舞台「フランケンシュタイン-cry for the moon-」七海ひろき×岐洲匠×彩凪翔 鼎談

【左から】彩凪翔、七海ひろき、岐洲匠

さまざまな作品の題材となり、世界中で愛される『フランケンシュタイン』を、錦織一清の演出、岡本貴也の脚本で舞台化する「フランケンシュタイン-cry for the moon-」が2022年1月7日(金)から東京、1月20日(木)から大阪にて上演される。

主演で【怪物】を演じる七海ひろき、怪物を誕生させた科学者【ビクター・フランケンシュタイン】を演じる岐洲匠、怪物と心を通わせる盲目の娘【アガサ】を演じる彩凪翔に話を聞いた。

 

――原作の『フランケンシュタイン』という小説は世界中でさまざまな物語にアレンジされていますが、どのようなイメージがありますか?

七海 私はこれまで原作をきちんと読んだことがなかったので、最初は「頭にボルトが刺さっている」みたいなイメージしかなくて。でも読んでみたら全然違っていました。人間模様や、人間の良い部分、悪い部分、光と影、というようなものが描かれた作品なのだとわかったので、舞台ではそういうものを表現していけたらなと思っています。

彩凪 私、実は“フランケンシュタイン”を、カイさん(七海)が演じる怪物の名前だと思っていました。

七海 私も!(笑)

岐洲 僕もです。きっと世界の8~9割の方が怪物の名前だと思っているはず(笑)。

 

――怪物を生み出した創造主の名前が“フランケンシュタイン”なんですよね。

彩凪 そこからもう混乱していました(笑)。この作品では、いろんなカタチの愛や純粋さに触れられるんじゃないかなと思っています。

岐洲 僕は昨日、『メアリーの総て』(‘18年)という、『フランケンシュタイン』の作者であるメアリー・シェリーさんの伝記映画を観て、人間の生々しい愛や苦しみからつくられた作品なんだとわかりました。しかもメアリーさんは18歳でそれを書かれているんですよ。「僕、大丈夫かな」と不安になってきました。

 

――不安に?なぜですか?

岐洲 18歳の僕はゲームばかりしていたので(笑)。そんな自分がビクター・フランケンシュタインを演じることに緊張しています。

 

――今回どんな作品になりそうですか?
  
七海 まだ、あらすじくらいしか知らないのですが、主軸は原作に沿うけれど、オリジナルの部分もある作品になりそうです。

岐洲 ピュアな心を持った登場人物が多いと思います。それぞれまっすぐで、だからそのぶん違う方向を向いてしまうこともある、というような感じで。

七海 お互いが純粋に思っているからこそぶつかり合うんですよね。今わかっているのはそのくらいかな。

 

――ご自身が演じる役にはどんな印象がありますか?

七海 私が演じる、ビクター・フランケンシュタイン(岐洲)がつくった「怪物」は愛や本当の心、寂しさ、怖さなど、“理解できない感情”があって。様々な人たちと関わって、感情を重ね合わせていく中で、怪物としての成長を表していけたらいいなと思っています。本当に登場人物みんなが純粋ですし、怪物もそうなので。だからこそ切なかったり、かわいそうだったり、ピュアなところも、表現したいです。

岐洲 僕が演じるビクターは研究が大好きな科学者で、まっすぐな人です。自分が怪物を生み出したことには、実験成功という喜びもあるけれど、「これからどうなるんだろう」という不安もあって。だけど怪物と関わるうちに本当の家族のようにも感じて……。彼のピュアさは、ピュアすぎて怖くなるくらいだなと感じますが、自分としてはこれまで演じたことのない役なので、挑戦だと思っています。今からすごく楽しみです。

彩凪 私が演じるアガサは盲目で、視覚的なものにとらわれずに怪物の内面を感じ取って心を通わせることができる役です。目が見える人には感じ取れないものを感じ取れるような人だと思っています。あとは慣れない女性の動きを……。

 

――彩凪さんは今年宝塚歌劇団を退団されたばかりで、長く男役として活躍されていたので、これが退団後初の女性役ですよね。ただ、在団中も女性役は演じられています。その時はいかがでしたか?

彩凪 (七海に)どうでしたか?(笑)

七海 (笑)。私は在団中の姿を見ているので、なんの心配もないと思っています。翔ちゃんは「あの時の役は仕事に生きる女性で、今回はピュアな感じの女性役なので……」というふうに言っていましたが、私としては「大丈夫です!皆さん楽しみにしていてください!」と断言します!

彩凪 本番までにはがんばります、と思っています!

岐洲 僕は稽古場でおふたりに男性のカッコいい仕草とか、いろいろ聞きたいなと思っています。よろしくお願いします!

七海・彩凪 いやいやいや!

岐洲 おふたりは“男上級者”ですから。もし男性を極める「攻略本」みたいなものがあったら、【応用編】を修得されている方だと思うんです。だから僕もがんばらないと。

七海 作品のビジュアル撮影の時、カッコよかったですよ。

岐洲 いや、あれは胸を張っていただけなので……(笑)。

 

――このまま皆さんのお互いの印象をうかがいたいです。

岐洲 ……応用編だ!って。

七海 まとめたね!(笑)岐洲さんは、すごくシュッとした好青年という感じ。

岐洲 あの時はがんばってたんです。

七海 このビジュアルの衣裳はなかなか着こなせるものじゃないから!

彩凪 すごかったですよね。

 

――その視点が既に応用編かもしれない(笑)。

一同 (笑)。

七海 でも衣裳を見た時、「これ、どういう感じで着るのかな」と思ったんですよ。

彩凪 身長があるから似合うんですよね。

岐洲 身長のことは、初めてお会いした日におふたりそれぞれに言われました。「身長、高いですね」って。実は今日も、おふたりから「なんて呼ばれていますか?」って同じことを質問されました。

七海・彩凪 あはは!

岐洲 シンクロしていて、すごいんですよ。

 

――そんなシンクロした七海さんと彩凪さんの印象は。

七海 私たちは同じ宝塚歌劇団出身ではありますが、在団中は組が違ったのであまり関わっていなくて。客席から見てすごくカッコいいなと思っていました。でも、今回のポスター撮影や今日の取材で知った部分があって、私が見ていた“彩凪翔さま”とはまた違う、かわいらしい部分ややさしさを感じています。このお稽古でもっと知っていけたら嬉しいなと思っているところです。

彩凪 私も男役として舞台に立たれているカイさんを拝見していました。カッコいいというのももちろんですが、内面もやさしいんですよ、内面がめっちゃジェントルマンだと思います。それに、退団後もいろんなことにチャレンジされている姿に刺激を受けていますし、自分もいろんなことに挑戦していいんだなと思えました。

七海 すごくよく言ってくれてる。褒められすぎて、ありがとうございます。

岐洲 Twitterもほぼ毎日ツイートされてますよね。それを見て、僕も「マメで丁寧でジェントルマンだな」と思いました。

七海 見てくれてありがとう。私も岐洲さんのTwitterもInstagramも見ています。

彩凪 私も見てます!

岐洲 ありがとうございます!

七海 今日、岐洲さんといろいろお話して、すごく頼もしいと思いました。

岐洲 どこがですか(笑)。

七海 とても話しやすいし、意見もしっかりしてらっしゃるから。どんな感じの方なんだろうとドキドキしていたんですけど。

岐洲 がんばってるだけです!(笑)

七海 今作はもう「もろたな!」と思っています。

彩凪 もろた!

七海 このメンバーで舞台「フランケンシュタイン」をつくっていけるなって思えたので、よかったです。

岐洲 ありがたいです。

 

――では最後に、現時点での皆さんの作品への気持ちをお聞かせください。

彩凪 この作品から純粋な何かを感じ取って、明日への活力にしていただけたらと思います。個人的には、今年いっぱいはまだディナーショーなどで男役として少しステージに立っているのですが、年明けからガラッと女性役が続くことになります。だからこれがいろんな意味で転機の作品になりますので、楽しみだし、バタバタすると思います(笑)。来年年明け、みんなで頑張りたいです。

岐洲 先日、ドラマの現場で占い師の方に占ってもらう機会があったのですが、今僕はちょっとずつ運気が上がっていて、来年ぐんと上がると言われたんです。だからこの作品を、いいスタートにしたいです(笑)。僕自身、舞台はまだまだ経験不足ですが、今作で大きく成長した姿を皆さんにお見せしたいですし、愛を知れる作品だと思うので、できるだけたくさんの方に届けたいです。

七海 この作品は年の初めの公演になりますので、観に来て、「今年もいい年にしよう」、「観てよかったな」と思ってもらえるようなものにしたいです。舞台は一人でできるものではなく、みんなが一緒につくってくださるからこそできるものだと思うので、一人ひとりがキラキラして輝ける舞台にできるよう、がんばりたいです。

 

ライター:中川實穗