KAAT キッズ・プログラム初参加の松井周が俳優・白石加代子を主演にむかえて描く、記憶にまつわる物語『さいごの1つ前』

2022.05.09

KAATキッズ・プログラム初参加の松井周が、
俳優・白石加代子を主演にむかえて描く、記憶にまつわる物語

KAAT 神奈川芸術劇場の夏恒例のKAAT キッズ・プログラム。2022年は、7月の『ククノチ テクテク マナツノ ボウケン』(振付・演出 北村明子、舞台美術 大小島真木)に続き、8月には、劇作家・演出家の松井周が、自身初となるキッズ・プログラムの創作を手がける。

本作は、2020年度に上演を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大のため、残念ながら延期となった。松井周が一度書き上げた作品を、2年の時を経て書き直し、コロナ禍が生んだ閉塞感や圧迫感に風穴を開ける、驚きと可笑しみのある作品を目指す。
松井が本作で描くのは、「記憶」にまつわる物語。人間にとって「記憶」や「思い出」が持つ意味や価値とは何か――。さらには、「生きる」ことの定義やその喜びとは何か――など、人間の「生と死」について、こどもたちとともに思いを巡らせる作品を描きく。

白石加代子×松井周、異色の顔合わせでおくるキッズ・プログラム

今回の作・演出を務める松井周は、2011年、『自慢の息子』で第55回岸田國士戯曲賞を受賞、個人ユニット「サンプル」での活動のほか、国内外で様々な作品を手掛け、現代演劇界をけん引する存在です。独自の世界観で、人間の複雑さや曖昧さを舞台上に表出させる松井の作品は、その強い同時代性から現代に生きる人々の心を揺さぶり、高い評価を得ている。

主人公を務めるのは、俳優・白石加代子。劇団早稲田小劇場の看板女優としてキャリアをスタートさせて以来、日本を代表する演出家の舞台作品に出演し続ける演劇界のレジェンド。2019年上演のKAAT 神奈川芸術劇場プロデュース『常陸坊海尊』(長塚圭史演出)のおばば役でも圧倒的な存在感を放ちった。白石も今回、キッズ・プログラムに初出演となる。
松井と白石という、キッズ・プログラムの作品としては異色ともいえる顔合わせでおくる、KAATキッズ・プログラム『さいごの1つ前』に期待。

あらすじ

ここは天国と地獄の分かれ道。女・Kはそこで忘れ物をして立ち往生している。
天国に行くには「生きていた頃の記憶」が必要なのだという。Kの忘れ物はその記憶だ。
どうやら彼女は記憶喪失のゆうれいらしい。Kは逆戻りして記憶を取り戻そうとする。そのためには生きているこどもたち(観客)の意見もヒントにしてみようとする。彼女の周りには、同じように天国行きの乗り物に乗ろうとして記憶を取り戻せない青年や、地獄に行きたいと言い張る少女が集まってくる。
Kはどうやら認知症を患っていて、ニセの記憶も混じっている。集まった人間たちはKのために知恵を絞る。しかし、ふと現れた怪しい男に翻弄されて、Kはなかなか記憶を取り戻せない。
Kは無事天国へ旅立つことができるのか?

コメント

作・演出:松井周

【KAAT 神奈川芸術劇場 2022 年度ラインアップ発表 ビデオメッセージより】

この作品は、2020年に「KAAT キッズ・プログラム」として上演する予定でしたが、延期になり2年後にやっと上演することになりました。一度書き上げた作品ですが、この2年間を経たことで書き直していきたいと思っています。
コロナ禍で、「ほどほど楽しい」「そこそこ楽しい」「まあこんなもんか」というところで日常を過ごし、ストレスフルな日々を過ごしている方が、こどももおとなも関係なくいると思います。この舞台を見ている時間はそうではなく、「本当に楽しかった」「本当に怖かった」など、様々な意味でリミッターを超えるような体験をしてもらえたらと思っています。
この作品は白石加代子さんを中心に作ろうと考えています。僕の印象では、白石さんは、老女から幼女まで、あるいは人間を超えたような存在としても舞台上にいられる、みんなを引き付けてしまうすごいパワーを持っている、なんでもできる俳優さんだと思っています。その魅力を引き出して、こどもたちにも楽しんでもらえる作品にしたいと思っています。
夏休みという特別な時間にこどもたちがこの作品を見て、10年後、20年後に「なんか変な作品を見たんだけど、あれってなんだっけな」と思ってもらえるような、記憶に残る作品にしたいと思います。

出演:白石加代子

2020年にあらすじを読んだ際、自分にぴったりの作品だと感じました。
稽古をしている間に、様々な面白いことがさらに出てくるのではと思います。
また、KAAT の作品に出演する際は、東京で作品に臨む時とは違い、地域の雰囲気の中で創作をするという楽しみもあります。
一昨年は公演が中止になってしまいとても残念でしたが、私にもまだまだこどものような心がありますので、この作品をこどもたちに観てもらえることを楽しみにしております。
早く皆様とお会いしたい、巡り合いたいと感じています。