演劇好きがいま知っておくべき逸材、小沢道成の魅力に迫る!

小沢道成という人間はとても魅力的だ。役者として数々の舞台に立ち、自身のプロジェクトでは、劇作、演出、そして美術も行う。そんなマルチな小沢くんの魅力をもっと多くの人に知ってもらいたいな、彼の作品に触れてもらいたいな、そんな思いで、個人的にも仲良くしている小沢くんに話を聞いてみました。少々語り口が柔らかいので、ご容赦いただけますと幸いです。(ローチケ演劇部・白)

今日は本番が差し迫った中、お時間いただきありがとうございます。今日はね、すこしゆるーい感じで、作品っていうよりは、小沢道成ってこんな人だよっていうのが伝えられたらいいなと思ってます。

ありがとうございます(笑)

ではまず、ありきたりな質問になっちゃうけど、小沢くんが役者を志したのは、何がきっかけだったの?

岩井俊二さんの映画にすごく憧れてて、映画の俳優になりたかったのが最初かな。でも当時は京都に住んでいて、オーディションの情報も少なければ、応募したとしても書類審査で落ちちゃってましたね。

それはいくつくらいの時?

15,16歳ぐらいのときかな。ちょうどそのくらいの時に、小劇場のワークショップがあるって知って行ってみたら「演劇面白いじゃないか!」ってなって。そこからどっぷりはまってしまったって感じですね。

その演劇にはまったのっていうのは、誰の作品とかあるの?

演劇始めた頃は、野田秀樹さんや鴻上尚史さんの映像ばかり見てました。

何が小沢道成をそこまで夢中にさせたんです?話?

いや、話はよく分からなくて。どんな内容の話?って聞かれても答えられないです(笑)

確かに(笑)

お父さんが演劇好きで、家にビデオがあって。そのビデオで見てるんですけど、なんか早口だし、よく身体を動かすような、なんかスポーツやってる?みたいな汗だくな人たちが映像の中にいて。でもなんかわからないけど、終わった後「めっちゃ面白い!!」って感覚になる。その感覚が演劇にはまった要因だと思うな。

その後、鴻上さんが立ち上げた虚構の劇団に入団することになるわけですね。いくつで上京したの?

20歳かな。21歳かな。20歳の時に、東京に出てきて、1年間はなにもいいことなんて起こらなくて。21歳の時に、虚構の劇団に入ったと思います。

その時は俳優1本でいくぞ!みたいな感じだったんですか?

そうです!虚構の劇団で「自主企画発表会」というのがあって。その時に初めて自分で脚本を書きました。でもその時は、鴻上さんにも「あんまりおもしろくないな」って言われて(笑)。そのあとに、別の機会で、二人芝居を書いてみて、それを自主企画発表会で発表したんです。それは鴻上さんに「お、これはおもしろい」って感じで言ってもらえて、それで、ちょっと書き続けてみようかなと思い始めて、EPOCH MANも始めたって感じです。

そんな感じで劇作を始めた小沢くん。前回公演「オーレリアンの兄妹」が岸田國士戯曲賞の最終ノミネート作品に選ばれましたね。おめでとうございます!

ありがとうございます!

自分の作品が岸田戯曲賞へノミネートされるイメージってありました?率直な感想はどうです?

ないですないです。最近頻繁に迷惑メールが届くから、最初はその一種かと疑ってました(笑)。
岸田國士戯曲賞、僕に話が来るってことは、いろんな作品、戯曲を幅広くみてくださっているんだろうなと感じました。ノミネートされている方たちの名前を見ると、ジャンルがいろんな方で、面白い感じになりそうな予感がするなって思ってます。

小沢君に対して劇作家ってイメージを持っている人って多くないような気もします。だから今回のノミネートはいいきっかけになるのかな。

劇作家っていうイメージを持ってくれている方は確かに多くないと思いますね。自分としても、演じる側とか、それを演出する立場として、「こういうの観たいな」っていうのを、本に書き起こしているって感覚に近いんですよ。

そうなんだ。

そう。本を書く時も、俳優として台本を読んでいることの逆をやってるというか。出来上がっているものを役者さんって読み解いていくわけじゃないですか。どういう気持ちだろう?この人物は何がしたいんだろう?って。反対に作家さんは、こういう気持ちや状況を抱いてる人物というところから始まり、言葉が生まれる。それを考えると、役者の時とは逆の作り方なので面白いです。

なるほど。脚本を書いてる時って、どこに誰がいて、どういう動きをしてっていうのもイメージできているものですか?

できてますね。作家として書いてないっていうのがそこなんでしょうね。いざパソコンにむかって書くときに横には美術模型もあるから、演出もしながら書いちゃってるんですよ。「オーレリアンの兄妹」に関しては、それは多分2人芝居だったからできる、というか、自分がやるっていう前提だからできる話なんです。上手から出てきて椅子に座る動きがあるとして、この椅子に座るまでちょっと間が空いてるなぁ、そこはセリフで埋めようか、じゃあどういうセリフで埋めたら、段取りに見えずに面白くなるか、みたいな作り方です。

今後はどういう方向でやっていきたい!というイメージはあるの?

俳優としてのお仕事もやるんですけど、EPOCH MANで創作したり、外部での作演出のお仕事もやっていきたいなと。

昨年やられていた『水深ゼロメートルから』は、演出と美術だけでしたよね。自分が舞台上にはいなかったっていうのは初めてですか?

虚構の劇団の自主企画の時に、演出だけしたときもあったけど、外部でやるのは初めてでしたね。

外部の公演で演出だけやってみて、新たな発見とかありました?俳優もやっていると「自分で演じた方が…」って思っちゃうのかなって思ったり。

それは感じないですよ。自分がやった方がそりゃ手っ取り早いけど、そういう気持ちは全くなかったですね。むしろ、自分も俳優をずっとやってから、今、例えば、この人がこのセリフを言いにくい理由って、こういう心情だからだよね、とかすぐわかる。それは俳優を経験しているからこそだなって。

最初にお会いした時に、当時、駅前劇場で「鶴かもしれない」を上演するって決まった頃で、「前回公演がOFF・OFFシアターだったから規模も大きくなって勝負なんです!」ってお話しされていたのを覚えています。駅前終わったと思ったら、本多劇場まできましたね!

今回も規模が大きくなって勝負なんです!(笑)でもそれも駅前劇場でやったおかげです。

駅前劇場では三角にせり出した舞台美術で、駅前劇場の閉塞感も相まって、すごく舞台も客席もいい空間だったなっていう印象なんですよね。

僕も好きです。あの形、すごくベストだと思うんだけどな。

本多劇場だといままでより大きくなりますね。

この「鶴かもしれない」って作品は、高さがあればあるほど良い作品になるんだろうな、とずっと思ってたので、やっとって感じですよ。やっとこういうことができるんだっていう。むしろ作品に見合った感じです。

いま稽古してて空間演出はどう意識していますか?僕は駅前劇場と横浜で観ているんですが、場所が違うと作品が全然違うなと驚きました。今回また劇場が大きくなって、例えば、ラジカセの台数とか、変わるんです?

ラジカセは3台のままですね。前回、本多劇場さんで無観客生配信を経験させてもらった時に、「意外にこのラジカセ、本多劇場でも通用するんだ」って気づいたんです。その経験があったから、本多劇場でやるぞってなった時に、「鶴かもしれない」もイケる!っていう確信を持てたんです。

そんな繰り返し上演している「鶴かもしれない」。例えば今後、誰かに演出してもらうみたいなイメージってあります?

やだやだ。嫌です(笑)

他の人に演じてもらうのは?

全然ありです。演出って一番作品を左右させるものだから、他の舞台でも作だけはやらないと思うし、僕がやるなら、作・演出はセットがいい。もしくは演出だけがいいです。

優先順位高めですっていうコンテンツがあるんですが、みんな「鶴」「鶴」言ってるんですよ。

そう、あれびっくりしちゃった!嬉しかったです。

それだけみんな楽しみにしてるってことだね。

楽しんでいただけるように、まずは僕が楽しみまくります!劇場でお待ちしていますね!

今日はありがとうございました。