小池徹平 インタビュー|「魔界転生」

2018年に記録的な大ヒットを飛ばした舞台「魔界転生」が、2021年に再演される。堤幸彦が演出を手掛け、豪華絢爛で奇想天外な一大エンターテインメント時代劇で、10万人を超える動員を記録し、大きな話題となった。主人公の柳生十兵衛役は、前作に引き続き上川隆也。宿敵となる天草四郎役は、上川とは初共演となる小池徹平が演じる。意外にもミュージカルではない舞台作品は2作目という小池は、どのような想いで役に挑んでいくのか。話を聞いた。

 

――「魔界転生」で天草四郎を演じると聞いて、どんなお気持ちになりましたか。

初演の印象ですと、上演時間も長く、壮大なスケールで、なかなかの大舞台。今回、天草四郎という役をいただいて、いわば敵役ですよね。ミステリアスな雰囲気もありつつ、怨念で戦っていくというキャラクターで、お話の重要な部分を担う、重みもあって楽しみ方もいろいろある役だと思っています。ものすごく楽しみですね。

 

――天草四郎はいろいろな作品でたくさんの方が演じている役でもありますが、どういう人物だと捉えていますか。

天草四郎って、目が見えない少女の視力を治したとか、海の上を歩いた、みたいなエピソードがありますよね。すごく興味をそそられる人物だと思います。幕府と戦う時も先頭を切っていく大将でもある。魅力的でカリスマ性があって、っていうなんとなくの人物像が見えてきます。人を巻き込むのが上手いと思うんですが、それが話術なのか、行動で示すのか……そういうところをどうやって表現できるかな、と。知れば知るほど、知りたくなってくるような魅力がある人物ですね。ワクワクしています。

 

――天草四郎のイメージをどういうものから得ましたか?

あの、ちょっと関係ない話になるかも知れないんですけど(笑)、昔、ボスが天草四郎っていうゲームをやっていて、そのキャラクターがすごく好きだったんですね。いつもキャラクター選択で天草四郎を選んで使ってた思い出があるんです。ちょっと魔術を使って戦うようなキャラで、すごくカッコいいイメージでした。初演で(溝端)淳平が演じてたのを見て、本当にそのゲームが飛び出してきたような感覚でした。きれいな顔立ちながらも、妖艶な部分や怨みが入る力強さにカッコよさも混じっていて。そういうのも含めて、すごくミステリアスな印象ですね。

 

――実際に演じるにあたり、今イメージされていることなどはありますか?

潰されてみないと分からない部分もあると思うんですけど(笑)。初演だと、序盤にすごく印象的というか、衝撃的なシーンがあるじゃないですか。そこからどうやって蘇ってくるのか、とかワクワク感がありますよね。そういう印象的な部分をしっかりと魅せつつ、お芝居の部分でも魅せていけたらうれしいですね。

 

――主演の上川隆也さんの印象は?

ご一緒させていただくのは初めてなんですが、以前、松尾スズキさん演出の「キレイ~神様と待ち合わせした女~」に出演させていただいた時に、観に来てくださったんですよ。わざわざ楽屋にもあいさつに来てくださって、そういうコミュニケーションがあるとないとでは距離感が違うと思うんです。とても物腰が柔らかい方で、僕からもすごく話しかけやすくなりました。役では敵対する関係ですが、そういう部分も役者としての距離の詰め方として大事な部分なんですよね。とても懐の深い方だと思うので、お芝居の部分で勉強させていただくところがあると思います。今回、歌とかがなく芝居だけに集中することもひとつの楽しみでもあるので、貪欲に上川さんに食らいついていきたい。いい意味でわがままに、甘えて稽古していきたいですね。

 

――ミュージカルでのご活躍が印象的なので、芝居だけに集中する、というのも新鮮な印象です。

歌が無いことの“ラクさ”と“怖さ”はあるかも知れません。やっぱり、歌でしか表現できない部分もあるじゃないですか。ソロナンバーがあれば見せ場、とか分かりやすいシーンもあったりしますし。ひとつ武器が無い、という感覚はあります。でも、芝居のみに集中できるという面白さはある。歌だとやりすぎないようにセーブするような場面もあったりするんですが、お芝居だとそのあたりの加減はどうやるんだろう、とか、そういうちょっとした技術面のところを稽古の中で学んでいきたいですね。

 

――それ以外にも新しい経験がたくさんありそうな舞台ですよね。

そうですね。プロジェクション・マッピングを使った舞台もあんまり経験が無いですし、初演だとフライングもあったので、それも僕はやったことが無いんです。慣れれば大丈夫だとは思うんですが、最初はワーッとなっちゃいそうですね。技術さんとのコミュニケーションというのもあまり経験がないですし、稽古もどうやるのかぜんぜんわからないんですよ。そのあたりは未知なので、自分がどうなるか楽しみです。

 

――演出の堤幸彦さんの印象はいかがでしょうか

堤さんともご一緒するのは初めてなんですけど、本当に学生の頃から作品を観ていたので、めちゃくちゃ楽しみにしています。やっぱり「池袋ウエストゲートパーク」とか、学生の時というか若い時ってそういうの好きじゃないですか(笑)。ちょっと奇抜チックなイメージはありますね。初演でもそうですけど、一気に掴まれてしまうような演出をされる方。今回は、新型コロナウイルスの影響もあるので、上演時間も長時間にすることは難しく、凝縮した形になると聞いています。ブラッシュアップしてより濃密なものになるのではないでしょうか。そこをどう詰め込んでくるのかは非常に楽しみにしています。

 

――初演を観て、どういうところに惹きつけられましたか?

殺陣はすごく印象に残っていますね。堤さんの演出力はもちろん、プロジェクション・マッピングと殺陣の融合、それを支える技術さんの力も合わさっていて、時代劇と今の技術をうまく融合させて表現されていたことに、ものすごく圧倒されました。僕は初演を映像で拝見したんですが、それでも十分迫力が伝わってきました。実際に劇場でご覧になった方は、劇場でしか味わえないすごさだったんだろうなと思いましたね。あとは、上川さんが演じられている柳生十兵衛の人間愛の深さというか。ただ戦うだけじゃなく、人間ドラマ的な部分もすごく面白かった。僕の役は魔界側なので(笑)、平和な人間のほっこりするようなところも観て欲しいところです。

 

――新型コロナウイルスの影響で舞台をはじめエンターテインメント業界にとっても非常に困難な状況が続いていますが、どのような想いでいらっしゃいますか

どうしてもこの業界は、お客様が来てくださらないと成り立たないもの。モロに影響を受けていますし、実際に中止になったものもありますから、やっぱり思うところはあります。今後のことも不安が残るところはありますが、こうやって少しずつ動き出していています。結局、僕らは状況が良くなることを信じて、自分たちが表現するためのエネルギーを溜めて、今できることをしっかり磨き続けることだと思います。今日はポスター撮影だったんですが、こうやって徐々に開演までの階段をあがっているという事実が、僕らを支えてくれています。作品をひとつ作り上げるというのはとても大変なこと。そこにプラスして、感染対策もしなければなりません。精神的にストレスになる部分ではありますが、ちゃんとしんどい時にはしんどいんだ、と心の風通しも大事にしていかないといけないと思っています。仲間内で「ツライよな」なんて言いあったりして、発散できるようにしていきたいですね。今回は上川さんをはじめたくさんのベテランの方がいらっしゃいますし、みんなで甘え合いながらでいいんじゃないかと思っています。そして、来てくださるみなさんにも健康でいていただいて、僕らは観に来れる環境を作っていくだけですね。でも、エネルギーは本当にずっと溜めてきたので、ここで爆発させたいです! 舞台に立つのは、1年くらい空いてしまうので。

 

――舞台の魅力はどのようなところにあるでしょうか

僕、本当に劇場という場所が好きなんですよ。客席と舞台でも空気がガラッと変わるし、とても神聖な場所。徐々に劇場に行く機会も増えてきて、先日、東急シアターオーブでコンサートに呼んでいただいたんですが、久々に舞台に立って、生の拍手や笑い声があって…客席が100%でなくても、リアリティというんでしょうか。映像とは全然違うと思います。映像ってそれぞれの楽しみ方があって、ながら作業でご覧になる方も居ると思います。でも舞台は、常にステージ上の好きなところを観られるし、いわば客席からの視聴率はすごいことになるわけじゃないですか。そこでパフォーマンスをしなければならないプレッシャーも感じつつ、自分を出し切る感覚が、やめられないんですよね。劇場の端まで飛ばす力、というか。それは映像とはまた違うエネルギーの使い方だと思います。それに、お客さんの拍手や反応で得られる気持ちは、出た人じゃないと経験できないことですから。そういうところが、ダントツでいいところだと思います。

 

――2021年は「魔界転生」のほか、大河ドラマ「青天を衝け」へのご出演など活躍の場を広げていらっしゃいますが、今後のビジョンはどのように描いていらっしゃいますか?

みなさん、ステイホームをはじめ今までの人生では経験されなかったようなことを経験された方ばかりだと思うんですけど、その中でも僕が感じたエンターテインメントの大事さを感じました。
一度、消えかけそうになった灯がまたメラメラと燃え出したような感じになってくるんじゃないかという希望を、僕は感じています。あとは発信力の大事さ。役者は台本を頂いて、演出を付けていただいて、舞台に立つわけですが、その中でも自分でもっと発信していける部分があるはず。YouTubeを始めたりして、自分で発信することの大切さを学んだ気がします。歴史ものだったり、大河だったり、そういう経験をしたからこその新しいものをどんどん取り入れて、こうしたら面白いんじゃないか、みたいなちょっとしたクリエイティブなところを、今後はもちろん、今回の舞台でも活かしていけたらと思います。最近はYouTubeのスタッフにも「よっ、大河俳優!」とかちょっとバカにされながらイジられているんで、ちゃんとした舞台もできるんだぞと見せつけていきたいと思います(笑)

 

取材・文/宮崎新之