オスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』はこれまで多くのアーティストの創作意欲を刺激し、オペラ、バレエ、映画、舞台などの様々なジャンルで上演され、またサロメを原作とした多くの翻案作品が作られてきた。
今回脚本を手掛けるのは、主宰する演劇ユニット「ブス会*」を始め、近年ではTV ドラマの脚本にも活躍の場を広げ、現代を生きる女性を独自の観察眼で描き出すペヤンヌマキ。演出は、劇団文学座に所属し2013 年に初演出以降、多くの劇団内外作品にて演出を担当する新進気鋭の稲葉賀恵が手掛ける。
王女サロメはなぜ預言者の首を求めたのか。
若さゆえの無垢な欲望なのか、心に潜む闇の現れなのか、それとも―。
サロメの奇怪な望みを謎解くべく、彼女の生い立ちと彼女を取り巻く家族に焦点をあてながら、リアリティある等身大の女性としてサロメを描く。
王女サロメ役は、1991年に宝塚歌劇団月組公演「ベルサイユのばら」で初舞台を踏み、芸能生活30周年を迎えた朝海ひかる。宝塚歌劇団退団後は、ミュージカルのみならず、ストレートプレイや映像作品など活躍の場を広げてきた朝海の30周年から次の31周年目の芸能生活に向けて一歩を進みだすスタートの作品となる。
共演には、サロメの母親に、劇団「ナイロン100℃」に所属し、舞台を中心に映像やナレーション、コラムニストとしても幅広く活躍している松永玲子、地下牢に幽閉されている預言者には、近年2.5次元ミュージカルで注目を浴びストレートプレイや朗読劇など新たなジャンルで活躍の幅を広げる若手俳優の牧島 輝、ユダヤの王でありサロメの義父を演じるのは、テレビドラマや映画を中心にコミカルな役どころから味のある名脇役として活躍するベンガルと実力派キャストが集結した。
朝海ひかるを中心にお届けする、新しいサロメに期待が高まる。
コメント
《主演:朝海ひかる》
この度、私の芸能30 周年記念公演の演目には何が面白いか…演出の稲葉さんにお願いした所、いくつか挙げてくださりその中の一番最初に挙げてくださった戯曲が『サロメ』でした。私も何度か拝見しているこの作品ですが、サロメが「少女」という事もあり、完全に一観客として観劇してました。「今の私」が表現できる『サロメ』を脚本のペヤンヌさんがどう炙り出すか、稲葉さんがどう演出されるか。とても楽しみでなりません。皆様、目撃者となり様々なモノを感じて頂けたら、この上ない周年公演となります。劇場でお待ちしております。
《脚本:ペヤンヌマキ》
朝海ひかるさん芸能生活30周年の記念すべき公演の脚本を書かせていただくことになり、ドキドキしております。
題材は『サロメ』とのこと。『サロメ』と聞いて真っ先に思い浮かんだのは生首を持って微笑んでいる女性の姿で、残酷で官能的なイメージだけが強かったのですが、ひとりの等身大の人間として共感できるサロメを描いてみたいと思いました。また、様々な芸術家を魅了してきたサロメと朝海ひかるさんの魅力が重なるような作品にもしたいと構想を練っております。これまで硬派な作品を緻密に演出してこられた稲葉さんとの初めてのクリエイション、個性豊かなキャストの皆さんの肉体を通して、どんな『サロメ』になるのか楽しみです。
《演出:稲葉賀恵(文学座)》
宝塚時代の朝海ひかるさんを印象深く覚えています。男役でありながら、時に少女のように可憐。無垢な瞳をのぞかせたと思ったら次の瞬間妖艶な姿に様変わりする。「耽美」という言葉がとても似合う方でした。数年後こうして一緒にクリエイションする機会を頂き、まず私が提案したのが『サロメ』でした。無垢でありながら残酷で、少女でありながら妖艶。複雑怪奇なあのサロメという役を朝海さんならどう演じるのか、誰よりも私が観客席で観てみたかったのです。今回、翻案にペヤンヌさんが参戦してくださいます。そして共に作品を立ち上げるキャスト陣に、こんな胸躍る方々が集まりました。すでに何かが起こる前触れに武者震いしています。様々な解釈が溢れるこのサロメの登場人物たちを、血の通った等身大の人間にするべく彼らと共にえぐり出して参る所存です。