花總まり インタビュー|「おかしな二人」

演劇界きってのコメディエンヌ大地真央と、数々の傑作ミュージカルでヒロインを務めてきた花總まりが初共演を果たす。1965年初演の「おかしな二人」は、ブロードウェイの喜劇作家ニール・サイモンの代表的作品で、映画化、ドラマ化と大ヒットを飛ばした名作コメディ。1985年には女性版が上演され、初演時はブロードウェイで8カ月を超えるロングランを記録している。花總にとっては、コメディ初挑戦となる本作。新たな挑戦を前に、その心境を語ってもらった。


――本作がコメディ初挑戦とのことですが、今のお気持ちはいかがでしょうか

まずは、やっていてすごく楽しいです! それと同時に、難しさも同じくらい感じています。今までミュージカルが多かったので、この膨大な量のセリフにも立ち向かっていかないといけませんし、セリフが持つ面白さを的確に伝えるということが最低条件だと思っているので…これほどセリフをしゃべることにも慣れていないので、シンプルなことですけれど、お稽古していてその難しさを感じています。


――稽古もだんだん進んでいるところかと思いますが、コメディの稽古は今までの稽古とは違うな、と感じたところなどはありますか?

やっと、本当に昨日くらいから、コメディが自分に馴染んできた感覚はあるんです。今までは本当にとにかく必死で。セリフを覚えて、セリフをしゃべって、っていうのを必死に落とし込むだけでしたから。でも、昨日くらいから少しずつ馴染んでいるかな?と思えて来て、心地よいテンポ感ってこういうことなのかな、とかが、わかりつつあるような気がしています。相手とのキャッチボールというか。今までの作品にもキャッチボールはあるんですけど、そのタイプが今までとは違う感じです。うまく行きだすと、これが楽しいのかな?って思えて、自分も弾んでくるんですね。自分が心地よく返せると、それがお客様にとっても心地よかったりするんじゃないかな、となんとなく思い始めています。やっと、そんな余裕が出て来ました。ここにお客様の空気感が入ってくると、相手と自分だけじゃなくて、お客様ともキャッチボールになってくるんじゃないかな?


――大地真央さんは宝塚歌劇の先輩でもあり、コメディでの先輩でもあります。共演されてみてのご印象は?

自分が今、壁というか…単純に慣れていなかったり、滑舌や間の取り方といった技術的なことだったりで、毎日難しさを痛感しているので、大地さんの姿はすごく勉強になります。間合いやテンポ感がすごく的確で、いいところに嵌めていくんですね。自然にお芝居されているんだけれど、何を言っているのかがすごく明瞭に伝わってくるんです。さすがだな、と思っています。

――今回演じられるフローレンスは、病的なまでの几帳面さで夫に別れを告げられ、友人のオリーブと共同生活をするようになります。もし、花總さんがどなたかと一緒に暮らすとなったとき、これだけは譲れない!というものはなんですか?

「早く寝ること」です(笑)。私、寝るのがすごく早いんですよ。何か用事があったりして夜9時半を過ぎると、ソワソワしてしまいます。寝ることだけは譲れないので、誰かと一緒でも容赦なく明かりを消して寝てしまいますね(笑)。もちろん、明かりをけすのは寝室の自分のところだけでいいんですけど、私は寝ます。特に寝具とかにこだわりがあったりはしなくて、本当に時間だけ。8時間はしっかりと寝たいですね。


――本作の中には女性同士の友情も描かれていますが、女性同士だからこそのやりとりや、女性ならではの心の叫びのようなものも描かれています。女性同士の仲で良い関係を維持するために、花總さんが普段意識されていることなどがありましたら、教えてください。

まぁ、女性同士ですから(作中のようなことも)ありますよね(笑)。女性が集まったら、お稽古の場でもガールズトークが始まったり。劇中でも、既婚者も未婚者も集まって、お酒を飲みつつ何かつまみながらゲームをやって、ワイワイとやっていますけれど、やっぱり集まるとそういう感じにはなりますよ。私の場合は…興味があることって、やっぱりみんな大体は一緒。全然違ったりもするけど、そういう話をするのは楽しいですから、今興味があることや悩みなんかを話しますし、人の話も聞きます。だから、(意識していることと言えば)聞き上手になることかな? …でも私はつい、しゃべっちゃうかも(笑)。だからこそ、聞き上手にならないと、ですね。


――新型コロナウイルスの影響で、演劇をはじめとしたエンターテインメントにも大きな影響がありました。そういう中で、コメディを届けるということについては、どのようなお気持ちでいらっしゃいますか?

やっぱり舞台は、生でやるのが一番だと私は思っています。お客様がいらっしゃるからこそ、伝わるのが生の舞台の良さなんですね。今回は特にコメディで楽しい作品なので、自分たちがある程度のところまで作って完成させていって…と言っても、完成させることはできないんですけど、みなさんと一緒に“その日の「おかしな二人」”を作っていきたいな、と思っています。ぜひ、お客様も生の舞台の良さ、参加していただくことの楽しさを感じていただきたいです。とても窮屈な時期があったかと思いますが、楽しんで、作品に参加するようなお気持ちで来ていただけたらいいですね。


――今回の公演にはスペシャルカーテンコールがあるので、そちらも楽しみですね。

振付などもこれからなんですけど、私がすごくいいなと思ったのが、楽しく終われること。今回、カンパニーのメンバーも少ないですし、明るく前に向かっていけるような感じで全体に終わっていけますし、みなさんも一緒にノって下されるような雰囲気になっているかと思います。ぜひ、ご一緒に楽しんでください!

 

インタビュー・文/宮崎新之