名優が演じ継いできた老セールスマンを 風間杜夫 、その妻を片平なぎさが演じ、家族の業、社会と個人を描き、喝采を浴びた「セールスマンの死」が待望の再演!
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース「セールスマンの死」の公演日程が、2021年1月8日(金)から1月12日(火)までに決定した。
本作は、主人公ウィリー・ローマンの死に至る最期の2日間を描き、1949年、ニューヨーク劇評家賞、ピューリッツァ賞を受賞し、テネシー・ウィリアムズとともにアメリカ現代演劇の旗手と呼ばれるアーサー・ミラーの地位を確立した彼の代表作。2018年11月に長塚圭史演出で上演し、“まさに今に響く作品”と高く評価された本作が、待望の再演を果たす。
これまで多くの名優が演じ継いできた主人公の老セールスマン ウィリー・ローマンを再び演じるのは、40年以上にわたり舞台・映像の第一線で華のある実力派俳優として走り続ける風間杜夫。2018年の初演では風間ならではの猛烈で新たなウィリー像を造形、その演技は「子供のような大人、父になろうとしてなれない悲しみを体現」(18年11月16日日本経済新聞評:内田洋一より)と評され、多くの観客の感動を呼んだ。その妻リンダ・ローマンには、映像や舞台で活躍する片平なぎさ。初演では夫ウィリーを献身的に支えつつも、崩れていく家族に心を痛める複雑な役どころを繊細に演じた。主人公の長男ビフに舞台や映像で独特の存在感を示し、長塚圭史らと結成した「新ロイヤル大衆舎」による『緊急事態軽演劇八夜』も話題を呼んだ山内圭哉。そして次男ハッピーを小劇場からミュージカルまで話題の舞台作品に欠かせない個性派俳優、菅原永二、ウィリーの友人チャーリーに舞台・映像で渋い演技が光る大谷亮介、ウィリーの兄ベンに映像での活躍のほか、『子午線の祀り』など舞台でも存在感が光る実力派俳優、村田雄浩ほか、加藤啓、智順(ちすん)ら初演時の演技が高く評価されたオリジナルキャストが再び集結した。
さらに新キャストに、所属している演劇ユニットpnish*での活動だけでなく、舞台、映像、ナレーションなど多方面で活躍する土屋佑壱をはじめ、山本圭祐、佐野瑞稀、浜崎香帆(東京パフォーマンスドール)の出演が決定。ますます深化した『セールスマンの死』に期待が高まる。この度、演出の長塚圭史、風間杜夫、片平なぎさのコメントが到着した。
長塚圭史
理想の座組で時間をかけて作り上げた「セールスマンの死」を再演できることを心より嬉しく思います。新たな出演者と共に、精度を高めてお届けしたいと思います。ウィリー・ローマンは時代が生んだ怪物です。70年以上経っても全く色褪せないのは誰しもがウィリーの影を抱いているからです。恐ろしいスピードで拡大していく経済と技術に振り落とされた名もなき男の誇り高き人生と、彼と向き合った家族の葛藤。また大きく社会が変質する中でアメリカ現代演劇の金字塔がその普遍性をどのように響かせるのか。ご期待ください。
風間杜夫
役者人生の中で、幾度かは「この役をやるために今まで時を重ねてきたのではないか」と思う作品に出合えるとすれば、間違いなくその体験をした。その作品が、再演の運びになった。もう一度演じるのではない。この普遍性に満ちた作品世界にもう一度生きるのだ。経済の渦に巻き込まれて、虚栄と現実の狭間に自分を見失いながらも、叫びを孤独の中に塗りこめたウィリーと家族の姿は、遥かな時間と空間を越えて魂を揺さぶられる。失意の迷路をさまよった果てに見たものとは、何か。きっと、大切な何かを届けられるに違いない。現在、世は混沌として未知のウイルスに怯えるばかりで、文化も経済も、発展しているはずのものが手に掴めない。今この時に上演する意味が、また僕を震わせている。
片平なぎさ
初演から2年。再びウィリー・ローマンの妻リンダを演じられる喜びを感じています。またあの愛する家族に会える。そしてまた崩壊してゆくあの家族に心を痛めるのです。
今「ウィズコロナ」が謳われ、働き方や生活が大きく変わってゆく中で、観劇される方々にはどのようなメッセージとして伝わるのでしょう!?
リンダとして伝えたい気持ちは、やはり“愛”です。
舞台写真:
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース「セールスマンの死」(2018年上演)
撮影:細野晋司