ダンスエンターテインメント集団・梅棒の最新作『おどんろ』が間もなく上演される。本作は、2021年7月~8月に上演を予定していたものの、新型コロナウイルスの影響により全公演が中止となっており、今回はいわばリベンジ公演。熱い思いを抱えて出演する梅棒の梅澤裕介と、ドラマや映画で活躍する小越勇輝、AKB48の大西桃香の3人に、作品にかける思いを聞いてきた。
――昨年夏、コロナ禍で残念ながら中止となってしまった『おどんろ』が、この春に上演されることになりました。出演にあたって、それぞれの思いがあるかと思いますがいかがですか?
梅澤 やっぱり梅棒は生で観てもらってナンボのステージ。昨年の夏は残念ながら中止になってしまったんですけれど、早いタイミングでまた上演できる機会を得ることができて、本当にうれしいです。今回も気を抜かずに最後まで上演したいですし、あの夏に作ったものよりも良いものを、春にみなさんにお届けできればと思っています。
小越 僕も、前回中止になってしまった公演に参加していたんですけど、あの公演がコロナ禍での初めての舞台で、周りから公演が中止になったなどの声を聞いていたんですが、自分がその瞬間に立ち会うことになってしまいました。当たり前のように毎日公演できるわけじゃないんだな、と悔しいだけじゃない、言葉にできない思いがすごくありました。梅棒さんの舞台に出たくても、前回はできなかった。それが今回、こんなに早いタイミングで、梅棒さんの一員としてまた参加できるので、また気持ちを新たに作っていきたいです。
大西 私は今回から参加させていただきます。こんなにすごいパフォーマンス集団の方々とダンスで表現することに対して、緊張はあるんですけど、私もダンスや表現することは大好きなので楽しみにしていました。私の役は、もともとAKB48の大先輩・梅田彩佳さんがやられていた役なんですね。梅田さんがSNSで、(今回の梅棒に)出演できなくて悲しい、という感じのコメントをされていて…梅田さんは本当にダンスが上手なメンバーだったので、その後任が私で大丈夫なのか、と不安にもなりました。ですが、梅田さんのそういうお気持ちも背負って、私も責任をもって、一生懸命この役を務めていきたいと思っております!
――梅棒に対しては、もともとどんなイメージをお持ちですか?
小越 僕は6年ほど前に初めて観て、舞台上からのパワー、出演されている方の輝く姿がすごく印象的でした。裏で少しご挨拶もさせていただいたんですが、その時はまだ、梅棒さんたちがどんな方々なのかまでは存じ上げていなかったんです。去年、中止になった「おどんろ」の稽古に参加させてもらったときに、すごくエネルギッシュなパワーにあふれる集団だと実感しました。ひとりひとりが妥協なく、いい作品を作るためには決して後ろは向かずに前だけを向いて、作っては壊し作っては壊しという構築の手間をかけながらやっていました。そういう姿は本当に素敵ですし、自分もついていきたいと思いましたね。作って壊すって不安になってしまうこともあるんですけど、不安にさせない、よりいいものができると信じさせてくれる説得力がありました。
大西 AKB48で活動しているときに、演出の伊藤今人さんと何度かご一緒させていただく機会があって、その今人さんがいるダンスグループという認識でした。でも、生で拝見したことはなくて、今回のお話があって映像で、AKB48だった横山結衣ちゃんが出演していた『ウチの親父が最強』を観ました。私が出演することになって聞いてみると、周りのメンバーでも梅棒さんの舞台を見たことがある子が多かったんですよ。それで「えっ、梅棒さんの舞台に出るの?大丈夫?」って言われて(笑)。その時はまだ映像資料を観る前だったので、私大丈夫かな…って思ったのが、最初の印象です(笑)。頑張ってね、楽しんでね!という声もたくさんもらったので、稽古にも参加して、まだまだですが頑張りたいです!
梅澤 心配される感じなんだ(笑)
大西 あの、梅棒さんって舞台裏に氷水がいっぱいに入ったバケツが用意してあるって本当ですか?
梅澤 本当です(笑)。ボディケアとして、終わったあとにクールダウンさせて血行を良くする方法があるんですよ。
大西 楽しみです…入ろうっと(笑)
――小越さん、大西さんに対して梅澤さんが期待していることは?
梅澤 小越くんに関しては、以前の稽古にも参加してもらったんですけど、やっぱりバタバタしていたところもあるので…消化不良なところもあるんじゃないかと思うんですね。そこを、ぜひワガママに、自分が気持ちいいようにやってほしいですね。大西さんは今回がはじめましてですが、梅棒って演じる人によって役柄が変わっていったりするんですよ。梅ちゃん(梅田彩佳)みたいにカワイイ部分もあるとは思うんですけど、それはそれ、これはこれ、って感じで。全然違うキャラクターくらいのつもりで、大西ちゃんらしくやってくれたらと思っています。
――それぞれの役どころやストーリーについて教えてください
梅澤 僕の役は、普段は友達も知り合いもいない、しがない男なんですが、ふとしたきっかけで妖怪たちと関わることになる人物です。妖怪と接することで、今までとは違う気持ちに変わっていくんですけど、今までの梅棒とは違う、少し大人でハートフルなところもある物語になっていて、そこが新鮮で楽しいんじゃないかな。そこに気持ちを寄せて、楽しんでいただけたらと思います。僕は今まで、ガヤというか、問題を大きくして逃げていくような役回りが多かったので(笑)、こういう中心人物になるのは初めてかも?5分ネタとかでは真ん中に立つこともあったと思うんだけどね。だから、ちょっとドキドキしています(笑)。動く量が格段に違うので…。
大西 自分が踊らないところも、練習していらっしゃいますよね。
梅澤 もともと代役をやるのがすごく好きで。だから、好きでやっているんです(笑)。稽古場では自分じゃないところもめちゃくちゃ踊っています。ジッとしているのが性に合わない。
大西 私は新米警察官で、最初は真面目に警察官をやっているんですけど、頑張りすぎて空回りしちゃうんですね。その結果…という役どころです。すごく純粋ですね。
梅澤 物語の主人公としては僕の役なんだと思うけど、お客さんが気持ち的に寄り添えるのは大西ちゃんの役になるんじゃないかな。
大西 感情移入しやすい役だと思います。最初と最後での気持ちの変化や妖怪との関係性などがすごく素敵で、きっと見てくださる方もグッとくると思うので楽しみにしていてほしいですね。
小越 僕は妖怪グループのリーダー的なポジション。僕たち妖怪は、人間の念から生まれたものというか…人間に対して恨みを持っていたり、チクショウって思っていたり、いろいろな感情を抱えているんです。その気持ちがあるから、人間へのイタズラやちょっかいを出していくことになるんですけど、人間は起こっている不可解な出来事などに対して、妖怪と交わることはなかったんですね。それが、人間と妖怪が交わって近づいて、お互いに思いがあって――どんどんストーリーが濃くなっていくんです。今までは交わることが無かった、2つの世界が交わったからこそ感情が伝わっていく。そこに『おどんろ』ならではの空気感が出せるんじゃないかと思っています。
――いままでの梅棒にはない世界観が広がっていそうな予感がします。ダンスについては、現時点の手ごたえはいかがですか?
小越 手ごたえは…無いです(笑)。僕、ダンス苦手なんですよ。
梅澤 俺も苦手(笑)
小越 僕は梅棒さんに出たい、携わりたいという気持ちはものすごくありましたけど、自分ができるのか、という部分は別の話で。でも前回稽古をして、直前までは仕上げることができたので、今回はさらにパワーアップして、この世界観に生きられるようにダンスや動き、表現を突き詰めていきたいです。毎日不安です。でも、くじけそうになりながらも、楽しいんですよ。
大西 私もダンスは苦手で、AKB48にはダンスが得意なメンバーがたくさんいて、私は教えてもらっている側。それにアイドルでやっているダンスと梅棒さんのダンスは全く別物。アイドルの時は“振り付け”という感じですが、梅棒さんの稽古に参加してみて、本当に感情をまず乗せて、そこから出てくる動き、みたいな感覚だったんです。本当に全然違っていて、私にとっては新ジャンル。ほかの方を見ていると、本当に次元が違っていて不安なんですけど、そんな中で踊らせていただけるのは自分にとっても成長できる機会なので、たくさん学んで、本番では皆さんと肩を並べられるくらいになっていたいです。
――大西さんは振り付けの激しさで話題になったAKB48のシングル「根も葉もRumor」で選抜に入っていらしたので、ダンスが得意なメンバーだと思っていましたが、本人的には苦手なんですね。
大西 ありがとうございます。ロックダンスも人生で初めてで、サビのウィッチウェイも3週間から1か月くらいやって、やっとできたくらいなので。梅棒さんのダンスもちょっとずつですが、自分の中に取り入れていきたいと思います。
梅澤 今回は、各ジャンルのダンスのプロフェッショナルな方がそろっているんですよ。Q-TAROさんなんかは、ストリートダンスで僕らからしたら頂点みたいな人だし、NANOIちゃんはアニメーションダンスがピカイチ。そのほかにもとにかく各ジャンルで特化した人たちが集まるから、それを観るだけでも絶対に楽しいんですよ。そういうのを横目に見ていると、僕はダンスが苦手だって思う(笑)。でもね、僕らが小越くんや大西ちゃんに求めているのは、全く別のことですね。そういう専門の人たちみたいにダンスをカッコよく踊ってくれ、っていうよりも、自分でこう踊ったらカッコいいだろうとかを見つけてくれたら、専門のダンサーさんにはない輝きが出ると思うから、自分が気持ちよくなるまで存分に踊ってほしいな。
――梅棒ならではのガムシャラ感の気持ちよさってありますよね。
梅澤 気持ちのいい表現を観ている時って、具体的にどこが上手いとか思わないんですよ。輝いているときは、その輝きだけが入ってくる。だから、輝いてもらえたらいいなと思っているし、僕も…役柄的には難しいか(笑)。でも、輝けたらと思います。
――最後に、意気込みをお聞かせください!
小越 前回できなかった、という気持ちなどいろいろありますけど、あまりそこをマイナスに取らず。それがあって今回があるので、リベンジというよりもまた新しく1から作るつもりで、『おどんろ』をみなさんと作っていきたいと思っています。今回、ご覧いただくものが初出しになりますので、ぜひ劇場でご覧いただいて、目に、記憶に、残していただければと思います!
大西 前回はお披露目することはなかったとのことですが、今回が2回目ということで、前回へのリスペクトや気持ちを乗せつつ、初参加メンバーとして新たな風を吹かせていきたいと思います。きっとこの作品がみなさまの明日への活力になると思うので、たくさんの方に見ていただきたいです。劇場でお待ちしています!
梅澤 梅棒は基本的にセリフがほとんどありません。観ている方がご自身でセリフを想像してご覧いただくようなステージになっています。だから、観た人だけの物語があるんですね。この劇場でしか味わえない梅棒の世界は、今まで来てくださっていた方も、初めてご覧になる方にも、価値のあるものになるはず。素敵な時間をお届けしたいと思っておりますので、期待に胸を膨らませて遊びに来てください!
――楽しみにしています!本日はありがとうございました。
取材・文:宮崎新之