にこにこちゃんなどの作品でも、何かしら予期せぬものや大きなものに巻き込まれて困惑している人の役がすごくお見事ですよね。
名古屋 稽古場とかでも端っこで起きていることや、誰も気に留めてないようなやりとりに1人で絡みに行ったりと、意外なところで攻めの姿勢を見せて下さることもあって…(笑)。本当に面白いです。
西出 わあ、そんな風に見えていたのですね(笑)。ちなみに、私から見た名古屋さんの印象は、想像以上にちゃんとみんなとコミュニケーションをとられる人だなって! 意外、っていうのもなんかあれだけど、すごいなって思っています…。
名古屋 それこそ、初めて画餅に参加した頃は全然喋らなかったんですよ。でも、みんながそわそわしていたりすると落ち着かなくて、「もういっそ全員と喋ろう!」みたいな感じになりました。今回は八木(光太郎)さんとかもいるから心強いのかも。過去に一緒にやったことのある人もいるし、西出さんも安心できる人だったし、怖い人もいないし…。
西出 確かに! 怖い人、一人もいない!

出自も個性もそれぞれ異なる
みんなで作る唯一無二の画餅ワールド!
―名古屋さんも画餅に限らず、東葛スポーツや遊星Dなど様々な作品において、座組みに欠かせない独特の存在感を発揮されています。お二人は多様な団体に出演されていますが、最後に、お二人がこれまでの歩みを経て思う、画餅ならではの創作や作品の魅力をお聞かせ下さい。
名古屋 私は元々高校演劇をやっていて、高校生の頃に無隣館に入って演劇を学び、そのまま青年団に所属しました。あと、福島拠点の柳美里さんが主宰する青春五月党にも入っているのですが、客演で出演する団体はあんまりジャンルとかも定まっていないんですよね。そんな中でも、コントのような作品に出たのは4年前の画餅が初めての経験で…。すごく新鮮でした。
西出 名古屋さんは高校演劇だったんですね! 私は大学生の頃に、就活前の思い出作りのような感じで「ちょっとおっきい声出したりしたいかも」ってワークショップに行ったのが最初でした。演劇ワークショップって検索して1番上に出たとこに行って…。その後、集団as if~という団体に所属していたのですが、解散してフリーになりました。
名古屋 どんな感じの演劇だったんですか?
西出 それこそ、画餅とは全然タイプが違う演劇で、結構エンタメ寄りで、殺陣のシーンとかもありました!
名古屋 そうだったんですね! 私もこれまで参加した団体のカラーには結構なバラつきがあります。画餅も、神谷さん自身も、彷徨い感があっていいなと思います。作品ごとに作風もかなり違ったりして、はっきりと、どこかに行ききらない感じが面白いなと…。そんな風に思っています。
西出 なるほど! あと、画餅はやっぱりすごくおしゃれですよね。
名古屋 今回もキャストのみなさんと最初に顔を合わせたのは、それこそビジュアル撮影でしたよね。素の状態を知らない人たちとめいっぱいおしゃれをした状態で出会ったのが面白かったですね。
西出 もちろん、おしゃれなだけではなく、世界観が独特で面白い。私は、声が大きい人も、声が小さい人も同じシーンにいるのが好きで、「ああ画餅だな」って思います。今回もいろんな人が出てきます!
名古屋 そうですね。関西人じゃないけど、関西弁を喋る人もいます。楽しみにしていて下さい。

インタビュー・文/丘田ミイ子
