“花・鳥・風・月”、そして“極”まで、シーズンごとに脚本、演出、出演者を変えながら上演を続けている劇団☆新感線『髑髏城の七人』。東京・豊洲の〔IHIステージアラウンド東京〕で、2018年2月下旬まで上演中なのがこの企画の第4弾にあたる“Season月”だ。“上弦の月”と“下弦の月”という2組のキャストが日替わりで登場する“ダブルチーム”制という劇団史上初の趣向で臨んでいる今回、その“下弦の月”で<兵庫>を演じているのが木村了。新感線には『蜉蝣峠』(2009年)以来の出演となる木村に、製作発表時の段階で意気込みを語ってもらった。
――木村さんは新感線は2回目、“いのうえ演出作”という意味では今回の『髑髏城の七人』が3作品目。今回このお話が来た時は、最初はどう思われましたか。
木村「『髑髏城』か!と思いましたね。しかも兵庫かあ!!って。」
――それは意外だった、ということですか?
木村「意外でした。兵庫なんて、自分にはちょっと大きすぎる役に思えたし。なにしろ兵庫といえば、まず(橋本)じゅんさんのイメージでしたから「わ、できない!」って最初は思いました。もちろん『髑髏城』は大好きな作品で、観る分にはものすごく好きなんですけど、いきなり大きい役が来ちゃったなあと。それで「他の役で出してくれませんか」と聞いてみたんですが、ダメでした(笑)。」
――え?兵庫じゃない役で、と?
木村「そうです(笑)。「何か他の役で、スーッと出られたりしませんかね?」って聞いたら、ダメだと言われて。」
――そこで、覚悟を決めてやろうと思われた。
木村「そうですね……。いや、まだ正直なところ、今日の時点ではまだ覚悟が決まっていないかもしれません(笑)。この間、稽古が始まる前に(高田)聖子さんと話している時、“上弦”と“下弦”では、荒武者隊の子たちの印象がだいぶ違うとおっしゃっていて。上弦チームはとてもいい子たち、下弦チームはダンサーっぽい子が多いとかで「そこに了が入るの?面白いなあ!」って聖子さんは言ってました(笑)。なんだかそれを聞いただけで、ちょっとドキドキしてきましたね。」
――どんなチーム感になるのか、楽しみですね。
木村「そうですね……。でも俺は今のところ、恐怖しかないんで。ホント、どうしよう(笑)。」
――まだ楽しみと思える気持ちになれない(笑)。
木村「もちろん、楽しくしていきたいなという気持ち、希望はすごくありますけどね。」
――ダブルチーム制というのも、新感線史上初めてのことなんですが、それを聞いた時にはどう思われましたか?
木村「ああ、また新しいことに挑むんだなあと思いました。よく、キャスト何人かでダブルキャスト、トリプルキャスト、なんてことはよくありますけど。それをダブルチームで1日交代でやるだなんて、ある意味、新感線っぽい発想だとも思いました。つまり、考えが突飛なんですよ(笑)。すごいなあって思います。しかもステージ数もものすごいことになっていますしね。もちろん僕自身、ないステージ数です。」
――そして同じ兵庫役を“上弦の月”チームでは須賀さんがやるわけですが。
木村「健太は事務所の後輩ですし、『鉈切り丸』(2013年)でも一緒でしたから。今回は絶対に辛いしおそらく大変なことになるだろうとお互いにもうわかっているんで、共にやりとげたいという気持ちが強いですね。みんなと一丸となってやるというか。ま、稽古場もずっと一緒ですしね。それに結局、同じ役でも役者が違えば絶対同じにはならないし、なれないし。まあ、お互いに一生懸命いのうえさんに食らいついていくしかないですね。とにかく健太は基本ポジティブで何を言われても凹まないから、そういうところからも元気をもらえそうな気がします。」
――木村さんにとって、いのうえ演出の好きなところ、面白いところは。
木村「いい意味で、非常に映画っぽいというか。どう見せたいかが、いのうえさんの頭の中はすごく明瞭になっていて、そこにちょこっと手を加えるだけでだいぶ変わってくるんですよね。そういうところもすごく好きです。でも『鉈切り丸』の前、『蜉蝣峠』(2009年)で新感線に初参加した時には、僕は勝地涼とともにさんざんしごかれるという地獄を一度味わっていて(笑)。そのどん底からのスタートだったこともあって、そのあとの『鉈切り丸』ではだいぶ楽しくできるようになっていましたね。」
――今回の劇場〔IHIステージアラウンド東京〕の印象はいかがだったでしょうか。
木村「いやあ、よくこんなすごい劇場を作ったなと思いました。まわってましたねえ……(笑)。役者はみんな、すごい走ってたし。昨日、劇場の図面を見せていただいたんですが、それだけでは全然わからなかったです。あれは実際に、行かなきゃわからない感覚ですね。」
――とにかく自分で体感してみないと伝わらない魅力かもしれませんね。そして、おそらくいっぱい走らされそうな気がします。
木村「兵庫ですもんね。相当、走るんでしょうねえ。しかもテンションがすごく高い男だから、兵庫って。……俺、そういうキャラクター、避けてきたのになあ!」
――苦手なんですか。自分の中にはない部分?
木村「元気いっぱい!みたいなところはホントは……ないヤツなんで(笑)。そこを絞り出さなきゃいけない、ということも大変そうです。だいたい、ヴィジュアル撮影の時にいのうえさんが「兵庫を筆頭にケガをしていくから」なんておっしゃるから、どうしてもマイナス思考からのスタートになってしまって(笑)。だから本気で気をつけなきゃなと思いますね。兵庫はテンションもすごいけど、それがカラ元気になっちゃうとケガしやすくなっちゃうかもしれないので。」
――気をつけつつ、でもフルスロットルでテンションを上げていく。
木村「はい、フルスロットルでやります(笑)。そこから楽しい部分を見つけたほうが勝ちだという気もするので、兵庫の楽しい部分を自分なりに探していきたいと思っています。」
――では、最後にお客様へメッセージをいただけますか。
木村「これまでの“花・鳥・風”とも違いますし、“上弦”と“下弦”でもまったく同じものには絶対にならないと思います。その中で、ご自分なりに面白い部分を見つけていただきたくて。たとえば「あ、なるほど、こっちの兵庫はこういう風にやってるんだな」、とか。そのためにもぜひ“上弦”と“下弦”、ふたつとも楽しんで観ていただけるとうれしいです!」
インタビュー・文/田中里津子
Photo /村上宗一郎
【プロフィール】
木村了
■キムラリョウ 1988年9月23日生まれ。東京都出身。2004年にドラマ『ウォーターボーイズ2』で俳優デビューし、翌年『ムーンライト・ジェリーフィッシュ』で映画初出演を果たす。以降、映画、ドラマ、舞台などで幅広く活躍。近年の主な出演作にドラマ『三匹のおっさん3~正義の味方、みたび!!~』(2017年)、映画『帝一の國』(2017年)、舞台『INNOVATION OPERAストゥーパ~新卒塔婆小町~』『MOJO』『犬夜叉』(2017年)、『帝一の國』シリーズ(2016年)、『鉈切り丸』(2013年)など。劇団☆新感線本公演には『蜉蝣峠』(2009年)以来2作目の参加となる。