DAZZLE結成30周年記念公演「花ト囮 – 露 -」HANA to OTORI – arawa -|長谷川達也&飯塚浩一郎 インタビュー

写真左より)長谷川達也、飯塚浩一郎

2026年に結成30周年を迎えるダンスカンパニー「DAZZLE」。振付・出演だけでなく、作・演出を手がける主宰 長谷川達也とクリエイティブディレクターを手がける飯塚浩一郎にインタビューを行った。

――様々な賞を受賞してきた代表作を12年ぶりに「再構築」というのは、なかなかハードルが高いのではと感じます。

長谷川 DAZZLEの活動の半分以上が『花ト囮』という作品と共にあったと言えるくらいの代表作です。30周年で何をするか考えた時に、改めてこの作品を見つめ直したいと思いました。前回の上演から12年間で積み重ねてきた表現や得たものを反映し、より面白く変化させたいと思っています。

――ちなみに、現時点での構想は。

長谷川 DAZZLEは物語をいかにダンスで表現するかを追求してきました。『花ト囮』は狐の嫁入りを題材に、日本文化特有の精神世界を土台にして、「人はわかり合えるのか」という普遍的なテーマを描いています。抽象的な言い方ですが、そのテーマをより“あらわ”にしたい。あとは舞台装置の稼働ですね。人の力で空間を変化させていくことを極限まで追求し、主役がダンサーか、あるいは舞台美術かわからなくなるくらいこだわってきたのをさらに洗練させたいです。

――YouTubeでも公演映像を見ることができますが、お二人が思う本作の魅力はなんでしょうか。

飯塚 日本の民話や神話をベースに、日本人の感覚や感性、残酷さや暗さなどが描かれています。日本人が本質的に持っている感覚が作品化されているのが面白いのかなと思います。例えば、東北の民話の一つである座敷童子が語り継がれてきた理由には暗い歴史もあり、現代人がSNSの世界でうっすら嘘をつき続けている感覚にも重なります。『花と囮』には「化ける」という文字が2つ入っているんですが、多分人間は何かに化けて生活していて、本性とは違う状態をずっと続けている。現代的な視点からも作品から何かを感じてもらえるんじゃないかと思います。

長谷川 物語を表現するのにダンスは適さないと思っているんです。ダンスで表現できることは限られているし、物語は言語で整理されるもの。でも、非言語であるダンスで言葉にできない感情の揺らぎを表現できる。その両面を融合させ、物語を伝えられるのがDAZZLEの良さなのかなと思っています。ダンスを用いた芸術・エンターテインメントを追求しているので、ダンスがわからなくても大丈夫です。ステージで人間が発するエネルギーによって心が動く瞬間を生み出せていると思っています。

――最近はホラー作品が流行しているので、美しいだけではなく怪しさ・怖さもある『花ト囮』が刺さる方は多いのではないかと思います。

飯塚 日本の民謡や伝承は都市伝説などの原型になっていると思いますし、『花ト囮』には妖怪や呪いといった要素も入っているので、そういう見方をしても面白いかもしれません。狐や蜘蛛などの怪異も人間が表現するのはDAZZLEの特徴の一つだと思います。

長谷川 「日本的な作品を作りたい」と思ってできたのが『花ト囮』。 “日本らしさ”を考えた時に、誰かが何かを成し遂げるだけじゃなく、残酷さや教訓が含まれている物語が多いと思いました。「人は分かり合えるのか」というテーマだからこそ、人間の美しさと残酷さが共存しているのがすごくダークに映るかもしれませんね。

――近年はイマーシブシアターを多く手掛けていますが、それによって得た気付き、カンパニーとしての進化などはいかがでしょう。

飯塚 普通の舞台は基本的に正面からお客さんに見られますが、イマーシブシアターは色々な角度から見られる。空間を立体的に捉え、空間の動かし方やダンスの見せ方を考える力が進化したと思います。演者としても、近くで見るイマーシブシアターと遠くで見る劇場公演では表現の仕方が違う。演技や踊り方の幅が圧倒的に広がりましたし、その中で取捨選択できるようになってキャスト全員の表現力が上がったと感じます。例えば、以前、作品のナレーションを担当してくださった浅野忠信さんが「映像での演技と舞台での演技は全く違う」とおっしゃっていました。映像はカメラが寄ってくれるから引きの演技ができるけど、舞台は遠くの人に届くように押し出す演技が必要。DAZZLEの出演者たちは両方できるのが強みの一つですね。

長谷川 カンパニーとして、表現の質感、伝える力は圧倒的に強くなったと思っています。DAZZLEは物語をダンスで伝えていますが、ダンスの上手さと何かを伝える技術は全くの別物。踊りの技術を高めても、感動の度合いには直結しません。空間やファッション、音楽などが混在して作品が完成するので、作り方やこだわりがより拡張され、物語を表現する精度が高くなったと思います。

――30周年ということで、DAZZLEだからできたこと、楽しかったことなど、振り返ってみていかがでしょう。今後の挑戦についても教えてください。

長谷川 基本的に僕らしかできないことばかりやってきたと思います。イマーシブシアターもそうですし、海外公演での経験もそう。ルーマニアのシビウ国際演劇祭で見た圧倒的なスタンディングオベーションの感動は生涯忘れないと思います。

飯塚 すでに一般的になっているのでDAZZLEが始めたと知られていないこともかなりあると思います。ストリートダンスで物語性のある公演を作ることや、アニメの楽曲で踊るのもそうですし、リアルの上演とオンラインの配信を同時に行う公演や、マルチエンディングの舞台作品など。イマーシブシアターは各国で行われていますが、海外の方から「イマーシブシアターでありながら話がしっかりわかるのがすごく新しいし面白い」と驚いていただくことが多いです。今後はテクノロジーを使って新たな表現を広げたいですね。

長谷川 イマーシブシアターにすごく可能性を感じて続けているんですが、参加者の行動がもっと大きく物語に影響するような作品を作ってみたいですね。あと、空間をより作品に特化させるチャレンジもしたい。誰も見たことがないものを作り上げられるよう、常に探していきたいです。

インタビュー・文/吉田沙奈

ヘアメイク:Mashino
スタイリスト:杉山朱美

<衣裳クレジット>
セットアップ:DRESSEDUNDRESSED
シャツ:SEVEN BY SEVEN