瀬戸康史、木下晴香 出演『彼女を笑う人がいても』ビジュアル・コメント・公演詳細公開!

2021.08.20

撮影:マチェイ・クーチャ

栗山民也と気鋭・瀬戸山美咲の強力タッグが実現!
多彩なキャストが現代と安保闘争の時代を舞台に正義と真実を問う

現代日本演劇界を代表する演出家の一人である栗山民也と、近年凄まじい活躍ぶりの次代を担う劇作家・瀬戸山美咲が強力タッグを組み、新作を上演する。

 

瀬戸康史ら多彩なキャストが集結

出演は、映像・舞台に目覚ましい躍進を続ける瀬戸康史を主人公に、ミュージカルを中心に活躍し今回がストレートプレイ初出演となる木下晴香、近年活躍をみせ今回初舞台となる期待の俳優 渡邊圭祐、舞台・TV・映画と幅広く活躍する演技派の近藤公園を起用。

更には、話題の舞台作品に次々と出演している阿岐之将一、舞台・テレビドラマのほか声優としても目覚ましい活躍を遂げる魏涼子、舞台だけでなく映像作品でも幅広く活躍中の吉見一豊、長年舞台で活躍し続け栗山作品に欠かせない大鷹明良が脇を固める。

出演者全員が現代と過去それぞれの時代に生きる人々を演じ分けるのも見どころだ。

 

栗山民也×瀬戸山美咲

栗山民也は2000年から7年間、新国立劇場演劇部門の芸術監督を務め、2013年に紫綬褒章受章、2018年読売演劇賞・大賞を受賞するなど、現代日本演劇界を代表する演出家だ。これまで世田谷パブリックシアターでは『シャンハイムーン』『CHIMERICA チャイメリカ』『殺意 ストリップショウ』などの作品を上演してきた。
瀬戸山美咲は世田谷パブリックシアター主催の若い才能の発掘と育成のための事業「シアタートラム ネクスト・ジェネレーション」で2011年に選出されて以降注目を集め、様々な公共劇場での主催公演を手掛けるなど、近年目覚ましい活躍を見せています。世田谷パブリックシアターでは昨年、長田育恵とともに劇作、そして演出を手掛けた現代能楽集Ⅹ『幸福論』にて、第28 回読売演劇大賞選考委員特別賞・優秀演出家賞を受賞し、ますます注目を集める気鋭の劇作家・演出家だ。

 

作品テーマについて

世田谷パブリックシアターとゆかりの深い2 名のアーティストが初めてタッグを組みお届けする本作は、「安保闘争」という現代日本社会を語る上で外すことのできない歴史的事件を題材にしている。
現代と1960年安保闘争の二つの時代を舞台に、報道の真実やマスコミニュケーションの正義を追い求め奔走する二人の新聞記者の青年の姿を通し、日本社会の光と闇を見つめ、現代を生きる私たちの心にかすかな光を灯す作品を披露する。

 

あらすじ

雨音。
1960年6月16日。黒い傘をさした人々が静かに集まってくる。人々はゆっくり国会議事堂に向かって歩き出す。

2021年、新聞記者の伊知哉は自分の仕事に行き詰まっていた。入社以来、東日本大震災の被災者の取材を続けてきたが、配置転換が決まって取材が継続できなくなってしまったのだ。そんなとき、伊知哉は亡くなった祖父・吾郎もかつて新聞記者であったことを知る。彼が新聞記者を辞めたのは1960年、安保闘争の年だった。

1960年、吾郎は安保闘争に参加する学生たちを取材していた。闘争が激化する中、ある女子学生が命を落とす。学生たちとともに彼女の死の真相を追う吾郎。一方で、吾郎のつとめる新聞社の上層部では、闘争の鎮静化に向けた「共同宣言」が準備されつつあった。

吾郎の道筋を辿る伊知哉。報道とは何か。本当の“声なき声”とは何か。やがて60年以上の時を経て、ふたりの姿は重なっていく。

 

作家・演出家・出演者よりコメント

 

栗山民也
「あのとき」へ
世田谷パブリックシアターから新しい企画の話があった。いくつかの候補の中から、瀬戸山さんとの新作を、と答えた。早速お会いした。自由で熱い作者としての思いをたくさん聞けて、とても楽しい時間になった。
60年の「あのとき」とは、一体何だったのか。主題は「六十年安保」。
人それぞれ違った歴史があるように、その時代への密かな思いはそれぞれに違う。学生の時、当時書かれたものを漁るように読んだ。そして、その時の運動や言葉の断片を勝手に時代の光景として心に刻んだ。体のどこかに刺さった深い棘のように、一つのどうしようもない痛みになって残った。その痛みが何かの時に、ズキンと今に疼く。
この支離滅裂で、痛ましいほどの政治の空白を前に、じっと「あのとき」のあの人たちの気持ちと行動を見つめたい。

 

瀬戸山美咲
その言葉を笑わない
60年の安保闘争のことがずっと気になっていました。デモのさなか、一人の女子学生が命を落とした。それが一体どういうことなのか想像できなかったからです。2000 年代初頭、あることに抗議するために初めてデモに参加しました。でも、数回行ってやめてしまいました。自分の言葉が本当に届いているのかわからなくなってしまったのだと思います。90 年代後半から日本社会全体に冷笑的な雰囲気が広がってきていました。その空気の中、何かに抗議するということにどこか居心地の悪さも感じていました。その後もたびたびデモや抗議行動に参加してきましたが、続けることの難しさを痛感するばかりでした。
60年安保闘争のあの若者たちの熱はどこから来て、そしてどこに消えてしまったのか。それを知ることは、自分や社会全体の「あきらめ」の根源を知ることにもならないか。そう思ってこの主題を選びました。そして、あらためて政治と民衆とメディアの間で行き交う「言葉」について考えたいと思いました。人と人はわかりあえないものだけれど、かつてはもう少し、言葉の意味自体は共有されていたように思います。でも、今は言葉が意味を失ってしまった。そこに思想はなく、ごまかしたり、だましたりするために言葉が使われています。そして、わかりあえない他者の言葉を冷ややかに笑うことしかできなくなってしまいました。
でも、だからといって、これからもずっとそうだとは思いたくありません。61年前に命を落とした彼女の言葉は今の私に届きました。共感できることもできないこともあるけれど、彼女の言葉には命が宿っています。その言葉を私は笑いたくない。言葉の持つ可能性はまだある。そう信じて、この作品を届けたいと思います。

 

瀬戸康史
初めて栗山民也さんと瀬戸山美咲さんとご一緒させていただきます。栗山さんの作品は何作も見ていて、ぜひご一緒したいと思っていたので、本当に嬉しいです。瀬戸山さんはとても勢いのある劇作家さんだと思っていたので、今から稽古が楽しみです。安保闘争という難しいテーマではありますが、この作品には人間にとって、今の時代にとって、大事なメッセージが込められているのではないかなと、感じています。安保闘争の時代を生きた人物の心情を体全体で演じることができればいいなと思います。

 

木下晴香
今回、初めてのストレートプレイに挑戦させていただく舞台になります。以前、栗山さんの演出された舞台を拝見し、本当に衝撃を受けました。栗山さんの演出を受けることが、今後の人生の糧に、宝物になるのではないかなと、とても光栄に、楽しみにしています。1960年代を生きた女性を演じるということで、今までに出会ったことのない壁にたくさんぶつかりながら、演じる覚悟、そして尊敬を持ってこの役に向き合っていきたいと思っています。

 

渡邊圭祐
演出の栗山さん、劇作の瀬戸山さん、そして共演者の皆様とも初めてご一緒させて頂きます。そして、僕は舞台に出演することが初めてで、全てが初尽くしです。たくさんの初を前に、胸を躍らせ、誰よりも楽しみにしています。安保闘争という難しいテーマではありますが、舞台を通して、日本の社会や歴史について向き合っていけたらと思います。どうぞよろしくお願いします。

 

近藤公園
いつか一緒にと念願に思っていた栗山さんとご一緒できること、大変楽しみで、嬉しいです。1960年代と現代を並行して描く作品ということで、共演者の皆さんと一緒に学びながら、その時代を感じることをとても楽しみにしています。
安保闘争の時代の、言葉の持つ力を信じて闘った人たちを演じることで、役者として改めて、言葉というものと向き合い、考える時間になるのかなと感じています。演劇の持つ力を信じて、誠心誠意、懸命に作りたいと思います。