ミュージカル「フランケンシュタイン」ファン感謝祭イベントレポート

ミュージカル「フランケンシュタイン」のファン感謝祭イベントが、7月29日(月)に都内にて開催された。

誰もが知っているゴシックロマンの名著「フランケンシュタイン」を、大胆なストーリー解釈と流麗にしてメロディアスな音楽でミュージカル化した本作。メインキャスト全員が一人二役を演じるというトリッキーな演劇的作劇も相まって、2017年の日本初演では熱狂的な支持を持って迎えられたグランドミュージカルが、2020年に待望の再演決定!約2,000通の応募から抽選で選ばれた150人のファンを迎え、キャスト陣がトークを繰り広げた。

 

イベントには、科学者ビクター・フランケンシュタイン/闘技場の主人ジャックをWキャストで演じる中川晃教と柿澤勇人、ビクターの親友アンリ・デュプレ/ビクターによって生み出された怪物をWキャストで演じる加藤和樹と小西遼生のキャスト陣のほか、潤色・演出の板垣恭一が登壇。東宝演劇部・篠崎勇己プロデューサーの司会のもと、2017年の初演時の思い出や2020年の再演に向けての意気込みを語った。

中川は「初演で記者会見をやらせて頂いた時に、超緊張していて。その時、『偉大なる生命創造の歴史が始まる』を歌ったんですよね。あの時の事を考えると、よくやり遂げて、しかもこうして再演というところまでたどり着けたなあと思います」と感慨深げに語る。

その言葉に対し、柿澤が「え、アッキーさん緊張してたんですか?!その割には、相当最後のロングトーン伸ばしてて!『ここで切ろう』って一緒に決めたところ以上に伸ばすから、俺はどうしようかと思ったんですよ!」と驚きの表情。中川は、「ごめん、俺の自由なところが出ちゃった(笑)」と会場の笑いを誘った。

対して、アンリ/怪物を演じる加藤は「本番が大変でしたよ!鎖が冷たくて」と笑いまじりに主張。それに同調するように、小西も「素肌に汗のシャワーを浴びてね……」と。「涙なのか汗なのか鼻水なのか……(笑)。それくらいいろんな感情が溢れていましたね」と、舞台上での思い出を語った。

メインキャスト全員が一幕と二幕で二役を演じるという特色について、中川は「一つの作品の中で二役を演じる『フランケンシュタイン』は、俳優にとってもどの作品とも違う作品だと思います。お客さんにとっても、二つの顔をどう演じるのかという俳優のチャレンジも含めて楽しんでいただける。さらにそれを、4通りの組み合わせで楽しんで頂けるということが、この作品の盛り上がりの一つの要因になったのでは」と分析。

二つの役を演じることについて、柿澤も、「一方では“新しい生命を創造して世界を変えていく”という一本筋の通った役、一方では“怪物を虐げる闘技場の主人”の役、という180度違うキャラクターを演じるので、カロリー的には相当しんどかったです。でも、全く違う役を演じるからなのか、不思議と楽しくやれましたね」と回想。さらに、公演中の印象的な出来事として、「大竹しのぶさんが見に来てくださった時に、『カッキー、一幕結構出てたね~。でも二幕はあんまり出てこなかったよね~』と言われて。『あれ(ジャック)、俺だよ』と言ったら、『え、嘘でしょ?!』って驚かれたんです」とエピソードを披露。「『この役者さん誰なんだろう~ってずっと思ってた』と言われて、嬉しいのか悲しいのか……。でも、それくらい振り切ってやれていたのだと思います」とコメントした。

アンリと怪物の二役の加藤は、「完全に別な人間ではないので、アンリという人格をどこまで怪物の中に埋め込むか、というバランスは難しくもありましたね。根底にアンリがあるからこそ、ビクターに対して執着する意思や意味、というものが怪物の中にはあって。精神的より肉体的にかなり辛くて、その中から生まれてくる感情もありましたね」と語った。

さらに小西は、「唯一繋がっているところがある二役なので、計算して作れる部分は他の人よりもあるなと思いました」と当時を振り返る。「この作品において怪物という役は自由度が高い役ではありますが、原作で描かれている“生まれてきたもののおぞましさ”という部分を抱えていないといけないと思ったので、その怪物の“おぞましさ”を出すために、対比としていかにアンリを清廉に作り上げていくか。そういった匙加減については、作りやすい役だなと感じましたね」と回想した。

 

トークは、怪物の「クマ、おいしい」というセリフが話題となり、“熊カレー”が急遽発売されたという初演時のエピソードに発展。篠崎プロデューサーの「せっかくなんで、今日食べてみますか?」という言葉と共に熊カレーが運ばれてくると、「え?!」「本当に出てきた!」と会場は大盛り上がり。登壇者たちが熊カレーを頬張り、「ちょっと甘めですね」「美味しい!」「クマの肉はちょっと固い」と口々に感想を述べる。「僕の、肉入ってないんですけど!」という小西の言葉に、「それはただのカレーです(笑)」とツッコミが飛ぶ一幕もあった。

トークセッションが終わると、今回の再演にて初参加となる露崎春女が、劇中歌「その日に私が」を披露する場面も。露崎は「初めて出演するミュージカルがこんなに素晴らしい作品で嬉しいです。そして、素晴らしいキャストの皆さんとご一緒にできることを、とても楽しみにしています」とコメントした。

 

最後に中川が「誰一人欠けても成立し得ない『フランケンシュタイン』という作品を、新たなキャストを迎えて、皆さんにお届けできるということが嬉しいです。たくさんのお客さんに足を運んでいただいて、ミュージカルの魅力、エンターテイメントの魅力、そして僕たちの魅力がしっかりと伝わる再演となるように、チームワークでかんばっていきます!」と力強い言葉でイベントを締めくくった。

 

公演は2020年1月8日から30日まで東京・日生劇場にて。2月14日から16日まで愛知・愛知県芸術劇場 大ホール、2月20日から24日まで大阪・梅田芸術劇場メインホールでも上演される。

 

 

【2017年初演より】写真提供/東宝演劇部

文・写真/ローチケ演劇部員