『キネマの天地』趣里×こどものためのバレエ劇場 2021『竜宮 りゅうぐう』米沢唯 スペシャル対談

いよいよ6月10日(木)より本公演開幕の人を思うちから 其の参『キネマの天地』と7月24日(土)開幕予定のこどものためのバレエ劇場 2021『竜宮 りゅうぐう』。今夏、新国立劇場作品に出演する趣里さん、米沢唯さん(新国立劇場バレエ団プリンシパル)お二人のスペシャル対談が実現!

趣里さんは以前バレエダンサーを目指してバレエ留学をされていたそうで、バレエに関する造詣も大変深く、米沢さん主演の5月配信のバレエ『コッペリア』(緊急事態宣言に伴い、有観客公演は中止)もご覧になったそう。

米沢唯さんは、父親が演劇の演出家ということもあって幼少期から演劇の舞台に触れており、現在も演劇鑑賞が趣味。

お互いを尊敬し合う、二人の意外な出会い、そしてお互いの作品への期待を語っていただきました!

 

意外な出会い、新国立劇場での創作環境

 

―新国立劇場での稽古中、電子マネーの使い方がわからず、自販機の前で困っていた趣里さんに米沢さんが声をかけたのが最初の出会いだとか。お互いの印象はいかがですか。

趣里 私はバレエをしていたので、唯さんがローザンヌに出られた頃からのファンです。本日はお目にかかれて、ガクガクしています(笑)私が言うのもおこがましいのですが、唯さんは技術もテクニックもすばらしいのですが、表現のところでとても勉強になるので、尊敬しております。

米沢 もちろん趣里さんのことは以前から存じ上げているのですが、家にテレビがなくドラマなどは拝見する機会がなくて…。『キネマの天地』はチケットを買ってあるので、とても楽しみです。

趣里 頑張ります!(笑)

 

―新国立劇場では舞踊・演劇・オペラの3ジャンルの舞台芸術の創作が同時に行われていますが、 こういった創作の環境はいかがでしょうか。

趣里 初めて新国立劇場でお稽古をさせていただいたのは舞台『オレステイア』の時なんですけど、バレエをしていたこともあり、(隣でバレエの稽古が行われているのが)気になってしまって。みなさん本当に素敵ですし、真面目に取り組まれている様子をみて、より背筋が伸びる気がしています。

米沢 新国立劇場バレエ団に入団して約10年になりますが、最初はオペラや演劇の方がすぐ傍にいらっしゃる環境に驚きました。(コロナ禍になり)換気のためにドアを開けて稽古をするようになったので、どの稽古場の前を通っても空気感がすごく伝わってくるようになって。とても幸せです。オペラも演劇もよく観に行くので、「これはどんな作品なんだろう」とか想像がどんどん膨らんでいって、チケットを買ってしまいます(笑)

 

演劇とバレエ、互いへの影響

 

―趣里さんは海外でバレエの勉強をされていたとか。バレエ経験が演劇をする上で活きていると思いますか。

趣里 イギリスのバレエ学校で2年ほど勉強していました。精神面がすごく鍛えられたと思います。一つの舞台に立つために、すべてを集中させるための自分との闘いや、共演者・スタッフと一緒に作品を作り上げていく楽しさが忘れられなくて、演劇を通して、もう一度表現をする道を選んだのかなと思います。自分が観客として観た際にもらえるエネルギーや感動も好きだったので「こんなに感動を生むことができるんだ」と。そこはバレエも演劇も共通しているかなと思います。

 

―米沢さんは演劇からバレエに活かせるエネルギーを感じることはありますか。

米沢 私は父が演出家だったので、バレエよりお芝居を観ている回数の方が多いんです。演劇って言葉の洪水、言葉の海に投げ出されているような感じです。バレエには言葉はありませんが、その体験(観劇)が私にはとても必要で、演劇を観ずにいられないです。

 

『キネマの天地』『竜宮 りゅうぐう』の見どころ

 

―今回ご出演される作品についてお伺いいたします。お二人とも作品の中でキャラクターに入り込んでいく印象ですが、役作りへの取り組み方を教えていただけますでしょうか。

趣里 (自分とは)違う人間を演じるので、100%わからなくても、自分がキャラクターの一番の理解者でいたいと思っています。役の気持ちを想像して、自分の体験の中から、そのキャラクターに近づけるように意識しています。今回の作品だと、演出家の小川絵梨子さんやほかの出演者の方のかけてくださる言葉にその場で反応していくことで役に導いていただいていますね。自分の中で準備して、それを稽古場で解放します。

 

―周囲の方から得た言葉で、ご自身の中で準備していたものと異なったり、さらに役を良くすることができたりしたことはありますか。

趣里 以前絵梨子さんとご一緒した舞台の稽古では台本を没収されて、「台本にとらわれず、相手と芝居して」と教えていただきました。演劇は、相手との会話で、その場で生まれたものをお客様に観ていただき、楽しんでいただくものなのに、いつの間にか「ちゃんとセリフを覚えて、それを言わなきゃ」ということに囚われてしまっていたんです。そのことを絵梨子さんに気づかせていただきました。

『キネマの天地』稽古場より 撮影:冨田実布
(左から)鈴木 杏、那須佐代子、高橋惠子、趣里

 

―米沢さんは吉田都芸術監督からもらった言葉はありますか。

米沢 「踊りもステップも出来ているから遊んで」と言われました。美しくきれいに踊ることだけでなく、いかに自分の踊りを踊るか、習ったことでなく、自分の踊りを生む、プロフェッショナルな踊り方をしてほしいという意味なのだとわかった時は刺さりましたね。演技についても、あの大きな舞台で、一番遠い席にどう伝わるのか、いつも悩みます。日々勉強しています。

 

―『キネマの天地』の見どころを教えてください。

趣里 人と人とのやり取りから生まれる喜劇で、昭和(1986年)に書かれた作品ですが現代人の心にもアプローチできる作品だと思います。

米沢 井上ひさしさんの作品って、とてもセリフが多いイメージです。

趣里 そうなんです。一人が喋ると、また一人が喋ってというようにどんどん次の人が喋るというテイストをどう崩すか。長台詞を長台詞と思わないで、リアクションを繋げたり、周りの人がどういう気持ちで聞いていて、どう次に繋げていくか等、会話としての再構築にトライしています。

 

―観劇予定の米沢さんが気になるポイントはありますか。

米沢 (今の話を聞いて)セリフとセリフの間の趣里さんをみてしまいそうです。

趣里 そこに命をかけてがんばります(笑)

 

―『竜宮 りゅうぐう』の見どころを教えてください

米沢 みなさんご存知の「浦島太郎」の物語で、お子様にもとても親しみやすいと思います。

こどものためのバレエ劇場 2020『竜宮 りゅうぐう』公演より 撮影:鹿摩隆司

米沢 プロジェクションマッピングで海や日本の自然の四季が表現されているのも見どころです。舞台の床に波の映像が当てられるのですが、本物のようにゆらゆら動いて見えるので、最初はトウシューズで立って歩くのが怖かったです。本当にポップな衣裳と美しいプロジェクションマッピングなので、はじめてバレエを観る方でも楽しんでいただけます。亀の姫の浦島太郎への愛が一本の軸になっているので様々な方に楽しんでいただけると思います。

 

―趣里さんも観たくなったのでは。

趣里 もちろん!行ける限り、唯さんを追いかけていきたいです(笑)夏らしい作品ですし、言葉がない分、想像力が刺激されるところもあると思うので、より楽しみですね。

 

趣里さん、米沢さんありがとうございました!
お二人の出演する新国立劇場作品の詳細は下記ご確認ください。