KERA CROSS 第一弾 『フローズン・ビーチ』稽古場会見レポート

2019.07.12

劇作家で演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)の名作戯曲を、才気溢れる演出家たちの手で上演するシアタークリエの新シリーズ「KERA CROSS」の第一弾で鈴木裕美が演出を手掛ける『フローズン・ビーチ』が、7月12日(金)から全国で巡演されます。
鈴木杏、ブルゾンちえみ、花乃まりあ、シルビア・グラブが出演する本作は、KERAの作・演出で1998年に初演された、劇団「ナイロン100℃」初期の女四人で紡ぐミステリー・コメディ。その稽古場で会見が開かれました!


――まずは意気込みをお聞かせください。

鈴木裕美(以下、裕美)「先日、最初の通し稽古をしたのですが、非常におもしろくなっていると思いますので、ぜひ皆さん劇場に足をお運びください」

鈴木杏(以下、杏)「KERAさんの本はやっぱり大変だなと実感すると同時に、楽しみながら苦しんでいる感じがあります。稽古すればするほど深まっていくのも実感できていて、すごく充実した稽古の日々です。稽古はあと一週間ちょっとなのですが、この一週間でさらに深めて、いい状態で劇場に向かえたらなと思っています」

ブルゾン「初舞台ということでわからないこともたくさんあるのですが、その都度相談に乗ってくれる先輩方がいる環境にいます。日々、できなかったことができるようになっていくということに楽しさを感じています。もう少し稽古期間があるので、もっともっとよくなるようにがんばりたいです」

花乃「今回、代役として少し遅れてお稽古に参加したわけですが、裕美さんをはじめ共演者の皆様に温かく迎えていただいて感謝しています。とても難しく、自分自身との戦いが続いていますが、私に今できるすべてを懸けて努めたいと思っています」

シルビア「和気あいあいとした体育会系のノリで稽古しています。どちらかというと私はずっと笑っている稽古場で、すごく楽しんでいます。ただ、家に帰ったときにびっくりするほど疲れているので(笑)、充実した稽古をやらせていただいているのだと思います。本当におもしろい作品になると思います」


――それぞれの役柄を演じての感想を教えてください。千津役の杏さんから。

「千津という役はなんというんですかね……小物(笑)。若いというところもあるのですが、自分の器以上の思いが溢れてどんどん空回りしていくという人で。「もうちょっと器が大きければいいのにね」と思ったりもしますが、そこがとてもいじらしい一面でもあったりして。楽しんでいます」――市子役のブルゾンさんはどうですか?

ブルゾン「市子は、最初に台本を読んだときは「この人ちょっとわけわからん」っていう感じだったんですよ(笑)。論理的ではない、本能で動いているタイプの人で。でも稽古をやっていく中で、「あれ?けっこう憎めないんじゃね?かわいい性格してるんじゃね?」っていうのがわかってきて、今は市子に愛着が湧いてきています。だから観ているお客さんにも「なかなかかわいい役だったな」と思ってもらえるように、この役を生かしきれるように、がんばらなきゃなと思っています」


――双子の愛・萌の二役を演じる花乃さんはどうでしょうか?

花乃「まず萌ですが、彼女は身体が弱いというのがあって、そういうことの上に成り立つ開き直りの強さというか。生きていくうえでの強さ、そしてかわいらしさを備えた人だなと思っています。愛は、全ての登場人物に対して、自分が優位に立とうと必死になっていて。だけど周りの人たちのキャラクターが強烈すぎて、どんどん巻き込まれて、全く自分の運びたいペースに運べない。そういうところがすごく惜しい人。その惜しい感じに「やれやれ、楽しいな」と思って観ていただけたらと思います」


――咲恵役のシルビアさんはいかがですか?

シルビア「咲恵さんは基本的に楽観主義。常に笑っていて、常に楽しんでいたい。だからちょっとでも空気が悪くなると、すっとぼけてどうにか明るい方向に持って行こうとしているキャラクターです。それはもしかしたら、目が見えないから、周りが見えないことで楽観的でいられるのかもしれなくて、そういうところが難しかったりします。でも、私はなかなかこういうおとぼけキャラを最初から最後まで演じる現場はないので、今、苦しみながら楽しんでいます(笑)」――KERAさんの本はどうですか?

「いくら稽古しても稽古できちゃう。やろうと思えばいくらでも詰め込める本だなっていう気がしています」

裕美「私たちは特にKERAさんのファンだったり初演キャストのファンだったりもするのですが、なんとなく最近やっとその呪縛からとけたというか。私たちでやる『フローズン・ビーチ』になってきているなという感じです。この作品は、登場人物たちが殺そうと思ったり殺されそうになったりするんですけど、同時に、救ったり救われたりっていうこともすごく起こる不思議な本で。バブルっていう時代がどうだったのかとか、そういう時代性も描かれているのですが、とにかくこの4人の女優が楽しい。魅力的だと思います。だからこの4人のファンは絶対観ておいた方がいいと思います」


――ブルゾンさんは初舞台ですが、皆さんから見ていかがですか?

「なんとも言えないおもしろさがあるんですよ。真剣にやればやるほどおもしろすぎてこっちが破壊されちゃう、みたいな(笑)。笑っちゃって稽古にならない瞬間がけっこうあって、これをどう克服していけばいいのかっていうのも課題の一つになっています」

裕美「特にふたり(杏・花乃)が笑ってるよね」

花乃「だって本当に……!」

一同「(笑)」

ブルゾン「でも、もともとKERAさんが書いてることがおもしろいので。それを真剣にやればおもしろくなる」

「ふとした瞬間の、笑かそうと思ってないときの表情がおもしろいんですよ」

シルビア「私は役柄的に直視しないからいいだけど、多分見たらアウトですよ(笑)」――どんな現場ですか?

「変に気を使うということがないから、すごく気持ちがらくです。自分も素直なまま稽古場にいられるのは、ありがたいことだなと思っています」

裕美「すごく有機的というか、すごく風通しがいい。誰がアイデアや意見を言ってもいい感じです。みんながお互いを尊敬していたり、愛していたりするやり方で、すごく楽しい作品になりつつあると思います」


――ということは、4人のチームワークはばっちりですか?

裕美「そうですね。4人が似てるんですよ、意外と。皆さん頭がいいのと、他人を受け入れる感じがあって。尊重するとか、人をおもしろがる感じなんですね。そして「おもしろくするためだったらなんでもやります!」っていう。そういうところがとっても似てます、出自がこんなに違うのにね」


――最後に鈴木杏さんから一言お願いします。

「本当にいろんなことが起こって、こんなに傷だらけになりながらも離れられないでいる女4人のお話です。楽しんでいただけるようにがんばりたいと思いますので、ぜひ劇場にお越しください。お待ちしております」

 

 

取材・文/中川實穂