ウーマンリブvol.14「もうがまんできない」 宮藤官九郎 インタビュー

宮藤官九郎の新作は“ストレス”がテーマのワンシチュエーション痛快劇

 

宮藤官九郎が今やりたいことを自由に表現する場でもある“ウーマンリブ”シリーズ、約5年ぶりとなる最新作『もうがまんできない』は約2時間ノンストップのワンシチュエーションコメディだ。

宮藤「前回の『七年ぶりの恋人』(’15)が終わった時点で、次はいつ?’20年かなあ?ということにはなっていたんです。既に大河ドラマの脚本を書くことは決まっていたので、それをやり終えた直後に何がしたくなるかを想像したら、きっとウーマンリブだろうと思ったんです」


と、宮藤は嬉々としつつ現在脚本に取り組み中。テーマは“現代人が抱えるストレス”だそう。

宮藤「そもそも、ウーマンリブを始めた当初はワンシチュエーションで日常的な芝居をしていたので、『いだてん』の後にその原点に戻るのもいいなと思ったんです。『熊沢パンキース03』(’03年)、劇団本公演の『春子ブックセンター』(’04年)のように、リアルに時間が進む中でお芝居を作るというのは枷にもなるんだけど、そこがまた面白いんですよ」


それまでお互いを知らない人々がたまたま、同じ空間に顔を揃える。特に事件は起こらないように見える中で、実はドラマが起こるみたいな芝居を目指したい、とも。

宮藤「そこは雑居ビルの屋上で、要潤さんと柄本佑さん演じる売れないお笑いコンビが、ライブの本番前にネタ合わせをしている。すると隣のマンションのベランダに阿部(サダヲ)くん扮するサラリーマンが出て来て、サプライズパーティー用のケーキを持って部屋に入るタイミングを図っている。でも、ある事情で中に入れなくなるんです。さらに松尾(スズキ)さん演じるデリヘルの店長が現れ、お客さんのもとに行きたくないとごねるデリヘル嬢(※先日オーディションを決行。取材時はまだ審査中)の説得を始める。彼らのすぐそばで、自分たちが売れないのはおまえのせいだ、と佑くんが要さんを責め始める。そこに荒川(良々)くん扮する、天才的な芸人が絡むという、まあ群像劇ですね」

現代を生きる人々の日常をワンフレームだけ切り取ってみたら、意外にこんなことが起きていたというような展開にしたい、とも。執筆中のこの新作の導入部分のヒントを、ちょっぴり教えてくれた。

宮藤「『いだてん』を含め、ここしばらくはドラマチックなことがたくさん起きる作品ばかり作ってきたので、今回はそうではない何気ない時間も描きたいんですよね。時間帯は現実の時間そのまま、夜の7時から9時の話にしようと思っています。あ、でも昼公演はどうしよう?昼は昼で、2時から4時ということにすればいいか(笑)」


今回も宮藤本人は作・演出を担当するだけでなく、役者として出演もするそう。

宮藤「どんな役回りになるかは未定です。ドラマがどう転がるか次第なので、自分の役柄も込みで考えながら書いています。あまり先のことを決めないまま、書き始めちゃったんですよね。でも楽しみですよ、芝居するのも久しぶりなので。それと今回は特に、若い人たちにぜひ観に来てもらいたくて。最近のカッコいい若い役者が出ている芝居ばかりではなく、われわれのようなカッコ悪いおじさんたちが出ている芝居も観たほうがいいと思うんです。自分はこうならないようにしよう、こうなっちゃいけないと、きっと思えるはずですから(笑)」


大爆笑の2時間になることは必至。チケット争奪も激戦となるはず、心してご準備を!

 

インタビュー・文/田中里津子
Photo/山本倫子

 

※構成/月刊ローチケ編集部 1月15日号より転載
※写真は本誌とは異なります

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【プロフィール】
宮藤官九郎
■クドウ カンクロウ 脚本家、監督、俳優。パンクコントバンド「グループ魂」ではギター・暴動として活動、今年25周年を迎える。