昨年夏に始動したアナタを幸せにする世界の伝説シリーズの第二弾、「霧の中のノスフェラトゥ~ドラキュラ伝説~」が間もなく幕を開ける。今回は、19世紀のロンドンを舞台に、ドラキュラ伝説にまつわる怪事件が描かれ、歌やダンス、殺陣など多彩な演出で、吸血鬼とそれに立ち向かう人々の駆け引きとバトルが繰り広げられる。また、2部では華やかなライブパフォーマンスをお届けしていく。このステージに臨む、田村升吾、永田聖一朗、野口準の3人に話を聞いた。
――出演が決まった時は、どんなことを思いましたか?
田村 結構、前々から知っている人だったり、顔見知りがたくさんいたので、楽しみでしたね。いろいろ勉強したいと思いました。
永田 ドラキュラって、誰もが知っているキャラクターじゃないですか。みんなが知っているドラキュラのイメージはもちろんあると思うのですが、今回は三角関係や、ドラキュラになる前の部分も描かれているんです。僕自身がドラキュラ役ということで、脚本をしっかり読んで解釈して、僕だからこそというドラキュラを演じられたらと思いました。
野口 最初、タイトルだけを聞かされたときは、僕もドラキュラ役なのかな?って思ったんです。気付いたら、まさかの女性役(笑)。ちゃんと女性で、若くて、何ならかわいいと言われている女性です。役者として、そんな女性を演じる機会なんて、年齢を考えても今しかない。役者人生の中で、もう二度と無いかもしれないですよね。不安も結構あったんですけど、楽しくやれています。
――ドラキュラ伝説を扱ったお話ですが、脚本で魅力的だと思ったところは?
永田 やっぱり、僕らの三角関係ですね。ドラキュラとはいえ、元は人間。そういうドラマの部分は、とても人間らしいし、魅力的なところだと思います。
田村 脚本を読んだだけの時は気付かなかったんですけど、稽古をしていて思ったことがあるんです。ドラキュラって永遠の命を手に入れて、力としてはものすごく強いんですけど…結局は人間で、すごく脆い。ある意味、僕が演じるハーカーと表裏一体で、重なる部分があるんですよね。僕の役は、まっすぐで、夢を見ていて、目標を持っている男で、ドラキュラは敵対する存在ですけど、ラストには2つの存在が重なって見えたらいいな。2人の存在って紙一重で、もしかしたら違った未来が見えたんじゃないか、とか…そう感じさせてくれる脚本だと気付きました。
野口 結構、脚本にいろいろな要素があるんですよね。コメディ的なところもあるし、ドロドロした三角関係もあって、しっかりお芝居のところもある。それに、結構な人数が死ぬんですよ。生々しいんですよね。そこが難しいんですけど、脚本の魅力でもあるんです。結構、細かくト書きを入れてくださっていて、きちんと解釈しないと表現できないところもあって、それくらいの物量もある。どれくらい表現できるかは、僕ら役者にかかっているので、ワクワクさせられます。
――殺陣など、魅せ方も多彩な舞台になっていると聞きましたが、いかがでしょうか。
永田 みんな、殺陣うまいんですよ。すごく勉強になります。殺陣をやりながらも、お芝居の部分や気持ちの部分もしっかりしていて、こっちもワクワクさせられます。すごくダイナミックで、一観客として観てみたい気持ちになりますね。
田村 僕は日本刀の殺陣はやったことあったんですが、今回初めてソード、両刃の剣で殺陣をやるんです。あと、作中にはレイピアの殺陣もあるんですよ。フェンシングとかも見たりして、普段の殺陣とは全然違うんです。重心が高いんですよ。和物だと重心は低めにとるんですけど、レイピアとか西洋の殺陣は重心が高い。新たな発見というか、自分のキャパシティが広がる感じがしています。面白いですね。刀の歴史を調べてもそれぞれ全然違うし、刀の太さとかでも違ってくる。今回は、短剣の人もいれば、薙刀のような人もいて、いろいろな剣が出てくるので、西洋の殺陣を楽しんでもらえる作品だと思います。
野口 僕はもう、みんながあんなに死に物狂いで殺陣の練習しているのに、自分は何をやっているんだろう…っていう気分です(笑)。僕は、殺陣の経験がないんですよ。そんな僕から見ていても、みんなそれぞれに殺陣の素養があるのがわかるというか…殺陣をやっている人じゃないとできない動きをするんです。だからこそ、場面に説得力があるんですよね。本当に尊敬していますし、うらやましい気持ちもあります。…でも無理だろうなぁ。
――それぞれご自身の役どころで、好きなところはどこですか?
田村 ハーカーはすごく優しい人。人のため、世のために、と考えている人なんですが、後半になるにつれて、それがわからなくなってくる。ミナのために、世界を変えるために、と戦っていたけれど、それが正しいのかわからなくなる。そうやって葛藤する姿、苦しんでいる姿が、むしろいいなと思います。しっかり向き合いたい部分ですね。
永田 ドラキュラって、実は誰よりも人間らしいんですよ。ジャスティナをずっと愛していて、何百年間も愛し続けて…そして、ミナにジャスティナを投影して、暴走してしまう。ある意味、一貫してジャスティナを愛し続けているんです。そういう部分はすごく魅力的なキャラクターですね。
野口 ミナやジャスティナは、良くも悪くも、自分も相手も、関わる人の人生も、自分の人生すらも狂わせてしまうほどの魅力を持っている人。悪いことをしようとしているわけじゃないのに、存在だけで狂わせてしまう。それが意図してやっていることではなく、ある種、彼女の運命であって、生まれ持ったもの。それほどの魅力を持った女性って、そうそういるものじゃない。お客さんにもそう感じてもらえるよう、どう振る舞うかはすごく意識しています。
――役を演じるうえでのこだわりは?
永田 毎日トマトジュースだけ飲んでます!あと八重歯を付けて食事したり…すみません、嘘です(笑)。やっぱりドラキュラは紳士なので、立ち居振る舞いは紳士に。けど、ふとした時に感じられる恐怖の部分や、人間らしさを大切にしたいと思っています。
田村 ハーカーは、いろんな人に影響されて、変わっていく、自分が罪を背負っていくという役。なので、いろんな人の声を聞く、人からもらうものを大事にしていますね。割とどんなお芝居でもそうかもしれません。自家発電じゃなく、みんなから感じたこと、いろんな事件を受け止めて、変わっていけたらと思います。アウトプットよりもインプットに、意識をどんどん集中させたいですね。
野口 今回の役どころで大切にしているのは、誰にも憎まれることのない女性であること。今回、ほかの方は割と複雑なものを抱えた役が多いんです。その中でひとりだけ、ただただ純粋でいるのが、僕の役。純粋に、誰からも認められる女性であることが重要かな、と思っています。やっぱり僕は男性なので…そこを、女性として見えるように、仕草や話し方、手の位置なんかはすごく気を付けていますね。そこを受け入れてもらわないと、話が入ってこないと思うので。結構難しいんですよ。自分の思っている動きとは、違う動き方をするというか。女性らしく動くには、自分の心情とは違う動き方になるんです。そこでお客さんに違和感を持たれないようにしたいですね。
永田 現場でも紅一点の存在でいてくれてます(笑)本当に現場の雰囲気がいいんですよ。男子校っぽい感じで、キワドイ話も飛び交ったり…(笑)
野口 書けないから!(笑)
田村 (笑)。でも、助け合ってるな、って感じますね。実際、稽古期間も短めで、その割に物量が多いんですよ。それぞれに長セリフがあったりね。時間が限られている中、みんながちゃんと準備していることも感じるし、その上でディスカッションもできている。そういうことができるのは、すごくいいですね。
野口 それぞれ自分のやるべきことをやっているし、普段は言えないようなことも言い合えてるよね。自分はこう思うとか、こう見せたいからこうしたいとか。だったらこうしない?っていう提案とか、どうしたらいいかな?っていう問いにもちゃんと返ってくる。ウソが無い現場というか、余計な気を使わなくていい現場ですね。いわゆる年功序列とかよりも、お互いが役者として対面できているのが、すごく居心地がいいです。
――最後に、公演に向けて意気込みをお願いします!
田村 コロナ禍で舞台は、なかなか難しい状況にあります。そんな中でもお越しいただいたお客様には笑顔で帰っていただきたいと思っています。僕たちは1公演1公演を丁寧に積み重ねていきます!
永田 実は升吾とは高校の同級生で、付き合いも長いんです。7年目とかかな?でも升吾とこうやってお互いにぶつかっていくような役は初めてなので、そこは個人的に楽しみにしているところです。それに、こういう状況の中で公演ができることも本当に幸せですし、配信もありますので、ぜひ楽しんでいただきたいです。
野口 こんなに素敵なキャストがそろっていて、そんな素敵なカンパニーの一員になれたことが本当にうれしいです。僕に限らず、みんな普段とは違った一面が見られるとお芝居なんじゃないかと思います。そこは期待して、楽しみにしていただいていいと思います。2時間くらいの時間ではありますが、夢を見てください!頑張ります!
ライター:宮崎新之