コントは短距離走。
ワンアイデアで何ができるか!
宮藤官九郎がやりたいことを自由に表現する公演、ウーマンリブ。その最新作となるウーマンリブvol.16『主婦 米田時江の免疫力がアップするコント6本』が東京と大阪で上演される。
「いつの間にかドラマや映画の脚本がメインになっていますけど、もともと自分はコント作家になりたくてこの仕事を始めてますから。コント番組がどんどん減ってるじゃないですか。だから書く場がない。それが寂しいんですよね。結局、自分でやるしかない」
東京は座席数200に満たないザ・スズナリでの上演。ウーマンリブでは1997年以来、実に27年ぶりのスズナリだ。
「松尾(スズキ)さんの『命、ギガ長スW』(2021)でスズナリに立ったとき、細かい表情とか呼吸がその日の結果に繋がるんだな、と思ったんです。お客さんにダイレクトに伝わる感覚が久しぶりで、僕もここでやりたいなと」
それにしても気になるのは『主婦 米田時江の免疫力がアップするコント6本』というタイトル。
「免疫力が上がるって、どうやらいいらしいじゃないですか。だから、面白い/つまらない、新しい/
古いではない価値観で観てもらえるかなと思って(笑)。最近は加齢もあるのか、尖ったものより柔ら
かいものに惹かれるし、自分から出るものもそうなってきている感覚があるんです。だから主婦目線
も大事にしたいと思ってこのタイトルにしました」
「6本」とタイトルで言い切ったのにも理由がある。
「掘り下げるのが苦手なんですよ。放って置くと掘り下げないものをどんどん量産しちゃう。『6本』とタイトルで謳ってしまえば、もう増やせないですから(笑)。1本1本ちゃんと掘り下げた15分のコントを6本やるんだ、という意思表示です。公演期間が長いので、自分たちが飽きないよう、何本かはちゃんとお芝居として演出できるものに、もう何本かのコントは即興性があるものにしようと思っています」
片桐はいり、勝地涼ら、宮藤も含めキャスト6人で6本のコントを作り上げる。
「物悲しさが笑いに繋がるようなコントをやりたくて。それが生活感ということでもある気がするんですけど、はいりさんが演じる姿がすごくイメージしやすかったんですよね。勝地くんは、一番最初に仲良くなったイケメンなんですよ。初めて会ったのは彼が10代の頃ですけど、時が経った今の勝地くんを見せてくれたらと思います」
宮藤にとって、コントは原点であり、「物語を考えることに疲れたときに向かう場所」でもあるという。
「競技に例えるなら短距離走ですかね。パッと出たワンアイデアで何ができるか、それだけ。その1個
の素材を大事にして、ヘンに手の込んだことをしてこねくりまわさない。それが、自分の脳の活性化
にも繋がるような気がしています(笑)」
インタビュー&文/釣木文恵
Photo/村上宗一郎
スタイリスト/チヨ
※構成/月刊ローチケ編集部 9月15日号より転載
※写真は誌面と異なります
掲載誌面:月刊ローチケは毎月15日発行(無料)
ローソン・ミニストップ・HMVにて配布
【プロフィール】
宮藤官九郎
■クドウカン クロウ
脚本家、監督、俳優など幅広く活躍。最近の脚本担当作に「不適切にもほどがある!」「新宿野戦病院」などがある。