和田琢磨、大平峻也 インタビュー|舞台『サザエさん』

長谷川町子原作の国民的人気作「サザエさん」。2019年に“10年後”の磯野家として舞台化されたが、今回はそこからさらに数年を経た磯野家が描かれる。キャストには、サザエさん役の藤原紀香をはじめ、葛山信吾、高橋惠子、松平健、大平峻也、酒井敏也らが続投、和田琢磨、本間日陽(NGT48)が新キャストとして参加する。今回新たにカツオを演じる和田、引き続きタラちゃんを演じる大平に、作品に臨む想いを語ってもらった。

 

――まずは今回の出演が決まったときのお気持ちを教えてください。

和田 知らない人がいないくらいの知名度があるサザエさんの作品に携わることができて、しかもカツオ君の役。とても光栄でしたし、嬉しさはもちろん、同時に皆さんが想像しやすい作品ですから、イメージを壊さないように、かつ舞台ならではの楽しさを伝えるにはどうしたらいいかな、と考えました。どうしたら気に入ってもらえるか、受け入れてもらえるかに、意識が向かいましたね。それくらいプレッシャーはありました。

大平 僕は前回に引き続き、続投と言う形でタラちゃんを演じさせていただくんですが、「荒牧さん(前回カツオ役)、いないじゃん!」って思いました(笑)。

和田 そこは俺でいいじゃねーかよ(笑)

大平 いや、前回は藤原紀香さんをはじめ、今までは関わらせていただくことが無かった方々の中に、2.5次元俳優として荒牧さんと2人で入っていったんですね。だから一蓮托生というか、一緒に何かあったらあいさつ回りとかしようね、とか兄弟のように過ごさせていただいていたので…。でも今回はカツオ君役が和田琢磨くん、まぁたっくんに変わるということで。たっくんは、僕が初めて出させていただいたミュージカルが「テニスの王子様」なんですけど、その時の部長だったので、それこそお兄ちゃんみたいな存在。そういう意味で、たっくんがカツオ君というのはストンと腑に落ちるところはありました。

和田 で、どっちがいいの?荒牧と(笑)

大平 それは知らないよ!これからでしょ!…いやでも、荒牧さんはいい兄ちゃんだったな~(笑)

和田 こえー(笑)

 

――本当に国民的キャラクターで、さらにそこから成長した役どころですが、今の時点ではどんなふうに捉えていますか?

大平 前回、演出の田村孝裕さんからは、タラちゃんが一番成長の幅が大きいって言われました。やっぱり3歳から中学生くらいになるって成長としてすごく大きいじゃないですか。原作だとサザエさんに注意されて小屋にお仕置き的時に閉じ込められた時、強い口調で言い返していたこともあるので、どう成長するのかな?と思っていたんです。でも、台本をいただいたら真面目でいい子でした。愛のある家庭で育ったから、あの愛を受け継いで育った子なんだな、と感じましたね。脚本はまだなんですが、多分、今回もまっすぐに育っていると思うので、しっかりと愛を受け継いでいきたいと思います。聞くところによると、どうやら高校生になっているらしいので今回の台本も楽しみです。

和田 カツオ君の場合は、前回の荒牧君が演じていた役どころが就活中の大学生。前回の作品を映像で拝見しているんですが、登場人物がひとりで成り立っているというよりも、磯野家全体でそれぞれひとりずつのキャラクターを作っているような感じがすごくあって。サザエさんだけが中心なんじゃなくて、タラちゃんが中心に見えるときもあるし、カツオ君が中心に見える瞬間もある。何か支え合っているように見えるのが磯野家だと思うので、自分で役を作っていくというよりは、周りの方々と一緒に作っていくようなイメージでいます。掛け合いの太さ、みたいなものをすごく感じました。

 

――前回の稽古場はどんな雰囲気だったんですか?

大平 すごく良かったです!ギクシャクした感じもなく、僕らからしたら松平健さんも高橋惠子さんも小さいころから見ていた役者さんですから始めはすごく緊張するかなと思ったんですが、藤原紀香さんに最初にご挨拶させていただいた時、「サザエでございま~す」って気さくに言ってくださって。稽古自体も、空気よく保ってくださるというか、稽古場から家族を作り上げようとしてくださっていた感じなんです。それが見えたので、すごく入りやすかったですし、お芝居の上でもすごくやりやすい環境でした。

和田 僕はまだ誰もお会いしていないんですね。一度作品が出来上がってから、そこに入っていくのはなかなか勇気がいるんですけども、そこは峻也くんにおんぶに抱っこで(笑)。ずっと後ろをついていきます

大平 いやいや、そこは兄ちゃんなんで(笑)

和田 過去にも、出来上がっているところに後から入っていったことはあるんですけど、やっぱりこう、躊躇してしまう部分もあったりしたので。その経験を経た自分としては、今回はしっかりコミュニケーションを取っていきたいですね。なるべく早くみなさんになじめるようにしたいです。

大平 でも、シゲちゃん(山口森広)は知り合いなんだよね? じゃあ大丈夫だよ!シゲちゃんってサブちゃん役の方なんですけど、シゲちゃんとしゃべってみんなと繋がれたから、シゲちゃんがいれば大丈夫!

和田 そうなんだ!じゃあよかった~(笑)

大平 とにかくコミュニケーション能力が高くて。博多座公演の時、楽屋が隣だったんですけど、間のふすまを全部取っ払って、ずっとシゲさんと居ました(笑)

和田 普段、今回のような先輩方とご一緒できる機会がなかなかないので、そこはすごく楽しみですね。あわよくば、松平健さんに殺陣を教えてもらいたいです。そんなシーンは無いですけど。

大平 俺も前回、同じこと言ってたー!やっぱり殺陣、できたら幸せですよね。

 

――明治座という劇場についてはどういう印象ですか?

和田 今回の「サザエさん」で3回目になります。1回目の時は、花道をタタッと走って、あと3mくらいでハケられるというところで転んだんですよね(笑)。2回目は座長として立たせていただいた時も本番中にちょっとトラブルが発生したんです。芝居は止めずに済んだんですけどね。明治座はいつも、舞台に立つ試練を与えてくれる劇場なので、3度目の正直で何事もなく終えられたらと思います。

大平 なんか怖いんだけど!何事もないのが一番。なるべくシーンが被らないように…(笑)。僕は前回の「サザエさん」でだけ立たせていただいたんですけど、客層がバラバラというかご年配の方もいますし、アイドルのファンの方や2.5次元ファンの方とか、老若男女バラバラだったので、すごく不思議な感覚でした。休憩中にご飯がいただけたりするのもいいですよね。僕もお客さんとして明治座で食べてみたいと思いました。

 

――「サザエさん」が国民的作品として愛されているのはなぜだと思いますか?

和田 さっきも少し話しましたが、その瞬間瞬間で、誰かを中心に回っている。必ずしも波平さんがいつも中心にいるわけじゃないし、カツオくんがかき回すこともあったり、タラちゃんの何かうまくいかないことをみんなで応援したり、ひとりひとりが立つ瞬間がある。それがすごくリアルなので、自分の日常生活に重ねられる瞬間が多いんじゃないでしょうか。

大平 僕は、すごく大きな事件が起こらないことがすごく魅力的だと思います。舞台ではちょっと大きなことがあったりしますけど、アニメでは些細なことが家族にとっては大きなことだった、っていうイメージなんですよね。何かあったときに、家族が一丸になって考えるというか、そういう温かさをすごく感じます。アニメも時間帯もいいですよね。家族が集まる時間帯なので、共感できるところも多くなるんじゃないかな。

 

――お2人は「テニスの王子様」で共演されていますが、当時のメンバーには特別な絆がある印象です。

和田 年に1回は、「テニスの王子様」の青学チームで集まるようにしてて。39会って言って、3月9日近辺に日頃の感謝を…っていうとすごく真面目な軍団みたいですけど(笑)。まぁそういう理由付けをして集まってます。不思議とかれこれ10年くらい経ちますけど、集まるとその時の雰囲気に戻るんですよね。それこそ「サザエさん」の家族じゃないですけど、ひとりひとりに役割があって――例え俳優を辞めて、タクシーの運転手になっていようが、沖縄でさとうきび畑を作ってようが、こうやって集まれることが理想だね、ってよく話しています。そういう部分では、仕事がどうとかはあまり気にしていないんですよね。でも、みんなすごく活躍してるからビックリする(笑)

大平 僕はもう、追いつかなきゃ!と思ってすごく仕事は意識していました。たっくんは今、何をしているのかな?とかすごく考えますし、ほかのメンバーも何をしているかな、と気になります。でも、たっくんの良さは本当にさっき言ってたようなことなんですよね。「テニスの王子様」に出演したとき、たっくんたちはレギュラー陣で、僕はレギュラーじゃなく1年生でみんなを応援する役だったんです。楽屋も同じ学校だけど別々になっちゃうこととかもあったんですね。そういうところに疎外感を感じたりもしていたんですけど、たっくんに相談したら真っ先に制作さんに、彼らも青学っていう同じ学校のメンバーだから一緒の楽屋に居させてほしいって言ってくれたんです。それが16歳の僕にはすごく刺さりました。たっくんが部長と言う立場で、それがたっくんだったからこそ、今でも会いたいと思えるメンバーたち、家族みたいな関係になれたんじゃないか思います。だからこそ僕は、ほかのメンバーの仕事を見て、僕も頑張らなきゃっていう気持ちになりましたね。追いつかなきゃ、って。それは今もそうですけど。

和田 ぜひ、太字で書いておいてください(笑)。でも、当時のことはよく覚えていますよ。自分も役者として、いい役ばかりじゃなかったですから、悔しさももちろん知っています。でも、だからって主役が一番偉いとかでもないですから。せっかく学生の群像モノなんだから、部活みたいに仲良くなれたらいいなと思ったんですよね。彼らは高校生とか中学生とかでしたけど、僕はもう当時、そういう青春期は終えていたので…こういう部活だったらいいな、みたいなものを、そのまま提案させてもらっただけなんですよね。…ここも太字でお願いします(笑)

大平 (笑)。でも、本当にありがたかったです。

 

――原作があるもの、特に2.5次元はアニメや漫画が原作になることが多いですが、どのように役作りされるんですか?

和田 漫画原作の時は、コマとコマの間も必ず動きがあるので、その間に何があるかをすごく意識していますね。そのコマの前後にも必ず人間は動いているので、そこで何をしているかは舞台の上でもすごく重要かな、と思っています。

大平 僕はまず、お客さんに近い状態で、フラットな、無知な状態で原作の漫画やアニメを観て、自分が演じるキャラクターの印象がどうなのか確認します。やっぱり原作モノって、それぞれの頭の中に解釈があるものなので、エゴサーチもめちゃくちゃします。それで、自分が得た感覚と、その人たちの感覚を照らし合わせて、どこに進んでいこうかな、と考えていく感じですね。そこに向かっていきつつ、台本をいただいて、そこから外れていく部分も面白いところだと思うし、そういうついに動いた感情みたいなものが2.5次元にする意味だと思いますね。

 

――2022年、役者としてどんなふうになりたいですか?

和田 日々、ハラハラしていますよ(笑)。2022年は「サザエさん」で始められるので、勝手に縁起が良いと思っているんですけど。その次の作品も明治座でやらせていただけるので、毎年明治座に呼んでいただけるように頑張っていきたいですね。

大平 スゴイ!いいなぁ。役者としてのスキルアップは常に考えていかなきゃいけないですし、引き続き吸収できるようにしていかなきゃと思います。2022年は、割とスケジュールが埋まっているので、健康とかトラブルを起こさないように気を付けたいと思います。炎上なんかしないように(笑)

和田 うん!それは大事だ!(笑)

大平 そして、天狗にならないように。ある方から「自分の人気と、キャラの人気はまた別のものだよ」って言われたことがあって、すごく覚えているんです。いくら売れたとしても、そういう風に生きていきたいですね。

 

――最後に、公演を楽しみにしている方にメッセージをお願いします!

大平 今回、カツオ兄ちゃんとワカメお姉ちゃんが2019年からキャスト変更になりますが、だからと言って家族が崩れることなく、また少し違ったサザエさん一家として楽しんでいただけるようになると思います。藤原紀香さんがそういう温かい方ですから、紀香さんを筆頭にそういう方向に向かっていくはず。自分自身も本番はもちろん稽古もすごく楽しみですし、老若男女のお客様、いろいろな方が観てくださると思います。それぞれにいろいろな感想を持たれると思うんですけど、ご自分の家族を思い出していただけたり、大切にしていただくきっかけになれたり…。ぜひお越しください!

和田 サザエさんの素晴らしさはどなたでも知っていると思いますが、それプラス、舞台ならではのその場その場で生まれるエネルギーも感じてもらいたい。素晴らしい先輩方とご一緒できるので、胸を借りるつもりで、精いっぱい頑張っていきたいと思います。カツオという役は磯野家の中でもムードメーカーと言いますか、その場を動かす役割だと思っているので、責任をもって磯野家を引っ張っていけるように、頑張ります!

 

ライター:宮崎新之

 

©長谷川町子美術館