KAAT10周年のキックオフとして新たに蘇る!白井晃演出による音楽劇『銀河鉄道の夜2020』上演決定!

2020.07.16

宮沢賢治の永遠の未完成の傑作 「銀河鉄道の夜」
芸術監督・白井晃が再び向き合いたいと願い続けた作品が四半世紀の時を経て、
KAAT 10周年のキックオフとして新たに蘇る!

 

2021年1月、KAAT 神奈川芸術劇場は開館10周年を迎えます。2011年の開館以来、多くのプロデュース作品や招聘作品の上演、フェスティバルの開催など、個性的な企画で「創造型劇場」としての牽引役を担ってきたKAAT 神奈川芸術劇場は、2016年4月に演出家・白井晃を芸術監督に迎えました。白井は2014年のアーティスティック・スーパーバイザー就任以来、近現代戯曲を現代の視点で蘇らせるシリーズに取り組み、ヘンリック・イプセン作『ペール・ギュント』(15年)、ヨハン・アウグスト・ストリンドベリ作『夢の劇-ドリーム・プレイ-』(16年)、ベルトルト・ブレヒト作『マハゴニー市の興亡』(16年)、『アルトゥロ・ウイの興隆』(20年)、フランク・ヴェデキント作『春のめざめ』(17年、19年)、ジャン・コクトー作『恐るべき子供たち』(19年)、ジャン=ポール・サルトル作『出口なし』(19年)を上演しました。また、エンダ・ウォルシュ『バリーターク』(18年)やレイ・ブラッドベリ『華氏451度』(18年)など海外の鬼才による戯曲・小説の舞台化にも取り組んできました。

芸術監督ラストイヤーとなる2020年の9月、「音楽劇『銀河鉄道の夜2020』」をKAAT10周年記念プログラムのキックオフとして上演いたします。
この作品は、宮沢賢治の代表作「銀河鉄道の夜」を題材に、1995年青山劇場開館10周年記念事業として上演された「イーハトーボの音楽劇『銀河鉄道の夜』」を新たなプロダクションとして再生するものです。初演当時、青山劇場で上演されると大きな話題を呼び、宮沢賢治生誕百年の翌年には、早々に再演されました。作家・演出家である能祖將夫が上演台本、音楽監督をヴァイオリニストであり作曲家・編曲家の中西俊博が務め、シンガーソングライターさねよしいさ子が作詞・作曲に加え、精霊・アメユキ役で出演。また、舞台美術を演劇実験室[天井桟敷]の美術監督として、後期寺山修司全作品の舞台装置・機械・衣装・メイク等を担当した小竹信節が担当するなど、白井を含め、当時30代~40代の若手スタッフが集結、宮沢賢治の世界をオリジナリティあふれる音楽劇に仕上げました。

2020年9月、白井芸術監督が演出家として再び向き合いたいと願い続けてきたこの作品に取り組みます。初演当時のクリエイティブスタッフが再集結、さらに新たなクリエイティブスタッフを加え、2020年にふさわしい「音楽劇『銀河鉄道の夜2020』」が誕生いたします。

出演者

孤独な少年ジョバンニ役は、2012年のデビュー以来、多くの東宝ミュージカルなどで活躍する木村達成。本作がストレートプレイ初挑戦となります。ジョバンニと一緒に銀河鉄道の旅をするジョバンニの幼馴染のカムパネルラには、昨年は映画3本、今年はドラマ4本に出演し進境著しい劇団EXILEの佐藤寛太、ジョバンニの学友ザネリ・青年には谷賢一、森新太郎といった演出作品をはじめ数々の舞台にも出演する宮崎秋人、男(ケンジ)には、多くの映画やTVドラマで活躍、舞台では白井晃演出の「溺れた世界」「No.9」にも出演し、白井からの信頼も厚い岡田義徳。
アメユキは、青山劇場での初演・再演で作詞・作曲に加え、精霊・アメユキ役で出演したシンガーソングライターのさねよしいさ子が演じます。

 

《あらすじ》
「お父さんからラッコの上着がくるよ」、少年ジョバンニは今日もクラスメートのザネリにからかわれていた。遠い外国の海に漁に出たまま戻ってこない父に、ラッコの密猟をして逮捕されたという悪い噂が立っていたのだ。今日は星祭りの夜、耐えられなくなったジョバンニは町外れの丘に登り、一人星空を見つめる。すると汽車の音が聞こえ、気がつけば客車の中、目の前には親友のカムパネルラもいて。銀河のほとりを走るその汽車は、実は死者の魂を天上へと運ぶ汽車であった。途中で乗り降りする奇妙な人々。二人は「ほんとうの幸い」を探して、どこまでもどこまでも一緒に進んで行こうと決意するのだが・・・。
 

演出 白井晃 コメント

1995年8月に、今は閉鎖されてしまった東京・青山劇場の開館10周年の記念事業として、宮沢賢治の名作『銀河鉄道の夜』は音楽劇として創作されました。音楽と空間をダイナミックに使った作品は、たくさんの人々の記憶に残り、私にとっても大切な作品として身体の中に生き続けてきました。
そして、自身が芸術監督を務めるKAAT 神奈川芸術劇場で、25年ぶりに再生したいという願いから、今回のプロダクションはスタートしました。奇しくも、KAATは開館から10年目を迎えます。ところが、今年に入って世界を襲ったウィルス感染禍により、作品の上演も危ぶまれる事態となりました。しかし、劇場の火を再び灯したいという切なる思いから、演出を再考して新しい形で2020年版を上演することにいたしました。
宮沢賢治が灯した幻燈が、私たちの演劇の行き先を示す希望の光となることを願って創作は始まります。どうか、その灯を見届けていただけたらと思います。