3年連続で紅白歌合戦に出場を果たすなど、今たくさんの注目を集めているグループ・純烈が明治座で主演公演を開催する。1部はニューヨークを舞台にしたコメディ、2部は日替わりでゲストを招いてのコンサートと、彼らの魅力が詰まった華やかなステージが繰り広げられる。明治座での初めての主演公演を前に、メンバーの酒井一圭、後上翔太、白川裕二郎、小田井涼平の4人はどのような心境なのだろうか。
――明治座で初の座長公演、まずは今の意気込みをお聞かせください。
白川
まずは体調管理! まずはそこからだよね。
小田井
そう! その上で、僕らはグループでやりますので、4人で力を合わせてやっていきたいですね。それにゲストのみなさんも大先輩ばかりですから、僕らが“座長ですから!”ってやるよりも、胸を借りる気持ちで、みんなでいいものにしていきたいです。
後上
明治座にいらっしゃる方は、前日から楽しみにしていらして、お時間をかけてお越しくださって、美味しいご飯を食べたりもして、お芝居や歌を観てくださっているんだと思うんです。なので、その1日がトータルで楽しい一日になればいいですよね。明治座は歴史ある場所ですから、それを損なわないようなものを我々も板の上に乗せていきたい。そして、来てくださった方が寝るときに“今日は楽しかったな”と思っていただけることが、もう最高点であり、最低限です。そう思って、日々やっていきたいと思います。公演数も多いので、それを継続してやらないとですね。
酒井
本当に、事故無くっていうのが本音ですね。無事に健康であれば、能力も発揮できるし、みなさんにも楽しんでいただけるはず。逆に言うと、通常のコンサートやディナーショーでも、みんながやりずらくないかとか、怪我したりしないかとか、そういう部分しか気にしていないんですよ。そのいつも通りの安全第一、という感覚は持っています。
――1部はお芝居のステージです。演技の面でお互いに期待していることなどはありますか?
酒井
僕は、白川が何を言っているかわからない感じにならないか心配です(笑)
白川
一緒に10年やっていて、今言うんですかそれ。もうちょっと前から言ってよ(笑)
酒井
マイクつけるんで何とかなると思うんですけど、お芝居の時に大事なセリフをちゃんと届けなきゃいけないときは冷静にね。で、それに感化されちゃうのが後上で(笑)。体当たりすぎて、声がでかくなりすぎちゃう問題、マイク割れちゃう問題ね。
小田井
俺はその辺大丈夫だと思う。お芝居の時はふざけない。真面目にやりすぎてスベるタイプ(笑)
後上
リーダーと僕と小田井さんがコーラスグループみたいな感じの設定になっているんですけど、ということは本編中に歌うのか?とかは気になりますね。まだ全然、そこらへんも分かっていなくて。純烈はリードボーカルが白川さんなので、白川さんのいないコーラスグループって何やるの!?ってドキドキしています。もしかしたら、お芝居の稽古よりもそっちの方が大変で、3人で夜中の貸しスタジオに行くことになるのかな、とか(笑)。白川さんはパンフレットでも一人だけ白いスーツで実業家!って感じなので、裕ちゃんマダムが湧きたつことになるんじゃないかと思います。
白川
物語は、多分僕が書いたラブレターをコーラスグループの3人が取り返してくれる、みたいなストーリーで、みんなが助けてくれる感じになると思うんです。なので、さっきリーダーが言ったように僕がセリフで何を言っているかわかんないところがあったとしても、きっと3人が助けてくれるはず(笑)。でも、僕らはもともとライダー系や戦隊系のお芝居をやっていたメンバーなので、みんなにもお客さんにも助けてもらいながら、楽しみつつ進めていけたらと思います。
小田井
構図的に、僕らコーラスの3人にはきっと珍道中的なことがありそうな予感がしています。でも、白川くんが実業家でお金持ちの“水曜日さん(白川の役名がウェンズデー)”がどういう役どころになるのかは気になるし、期待したいところですね。
白川
水曜日って(笑)
小田井
アメリカン・コメディチックなお芝居になりそうなので、楽しみですよ。でも、映画吹替のような、なだぎ武さんのコントのような感じを求められたら、しっちゃかめっちゃかになるかも(笑)。でも、むしろやってみたい。そういう期待と不安が入り混じっていますが、やり遂げたら面白いものができるはずですからね。
――ラブレターが物語のカギになっていますが、みなさんにはラブレターにまつわる思い出はある?
白川
ラブレター、もらったことはありますよ! ……ドッキリだったんですけど(笑)。中学の時、朝に上履き入れを見たら小さい紙きれが入っていて、女の子の字で「放課後、〇〇で待ってます」って書いてあったんです。めっちゃドキドキして、その日の授業なんてまったく身に入らなかったですよ。で、放課後に待ってたんですけど、誰も来ない。でも、ずっと待ってたら現れたのが、仲良くしてた男3人。手紙は女の子に書いてもらっただけで、3人からのドッキリだったんです。苦いというか、やられた~っていう思い出ですね。
小田井
男3人――まさか、今回の話ってそういう……?
白川
いや、違うから。これは俺の甘酸っぱい思い出話(笑)
小田井
僕は中学の時にラブレター書いたことがあります。当時、ちょっと不良っぽい男女がカッコいい時代だったんです。スケバン刑事とか。でも、僕は割とマジメなほうでした。で、女の子がどうしたら喜んでくれるかを考えて、なぜか自分の似顔絵を描いてくれたら喜ぶと勝手に思い込んだんですよ(笑)。その頃、僕は「超時空要塞マクロス」が大好きで、キャラクターデザインの美樹本晴彦さんのタッチを真似て、その子の絵を描きました。まだ“付き合ってください”とか、そういうことまで考えていなくて、ただ好きですみたいなことを書いたんですけど、観た瞬間に、めちゃくちゃ気持ち悪がられました。それだけで終わりましたね。今ならわかりますよ、ごっつ気持ち悪いことしたな、って。映画のサブタイトルだった“愛・おぼえていますか”なんて書いて(笑)
後上
僕も書いたことがあります。もう、付き合っていたか、付き合う直前くらいの仲で、そんなトリッキーなことは書いていないんですけど(笑)。でも、お芝居のタイトル『ラブレターを取り返せ!』じゃないですけど、ラブレターって相手が思うところがあって捨てたりしない限り、モノとして残るじゃないですか。最初は2人だけが存在を知っているものですけど、そのうちに「こんなの貰ったんだ」とかが始まるわけですよ。悪気とかじゃなく、嬉しいから友達に話したり見せたりしたんだと思うんですけど、そういう時は取り返したくなりますね(笑)。昔の僕にラブレターは2人の間だけのものじゃないかも知れないよ、ということを頭に入れて書きなさい、って教えてあげたいです。
酒井
僕は子役からやっていたので、証拠は残さない(笑)。なので、書いたことはないです。怖くて書けないですよ。やっぱりもらった方は、しゃべるなって言う方が無理じゃないですか。ラブレターを書きたくなるような気持ちになったことはありますけど、直接伝えればいいしね。そんなに自分の人生の中で、自分が主人公になるようなことはない。ラブレターを書いているときってそういう感じでしょ? だからちょっと羨ましい。小田井さんとかは、いつもそんな感じでしょ(笑)
小田井
今でも、「超時空要塞マクロス」を観ると、甘酸っぱい気持ちになりますもん。たまに観るんです(笑)
――2部は、瀬川瑛子さん、美川憲一さん、コロッケさん、森口博子さん、前川清さんと豪華なゲストを招いての歌のステージとなっています。ゲストを招いてのステージはいかがですか?
酒井
もしかしたらお芝居のステージよりも、歌のステージの方が問題ですよ。明治座やりすぎやろ!っていうくらい豪華な先輩方ですから。みなさん座長クラスで、ものすごいポテンシャルのある方ばかり。「おめでとう~」って入ってきてくださってから、次に何が飛び出してくるのかわかりません。きっとスタッフさんに迷惑をかけない範囲で、何か仕掛けてくるはず。でも、僕らは座長ですから、相手の技は全部受け止めないといけませんからね。すごく鍛えられるんじゃないかと思って、楽しみです。明治座という舞台での立ち振る舞いや、お客さんに対していい意味での裏切り方、いろいろな攻撃パターンを学べるチャンスだと思っています。客席で観たいくらい。前川清さんの初日と最終日はメチャクチャしてくる可能性、ありますからね。愛あるメチャクチャ(笑)
小田井
コロッケさんも何してくるかわかりませんし、日替わりで出し物を変えられる人ですし。岩崎宏美さんのモノマネでせり上がって来られたら、笑うしかないじゃないですか。美川憲一さんに出ていただいた後の公演で、コロッケさんが美川さんのモノマネをしてくださったら、また美川さんの回みたいなものじゃないですか?
後上
それ観たいな、客席で(笑)。森口博子さんもおキレイだし、歌はうまいし……。
小田井
瀬川瑛子さんのお写真なんて、もう宝塚みたいな華やかさじゃないですか?
白川
初日に瀬川さんに出ていただけるんですもんね。
酒井
瀬川さんは、バッチリ合う可能性も、まったくかみ合わない可能性も、どちらもある(笑)。本当に、全公演通してみても、飽きないはず。
――1部も2部も、どちらのステージも見どころがたくさんありそうですね。
小田井
今回、1部の脚本を横山一真さんが書いてくださいます。僕らもまだあらすじ程度しか知らないんですけど、今の時点でもすごく僕ら純烈のことを研究してくださっているんだな、という印象を持っています。売れないコーラスグループに仕事が入ると言えば、当然、歌の仕事だろうな、と思うわけですよ。でも、もらった仕事は“ラブレターを取り返す”というミッション。歌では勝負しない、というところに、純烈をよく理解してくださっている、と感じました(笑)。そのストーリーにもう純烈らしさが現れていて、僕らのことを汲んでくれているんです。こういうお芝居への挑戦は僕らにとって初めてですし、お客さんもこういう僕らを観るのは初めてなので、期待していただきつつ、このお芝居を目玉として頑張っていきたいと思っています。
白川
純烈にとって初めての座長公演で、ムード歌謡のグループとしてもあまり聞かないことだと思っています。1920年代のニューヨークを舞台にしたお芝居ということで、僕らにとってはちょっとハードルが高いかな?と思ったりもするんですが、そのハードルも楽しみつつ。ファンの方はワクワクして観に来てくださるだろうし、僕らもドキドキしながら公演をしていきたいと思います。座長だからと肩肘張らずに、いい意味でチカラを抜いてやりたいですね。一人でも多くの方に楽しんでいただき、2度目3度目と呼んでいただけるように、しっかりと力を合わせて頑張っていきます!
後上
僕らのことを知って応援してくれている人ももちろんいますけど、お友達とかに連れてこられてなんとなく来ている人も中にはいらっしゃると思うんです。そういう方たちにも、笑顔で“よかったな”と帰っていただきたい。そのために、どうその日を過ごしていくかというのが、僕ら純烈がキャバレーやスーパー銭湯などをめぐる中で大切にしてきたことだと思います。いろんなステージがある中、明治座という大きなステージでも、純烈として変わらずにやりたいですね。
酒井
本当に、この公演がもしコケたら、あいつらアカンわって全国に知れ渡ってしまうワケです。僕らはキャバレーや健康センターをはじめ、いろいろな場所でコンサートをさせていただいていますけど、常にいつクビになってもおかしくない、という気持ちでいつもやっています。明治座という大きいステージで、何が成功なのかというのは分からないですが、悔いなくやりますので、みなさんに喜んでいただけたら。――僕らのメンバーのひとりが辞めることになった時、前川清さんの明治座公演に出演させていただいていて、明治座で場所をお借りして記者会見をやらせていただきました。5人が4人になってしまって、それでも前川さんと明治座さんには「頑張って」と言っていただき、舞台に立たせていただきました。僕らの一番の危機を救っていただいた、その時の恩返しの気持ちもあります。1日1日、稽古を含めてみんなで課題をクリアして、並々ならぬ想いをステージや歌で表現したいと思います。
取材・文/宮崎新之