戸塚祥太(A.B.C-Z)、内博貴 インタビュー|「フォーティンブラス」

シェークスピアの代表作「ハムレット」に登場する脇役にスポットライトを当てた舞台「フォーティンブラス」。横内謙介が、俳優の視点で1990年に書き下ろしたこの作品が、主演に戸塚祥太(A.B.C-Z)、出演に内博貴、演出を中屋敷法仁という布陣で上演されることになった。

同い年で、ジャニーズ作品以外での共演は初となる戸塚と内は、この作品にどのように挑むのだろうか。

 

――今回、外部作品での共演は初めてとのことですが、それぞれご出演が決まった時のお気持ちはいかがでしたか?

戸塚 まず、共演者のところに、内って書いてあって「内、出てくれるの?嬉しい~!」って思いました。ラッキー、ごちそうさまです!って気分(笑)。やっぱりキャスティングって、自分の意思とは別のところで決まるので、くじ引きみたいなところってあるじゃないですか。毎回毎回、縁ですから。同世代だし、ジャニーズのものでは共演していますけど、こういうタイミングで共演できることが、嬉しかったですね。

内 そもそも、こんなに急に舞台が決まることが無かった(笑)。そんなすぐやるの?っていう位だったんです。それで作品の内容を聞く前に、他に誰が出るの?って聞いたらとっつーが主演で。それを聞いた瞬間に、じゃあ俺もやるよ、って返事しました。作品が何かも聞かず(笑)。プライベートで「なにか一緒にやれたらいいね」っていう話はしたことがあって、僕もずっとそう思ってて。彼の作品もたくさん観てきたし、尊敬する俳優。だからこそ、作品も聞かずに即答でした。

 

――作品が決まって、お互いに連絡を取り合ったりした?

内 いや、連絡を取り合う間もなく、わりとすぐにポスター撮影でした(笑)

戸塚 そうだね。撮影の現場で「うぃーす、ありがとう~」って。

内 そんな感じ(笑)。「いつ聞いたん?」って聞いて…

戸塚 「一昨日とかかな」ってね(笑)。最初は、どなたかが出来なくなって、それで僕に話が来たかと思いましたから。

 

――すごいスピード感だったんですね(笑)。お2人は同い年ですが、お互いに何か意識しあうようなことはあった?

戸塚 僕は無いかなぁ。本当に仲のいい友達みたいな感覚。

内 絶妙な距離ですよ。同じクラスじゃないけど、たまに下校するときに会ったりして、そのまま話しながら帰る、みたいな距離感。

戸塚 僕も内の作品を観ていて、それがパッと距離を飛び越えているような感覚。プライベートですごく一緒にいたとか、たくさん話したとかじゃないんだけどね。

内 僕ととっつーの共通点だと、錦織一清さんの存在がすごく大きくて。ニシキさんはニシキさんで、つかこうへいさんから受け継いでいるものが大きい。だからか、僕もつかこうへいさんの作品はたくさん観ているんです。それで、とっつーがやっている役は、率直に、俺にはできないな、という気持ちがある。僕に無いものを持っていると、観ていて感じるんです。そこはやっぱり、尊敬できますね。

戸塚 うまく言葉で言えるかわからないんですけど…内は圧倒的に主役感があるんですよね。存在感に。一緒にガッツリ稽古をしたとか、そういう経験はまだ無いんだけど、(作品を)持っていってくれる、持っていける存在というか。こう見えて、内は根性もあるし、かっこいいところがたくさんあるんですよ。だってこの人、肺気胸で肺に穴が開いても舞台に立ってたんですよ!?

内 あった、あった……誰も信じてくれなかった(笑)。覚えてくれてる?すっごい嬉しい!ありがとう…ホンマに辛かってんから!

戸塚 (笑)。本当に尊敬してるもん。

内 ちょうど横浜アリーナでコンサートをやっていて、急にドン!って息ができなくなって、舞台袖にハケたんよ。そしたらスタッフさんに怒られた(笑)。でも喋れないくらいで、もう出られなくて。コンサートが終わってから大阪に帰ってからも、親も信じてくれなくて(笑)。翌日、舞台の現場でも誰も信じてくれず…いや、ホンマに覚えてくれてる人いて良かった。根性でやり切ってたから。

戸塚 本当に、根性以外の何物でもない。実はその数年後に、僕も肺気胸になるんですよ。

内 えっ!マジ!

戸塚 ちょうど自転車でレンタルDVD店に行こうとしてたんですけど、ドン!ってなって、行先を病院に切り替えました。もう、死ぬかと思いました。それで、即入院です。

内 僕の時は、その後にようやく大人が信じてくれて。亮は「まだ言うてんの?長ない?」って言ってたけど(笑)。次の日の早朝に病院に行ったら、病院の先生にも「なんでここまで放っておいたんだ!」って、めっちゃ怒られて。即手術になりました。その後、入院して亮もお見舞いに来てくれたんですけど「ホンマやったんや!」って言ってました。だから言うたやん!ってね(笑)

 

――周囲は内さんが何でもやり切ってしまう人だと知っているから、ちょっと弱音を吐いているくらいの感覚だったのかもしれないですね。

戸塚 そう、やっちゃうからね。

内 そこは、お客さんには関係ないことだから。見せちゃダメ。たとえ骨折してようが、腕を負傷してようが、何かやらないといけないんだよね。でも、あれを分かち合えるのは嬉しいよ。

 

――意外なところでも絆がありますね。今回の作品では、主役ではなく脇役に焦点が当たっていますが、作品のコンセプトの部分で、いま感じていることはありますか?

戸塚 非常に人間らしいと思いますね。誰もがそういう気持ちになったことがあるんじゃないかな。芸能界に限らず、自分もあんなふうになりたい、こうしてみたい、と望むことはあると思うんです。俳優は役があるわけですが、俳優じゃなくても、それぞれのポジションってあるじゃないですか。今のポジションからもっと上に行きたいのか、それとも下降してしまうのか。めちゃくちゃ現実的なことですけど、それって避けて通れない。そこを、面白おかしく描いていると思います。

内 新しいですよね。脇役にスポットを当てるのが斬新で面白いな、と思ったし、結構リアルだと思いました。きっとひと昔前の劇団員とかには、あったんだろうな、と。そういうリアルさもありながら、オバケが出てきたり、SFじゃないけど、ちょっと面白い部分やコメディタッチな部分もあって、いろいろ織り交ざっている作品だと思います。

 

――それぞれの役柄についてはいかがですか?

戸塚 共感するところは、やっぱりある。ああしたい、こうしたいっていう気持ちはあるし、具体的に、あの役をやりたかった、みたいなことを思ったこともある。でも、果たして自分があの役をやって成功させられるのか、みたいなセリフもあったりして、意外とグサグサくるセリフもたくさんあります。物事の捉え方が面白いんですよね。

内 僕はあんまり主役か主役じゃないか、って考えないんですよ。普段から。もちろん、主演舞台はたくさんやらせていただきましたけど、俺が主役だから!みたいなことはまったく思わない。だって、みんな出るんじゃないの?だったらみんな主役じゃん、って思っちゃう。だから、いわゆる主役は、表向きのPR隊長みたいな感覚?そんなイメージです、僕は。だから、主役かどうかに囚われたことはないです。

戸塚 そこは僕も近い感覚がありますね。やることも舞台の上では変わらないし、本当にシンボルかな。みんなやることはやっているし、みんなプロフェッショナル。そこに優劣みたいなものはない。

 

――稽古で楽しみにしていることは?

内 コロナ禍になってから、舞台稽古のやり方って非常に変わって、ようやくそこにも慣れてきたところ。感染対策には配慮しつつ、稽古場で生まれてくるものをとらえたいですね。僕は、台本も稽古場でバッと覚えるタイプなので、しっかり集中してやれたらと思います。演出家の中屋敷法仁さんも今回が初めてで、年齢も近いので、いい意味でセッションしながらできたらと思います。

戸塚 中屋敷さんは「稽古が好きなんだ」っておっしゃっていて。僕も、みんなで一緒に作り上げる時間が好きなので、楽しみです。

内 (小声で)稽古が好き、か…

戸塚 いろんな解釈があると思うけど(笑)、その人らしさを見せる瞬間が好きなんですって。ふとした時の。

内 …それは、変態よ(笑)

戸塚 オフの時と言うか。…うん、変態ですね(笑)。だから、楽しみですね。

 

――

戸塚 演劇や娯楽について、それぞれにいろいろな解釈があると思いますが、このチームで絶対に楽しませるという想いは強くあります。ぜひ、見に来て欲しいですね。安心、安全を第一に考えてやりますから。とにかく、楽しみにしてください!

内 とっつーが全部言ってくれたんですけど(笑)。限られた期間で、会場も東京だけではありますが、コロナ禍でそんなに遠出もできないかと思います。この舞台を、夏休みの思い出のひとつに、いかがでしょうか? 

 

――きっと素敵な思い出になるかと思います! 公演を楽しみにしています

 

ライター:宮崎新之