内 博貴インタビュー|音楽劇『海の上のピアニスト』

豪華客船の中で生まれ、生涯一度も船を降りることのなかった天才ピアニストの生涯を描く音楽劇『海の上のピアニスト』が2021年9月に上演される。イタリアの音楽評論家・アレッサンドロ・バリッコの戯曲を原作にした本作で、主人公のピアニスト・ノヴェンチェントを内博貴が演じる。全編にわたりピアノによるオリジナル曲がちりばめられた音楽劇に内はどのように挑むのか。稽古に入る前の心境を伺った。

 

――主人公のピアニスト・ノヴェンチェント役を演じるにあたり、意気込みをお聞かせください。

まだ歌稽古しか行っていないのですが(8月中旬取材)、舞台で歌うのは久しぶりですし、難しい曲もあるので集中しなくては…と思っています。

今回演じるノヴェンチェントは、生涯を船の上で過ごした人。船員に拾われて育ててもらい、本当の両親も分からない。普通だったらあり得ない設定ですから、どう共感していいのか難しいところです。

ただ僕は、普段から役作りをしないんです。台本を読んで「この人物はこういうせりふを言うんだ」と自分が納得することで役作りになると思っています。ですから何もないゼロの状態で稽古に入るようにしていますし、今回も真っ白な自然体の状態から少しずつノヴェンチェント像を作っていこうと思っています。

 

――今回の公演で、挑戦だと感じているところはありますか?

ピアニストの役ですが、実際に生でピアノを弾くシーンがあるのか、今の時点では分からないんです。やるとなればすごく挑戦ですね。

そしてこの作品は二人芝居なのですが、実は共演の藤本隆宏さんと掛け合いのせりふが、ほとんどないんです。藤本さんはストーリーテラーのようなせりふが多いのですが、僕はどちらかというと外の世界に出てみたい欲求など、自分の心情を吐露するポエムのようなせりふが多いんです。二人芝居なのに、会話のキャッチボールが少ない舞台はこれまで経験したことがありませんし、不思議な作品になるのではないかと思います。

僕は普段、相手役のせりふを覚えることで、自分のせりふを頭に入れる…というやり方をしているのですが、今回はそのやり方が通用しないんですよ。ですからそういう意味では大変だと思いますし、大きなチャレンジになりそうですね。

 

――共演の藤本隆宏さんの印象は?

一度お会いしましたが、めちゃくちゃいい身体をしていらっしゃいました(笑)。ソウル五輪・バルセロナ五輪に水泳選手として出場された経験があると聞いてびっくりしました。本格的に稽古が始まったら、そのあたりのお話をもっと詳しく伺いたいですね。

今回の舞台では、せりふの掛け合いは少ないものの、藤本さんと一緒にワイワイやりながら歌うシーンがあるので、そこで藤本さんとのコミュニケーションを深めることができたらいいなって思っています。

 

――内さんご自身は、ピアノに対してどのようなイメージを持っていますか?

すごく繊細な楽器だと思っています。僕はバンドでボーカルを担当しているのですが、ピアノは音を正確にとらえてくれるので、とても頼りにしている楽器です。ボーカルにとってピアノの音は生命線なんですよ。

ギターは弾けますが、ピアノは弾いたことがないので、昔から「弾けたらいいな」って、思っていました。野球をやってる場合じゃなかったなあって(笑)。もし自分に子どもができたらピアノを習わせたいですね。

 

――さまざまな舞台でご活躍ですが、内さんにとって舞台とは?

僕が22~23歳の頃にジャニーさんから「舞台が一番大切。舞台に立てる人間が最後まで生き残るし、立ち続けることが一番難しい」と教えられました。

正直言うと、もともと舞台はあまり好きではなかったんです。でもそんな僕の気持ちを見透かしたように「ユーは今舞台に立ってるけど、それを当たり前だと思っていたらダメ。嫌々やっているでしょ?」とジャニーさんに言われたことがありました。本心を言い当てられてドキッとしましたね。

でもその時のジャニーさんの言葉をきっかけに、舞台に対する気持ちが変わりました。今この仕事ができるのも、ジャニーさんのおかげだと思います。

 

――最後にファンの皆さんへメッセージをお願いします。

今回地方公演もあって、僕自身初めて行く場所もあります。待っていてくれる人がいると思いますし、僕自身も楽しみにして皆さんとお会いしたいです。しっかり感染対策をしてバッチリな状態で足を運べるようにしますので、楽しみに待っていてください。

 

インタビュー・文:咲田真菜