沢口靖子、小柴陸、生瀬勝久 |リーディングアクト「一富士茄子牛焦げルギー」稽古場座談会

画家、絵本作家のたなかしんが描く家族の物語を「絵」と「音楽」と「朗読」で上演するリーディングアクト「一富士茄子牛焦げルギー」。第53回日本児童文学者協会新人賞を受賞した本作は、関西風味な笑いの世界にハマり、笑っているうちにうっかり涙を流していた…そんな物語。1/30(土)の開幕を目前に控えた稽古場で行われた、沢口靖子、小柴陸(関西ジャニーズJr.)、生瀬勝久の3人による座談会の模様をお届けします。


――お稽古が始まって、3名様で実際にお会いになった、お互いの印象をお聞かせ頂けますか?

沢口「生瀬さんとは20年前、舞台で夫妻の役をやらせて頂いたんですが、その時は標準語でした。今回は関西弁ですが、生瀬さんは大阪ご出身でらっしゃるんですか?」

生瀬「僕は兵庫ですね。どちらかと言うと神戸に近い。」

沢口「そうなんですね。関西弁がとても気持ち良くて、今回、何役かされているんですが、セリフをお話しされている時に、いくつか思わず笑ってしまう箇所かあって。関西の、おとん、おかん役を今回ご一緒させて頂いて大変幸せです。小柴さんは18歳なんですよね。」

小柴「そうです。」

沢口「私、18歳でデビューしたんです。(笑) いくつでデビューしたんですか?」

小柴「デビューというか、ジャニーズ事務所に入ったのは小学校4年生の時でした。」

沢口・生瀬「うわー、すごい。」

沢口「舞台は初めてですか?」

小柴「ジャニーズ事務所の皆さんとの舞台以外で、1人で外部の舞台に出演するのは初めてなんです。」

沢口「そうなんですね。やっぱりピチピチして初々しい感じがして、これからの可能性を秘めてらっしゃる方だなぁと感じました。親子役をさせていただけるのがとても楽しみです。さっきちょっと、関西弁を教えてもらいました。(笑)」

小柴「お二方とも、ほんまに凄いです。沢口さんは声も話し方も綺麗で勉強になります。第一印象としてはすごく顔がちっちゃい方だなと思いました。(笑) 生瀬さんとは、“僕”と“おとん”としてずっと対話しているんですけれども、一回一回全部やり方を変えて来られて、それが凄いなぁと思いました。」

生瀬「稽古なので、自分でも試したいなと思ってやっているんですけれども、多分終わるまで変わり続けていくんじゃないかと。僕の場合はいつも着地点がなくて、結局千穐楽まで地に足がつかないっていうのがほとんどなんで、それはちょっと気をつけたほうがいいと思います。(笑) 毎日多分変わってくるから。なんかね、落ち着かないんですよね。これはもう私の良いところでもあり、とっても悪いところでもある(笑)。」

小柴「いえ、ほんとに凄いです。」


――小柴さんは最初の本読みの時、あるシーンからじっと生瀬さんを見つめていらっしゃいました。その姿が印象的でした。

生瀬「きっと安心して芝居ができないよ、俺は。(笑)」

沢口「色んな変化球が来るってことですね。」

生瀬「絶対ストレート投げないよ。」

一同 (笑)


――“僕”として見つめていたのか、それとも小柴さんご自身、生瀬さんから目を離せない感じだったのでしょうか?

小柴「どっちもです。」

生瀬「沢口さんとは20年ぶりの舞台共演ですが、沢口さんは本当に絶対的な安定感と世界観を持っていらっしゃるから、やっぱり安心するんですよね。絶対にぶれないというところが。ピュアで真面目と言う印象は、20年たっても全く変わってなかった。お仕事に対して真摯に向き合う鏡のような方ですね。でなきゃ長年ドラマをああいう形で継続出来ないし、皆さんが沢口さんにやって欲しいと言うのもわかるし。ほんとに全く僕とは違う方です。(笑) 小柴くんは今の関西の方なんだなと思います。関西弁も僕らが若い時に使っていた関西弁とはどんどん変わっていっていて、使っている言葉も違っていきていると思います。小柴くんは、今はほんとに伸びしろしかないから、こういう機会をどういう風に彼が捉えるのか楽しみです。本当に凄い経験になると思うし、だから僕らは背中を見せなきゃいけないし。普通の劇より期間は全然短いけれども、大千穐楽まで、どういう事を彼が感じるのか。何か計算ではない、思わず出る色んな事を、良い経験にしてもらいたいな、と先輩面してみてます。(笑)」

小柴「身に染みました。」

沢口・生瀬 (笑)


――お稽古を実際にやってみていかがでしょうか?

沢口「私、朗読劇初めてなんですね。色々な朗読劇があると思うんですけれども、今回は、マイクの前でじっとしてじっと本を読むだけじゃなくて、動きがあったりお芝居が入ったりするのが、凄く心の変化を表現できて、やっていても、とても楽しいなと思っています。」

小柴「僕も稽古がめっちゃ楽しかったです。シンプルに心から笑えたりもしました。本を読む所と、目を離して演じる所と両方あって、どのタイミングがどこで、どっちだったか、というのを頭の中で考えながらやっていたら、まだ、ちょっとごちゃごちゃしちゃいました。」

生瀬「この作品はリーディングと普通の芝居の中間、ややリーディング寄り、そんな作品ですが、本を読みながらお客様の想像力に委ねるリーディングより、ちょっと僕らが動いたり、目線が合ったり表情が見えた時に、お客さんがどのように感じていくのか、そのさじ加減が演出的に無茶苦茶難しく、演出家が責任を持たなきゃいけない、非常に実験的、挑戦的な芝居だなという印象です。僕自身演出もやるのでそう感じました。」


――河原さんの演出についてはいかがでしょうか

生瀬「僕は何度も彼とやっていますから、非常に計算はされていると思いますけれど、今回はほんとに大変だと思います。」

沢口「今回、私は初めてご一緒させて頂きまして。怒鳴ったりすることもなく、すごく静かにお稽古が進んで…」

生瀬「昔は凄く怖かったみたいですよ。(笑) 僕はその彼を知らないんですけれども、今は穏やかに演出する彼ですが、その昔自分の劇団を持ってた時は、めちゃくちゃ怖かったと聞いています。」

沢口「凄く穏やかなのに。(笑)」

小柴「(事務所の)先輩が、凄く怖いと、泣いて帰って来たことがありました。」


――先輩からのお話も聞いて、その河原さんから演出を受けるということで緊張されましたか?

小柴「はい。めっちゃ緊張して来ました。(笑) 室龍太くん(関西ジャニーズJr.)に電話した時に、「演出家は誰?」って聞かれて、「河原雅彦さんっていう方です」と言ったら、「河原さん?やばいやん、大丈夫?」って言われました。(笑)そして「本当にめっちゃ良い経験やで」って言われました。」

生瀬「じゃ、ちょっと厳し目にやってもらったら良いんじゃないのかな。(笑)」

小柴「だめです。すぐ泣いちゃうんで。(笑)」


――この作品を、“リーディングアクト”として上演する魅力をお聞かせ頂けますでしょうか?

沢口「関西弁が魅力ですね。私は、初めて関西弁のお母さん役を演じさせて頂きますが、その言葉の裏に秘められた優しさであったり、温かさ、強い愛情、一見乱暴にも聞こえるやりとりのその裏にある、そういったものを伝えられたら良いなと思っています。また本を読んだときに私もぐっと胸にくるところが何箇所かありまして、観に来られた方が、それぞれ色んなところで心に響く場面がある作品じゃないかなと思いました。」

小柴「“僕”と言う役が、本当は悲しいのに強がっている、みたいな、そういう気持ちが表現されている所が魅力ですかね。」


――お二人の仰る言葉の下に秘めたものが際立つ部分は、関西弁の会話だからこそ発揮されるのかもしれないですね。

生瀬「この作品に関しては、僕はいろんな捉え方があると思っています。この作品を観た時に、それぞれどんな立場になって、どんなことを思うのか、お芝居って、ただ「いいお芝居だったなぁ」じゃなくて、それを見て何を感じるかが、それぞれお客さんの大事な事かなと思うんですね。腹が立ったとか、時間が無駄だったとか、感動したとか、何かしらの思い出と重なって悲しくなる事もあるだろうし…。何でもいいです、それぞれで良いと思います。劇場ってそういう場所で、とにかく何も無く、するっと1時間ちょっとが過ぎてしまうような作品にはしたくないなと思っています。お客様が100人居れば100人の感じ方があって、そういう空間を、一緒に劇場で体感して、色んなことを感じて頂く有意義な時間になればと思います。」


――ご興味をお持ちの方々にメッセージをお願いします。

沢口「この度生瀬さんと小柴くんと関西弁のやり取りで繰り広げる、温かい家族の物語をお届けします。今、心に汗をかきながらお稽古に励んでおります。どうぞ楽しみにしていてください。」

小柴「僕が初めて一人で外部出演する舞台を、是非観て頂けると嬉しいです。がんばります。リーディングの中で表現される表情も見て下さい。観ている方の想像で膨らんでいくシーンもありますので、ぜひ楽しみにご覧下さい。」

生瀬「<リーディングアクト>と言う、カテゴリーとしては珍しい作品を、劇場に来て観て頂ければと思います。コロナ対策もしています。外に出るのが心配な方は配信でご覧に頂くのも良いと思いますけれども、やっぱり劇場ってね、僕のお芝居をするルーツでもあるし、劇場の魅力というのは絶対的に、唯一無二だと思っています。劇場の座席で色んなことをイメージして頂けたら、とっても豊かな時間になると思うのでお待ちしております。」