Takayuki Suzui Project OOPARTS Vol.6「D-river」(ドライバー) 鈴井貴之 インタビュー

目指すは抱腹絶倒。
ミスターの最新作はAIの物語。

 

鈴井「僕が目指しているのは“抱腹絶倒”。特に今はコロナ禍ですから。そんな中でわざわざ劇場に足を運んでくださる皆さんには、笑って、少しでも幸せな気持ちや、明日からがんばってみようかなという気持ちになっていただきたいです」


そう話すのは鈴井貴之。テレビ番組「水曜どうでしょう」(HTB)の“ミスター”やオフィスキューの“会長”としてもお馴染みの人物だ。「OOPARTS(オーパーツ)」は、その鈴井によるプロジェクト。作・演出・出演として舞台作品を手がけており、第6弾となる『D-river(ドライバー)』は、人間とAI(人工知能)の共存をテーマにした物語になるという。

鈴井「AIって今や生活のあらゆるところに組み込まれていますよね。家電やスマホもそうだし、将棋に使われていたりもして。その中でも車の自動運転は今、“アシスト“というカタチで日々進化していますが、いつか完全な自動運転が採用されたら一体どうなるんだろうってことを考えたんです。すごく便利になる一方で、社会がガラッと変わって、必要とされなくなる職業が出てきたり、大きな影響があるだろうと想像していて。そしたらふと、懐疑的になったんですよ。実はもう自動運転の技術は完成しているけど、政治的な背景があって世に出ていないだけでは!?って。そういう空想を進めていったのが、この『D-river』の物語です」


物語を動かしていくのは、あるミッションを遂行するため集められた中年男3人。何をするのかもわからないまま用意された自動車に乗るも、1人はペーパードライバー、1人は免停中、もう1人は免許すら持っていないという。しかも、3人のうち1人はその命題を実証するためのロボットで――というあらすじからはやや硬い印象も受けるが。

鈴井「冒頭から支給された制服の取り合いで揉めます(笑)。『赤は主役の色だからそれを着るのは自分だ!』とかそういう馬鹿馬鹿しいことで……。そんな感じの話です(笑)。ロボットが出てくるからと言って『ターミネーター』みたいなものを想像されると全然違います。だってこの面子の中に、AIを搭載したロボットがいるんですよ?(笑)」


その面子というのは、渡辺いっけい、温水洋一、田中要次、竹井亮介、大内厚雄、舟木健、藤村忠寿、そして鈴井という魅力的な男性キャストたち。

鈴井「おじさん大集合になりました(笑)。皆さん、このOOPARTSだったり、他の現場でご一緒させていただいた方ばかり。50歳を過ぎた方も多いけど、皆さん中身は中学生だと思っています(笑)。他の現場では大人の顔をしていると思いますが、この現場ではそれをやらなくていいようにしたい。一人がバカをやり始めたら『俺も……』という人ばかりなので(笑)。いい大人が何やってんの!?というものになると思います」


その中で鈴井自身は、どんな役柄を演じるのか。

鈴井「僕は今回、自分がやりたい役をやります。すっごい嫌なヤツの役(笑)。最近いい人ぶりすぎているから(笑)、そろそろ嫌なヤツをね。十八番をやりたいです。楽しみです。台詞量も今までで一番多い予定なんですよ」


約2年半ぶりのOOPARTS公演。その間にコロナ禍となってしまったが、何か影響はあったかと尋ねてみると、「自覚はないですが、影響は受けているでしょうね。全世界の人たちがそうだと思う。価値観が変わったと思うので」と鈴井。しかしその先に続いた言葉の前向きさは心に残った。

鈴井「いろいろなことで、『こうじゃなくてもいいんだ』『こういうやり方もあるんだ』ということを知ることができた。だってまさか会社に行かなくても仕事ができるなんてね。いろんな概念が覆されたこの2年だったので、そういう影響は受けていると思います」


今、鈴井には作品をつくるにあたって見習いたい存在がいるという。

鈴井「日本ハムの新庄剛志監督。ビッグボスみたいな芝居をつくりたいです!」


その心は!?

鈴井「新庄監督のパフォーマンスって表面上はすごく楽しいじゃないですか。だけど深いところではちゃんと信念がある方ですから。この作品も実は、人間はAIを最後まで信用して受け入れられるのかがテーマになっています。人間ってすごく勝手で、例えば地球環境だって、人間が好きなように破壊していろんな問題が起きている。そういう疑問も、深いところでは提示していくつもりです。だけどそれはだいぶ深いところの話で、表面上はバカやっているので。ぜひ楽しんでいただきたいです」

 

インタビュー・文/中川實穗
Photo/篠塚ようこ

ヘアメイク/横山雷志郎(Yolken)
スタイリング/村留利弘(Yolken)

 

※構成/月刊ローチケ編集部 1月15日号より転載
※写真は誌面とは異なります。

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【プロフィール】
鈴井貴之
■スズイ タカユキ ’62年生まれ。北海道出身。地元の北海道を拠点にタレント、構成作家、映画監督など幅広く活躍。