野村萬斎、戯曲リーディング『ハムレット』より、2月に上演!

2022.01.07

世田谷パブリックシアターを約20年にわたり牽引してきた芸術監督・野村萬斎
古典劇と現代劇の融合に取り組み、数々のシェイクスピア作品もその視点で上演してきた萬斎が自身のターニングポイントともなった名作『ハムレット』を戯曲リーディングとして立ち上げる

2002年より、芸術監督として世田谷パブリックシアターを牽引してきた野村萬斎。2022年3月末日をもって同芸術監督を退任する萬斎により、2月に実施する『MANSAI◉解体新書 その参拾弐 完「檄」~初心不可忘~』に続き、戯曲リーディング『ハムレット』より を上演することになった。

これまでにも萬斎は、世田谷パブリックシアター芸術監督就任記念公演としても上演された、『間違いの喜劇』を翻案した『まちがいの狂言』にはじまり、『リチャード三世』を翻案した『国盗人』―W.シェイクスピア「リチャード三世」より―や、国内外で上演された『マクベス』、戯曲リーディング公演として実施した『アテネのタイモン』などのシェイクスピア作品において、自身が狂言師である特徴を存分に活かしながら、古典と現代劇の融合に取り組み、独自の視点で作品を立ち上げてきた。

今回の「戯曲リーディング『ハムレット』より」も萬斎ならではの解釈と構成で、『ハムレット』の中でも特に有名な台詞「To be, or not to be,(生か 死か)」に象徴される「二律背反」をキーワードに捉えることで、ハムレットのアイデンティティーを追求していく視点から、萬斎版『ハムレット』が届けられる予定だ。

 

 

野村萬斎とシェイクスピア

萬斎とシェイクスピアの縁は深く、最初にシェイクスピア作品に触れるきっかけとなったのが1985年公開の映画「乱」(監督:黒澤明)への出演であった。『リア王』をベースに、背景を戦国時代に置き換えた本作は能・狂言の手法も取り入れ、狂言は父・野村万作が指導し、萬斎(出演当時は野村武司)は盲目の少年・鶴丸役を演じた。

1990年、24歳にして東京グローブ座『ハムレット』(演出:渡邊守章)で、タイトルロールであるハムレット役に抜擢された。狂言師・野村萬斎(出演当時は野村武司)にとって初の翻訳劇への本格挑戦となった『ハムレット』で、シェイクスピア作品の真髄に魅了されると共に、韻律や語りの技法のほか、数百年を超える普遍性、四角形の舞台(能舞台及びロンドン・グローブ座)での上演形態など、狂言との親和性を見出した。また、1993年には東京グローブ座『テンペスト』(演出:ロベール・ルパージュ)にエアリエル役の出演も果たした。

1994年、曾祖父・五世野村万造の隠居名「萬斎」を襲名。同年、文化庁芸術家在外研修制度によりイギリス留学を果たす。ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー等で舞台演出を学んだ経験が、狂言師のみならず“演出家・野村萬斎”の誕生へと繋がることとなる。

さらには、新作狂言・舞台にも精力的に挑戦していく。その中の一つがシェイクスピア『ウィンザーの陽気な女房たち』を翻案とした『法螺侍』(脚本:高橋康也 演出:野村万作)で、2021年には初めて主役・洞田助右衛門(原作ではフォルスタッフ)を演じた。また、2001年からは『間違いの喜劇』翻案の『まちがいの狂言』を演出・出演。シェイクスピアの本拠地であるロンドン・グローブ座でも上演するに至った。

2002年、世田谷パブリックシアター芸術監督に就任。就任記念公演として『まちがいの狂言』を演出・出演するほか、現代劇の演出・出演にも果敢に取り組む。就任翌年の2003年には、再び『ハムレット』(演出:ジョナサン・ケント、企画制作:ホリプロ/世田谷パブリックシアター)にタイトルロールで出演。世田谷パブリックシアターのみならずシェイクスピアの本拠地・イギリスでも上演され、話題を呼んだ。

2007年、世田谷パブリックシアター開場10周年記念プログラムとして、『リチャード三世』を翻案した舞台『国盗人』―W.シェイクスピア「リチャード三世」より―に演出・主演。舞台を15世紀のイギリスから日本に置き換え、狂言師の技法を駆使した演出が注目を浴びると共に、狂言では存在しない悪を司るキャラクター(悪三郎、原作ではリチャード三世)で演技力の幅を広げ、好評を博した。

2008年のシアタートラムでのドラマ・リーディング公演を経て、2010年には『マクベス』を構成・演出・主演。能の囃子を導入するなど、能楽に精通した萬斎ならではの『マクベス』を創り上げた。2013年、2014年の再演を経て、シェイクスピア没後400年の2016年にも上演。世田谷パブリックシアターのみならず国内外での上演を果たした。
2019年には戯曲リーディング『アテネのタイモン』を演出・出演。自身も参画する、野村万作を中心に公演を行う「万作の会」の狂言師がシェイクスピアに挑むという挑戦的な公演となった。

 

物語

父である先王の亡霊から死の経緯を知らされたハムレットは、その死を仕組んだ叔父クローディアスへの復讐を誓い狂気を装う。この復讐計画により、ハムレットを慕うオフィーリアや、王妃となった母親ガートルードをはじめ、彼の周りの人々は運命を狂わされていく。