NODA・MAP番外公演『THE BEE』 阿部サダヲ インタビュー

「すげーもんを見た!」と思わせたい

 

“報復の連鎖”をテーマにしつつ、筒井康隆の小説『毟りあい』を題材に野田秀樹がユニークかつシニカルに創り上げた舞台『THE BEE』が新キャストで蘇る!2006年にロンドンで英語版を初演して以降、2007年の東京公演では英語版と日本語版を同時上演、これまで世界10カ国14都市で上演し、各地で好評を博した衝撃作だ。日本語版で野田が演じた〈井戸〉役を今回演じるのは阿部サダヲ。2012年の松本公演を観劇した阿部は、野田の楽屋を訪ねて「いつかこの役をやりたい」と伝えたのだという。

阿部「でも9年前だから記憶があいまいで。野田さんは静岡に来たでしょって言うけど、僕が松本に行ったのは間違いなくて(笑)。そこで『すごくカッコイイ、やりたいです』と自分が言った気がしていたけど、野田さんには『オマエやりたいだろ、俺の体が動かなくなったらやらないか?』と言った記憶があるらしい。お互いちょっとずつズレてるんです」


とはいえ、今回改めて台本を読んだときには「記憶していた以上に大変な役でビビった!」と笑う。

阿部「だって、ここまで出ずっぱりだとは。内容はもちろん今、読んでもすごく面白い。躍動感はあるしテンションは高いし。後半部分の気持ちの切り替えとそのスピード感、体力的なことなど、いざ稽古が始まったら驚くことが多いです。さっきも久しぶりにヘアメイクをしてもらったら、頭が凝ってるって言われて。それだけ稽古で頭を使っているんだなあって思いました」


共演は、映画に舞台にと何度も顔を合わせている長澤まさみ、そして阿部とはこれが初共演の川平慈英と河内大和。四人芝居になるわけだが、常に和やかな雰囲気で楽しく稽古ができているとのこと。

阿部「作品自体は重い内容でも、野田さんの現場っていつも明るいんですよ。キャストが変わることでかなり違う印象の作品にはなるだろうけど、意外と台本に忠実な『THE BEE』になる気がします。稽古で野田さんはあまり具体的なことは言わないんですが、台本に書いていないことを解説してくれる。きっと井戸はこの日の昼には会社でこういうことがあったのかも、とか。台本だけではわからないことに、気づかせてもらえるのも面白いです」


油断禁物のストーリー展開、想像力を刺激する小道具や舞台装置の使い方、ハイスピードな会話の応酬……。そんな濃密な演劇空間の中で演じられる、チャーミングと狂気が混在する井戸役は、まさに阿部の真骨頂と言えそうだ。自身も「これは稽古場で稽古着でやる芝居じゃない。つまり本気で集中しないと演じられない気がします」と語る。

阿部「とは言え約70分の作品ですからね。長時間稽古してるとみんな疲れちゃうし(笑)。だけど最近は時勢のこともあって舞台作品から遠ざかっていた方も多いでしょうし、役者をこんなに近くで見られて声が聞けるというのも皆さん久しぶりなんじゃないかな。ナマの声ってパワーがあると思うんです。僕もNODA・MAPを初めて観たとき、ナマ声のすごさを感じましたから。そもそも『THE BEE』は、伝説的なものすごい作品。僕も観てそう思ったので、『井戸役をやりたい』と言ってくる役者が現れるように頑張りたい(笑)。ぜひとも『すげーもんを見た!』と思わせたいですね!!」

 

インタビュー・文/田中里津子
Photo/篠塚ようこ
スタイリスト/チヨ
ヘアメイク/中山知美

 

※構成/月刊ローチケ編集部 11月15日号より転載
※写真は誌面とは異なります

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【プロフィール】
阿部サダヲ
■アベ サダヲ ’70年生まれ。’92年より大人計画に参加。数多くの舞台、テレビドラマ、映画に出演。主演映画「死刑にいたる病」が’22年公開予定。