福田悠太&室龍太のコメディセンスが光る! 舞台「ボーイング・ボーイング」公演レポート

2022.05.17

©️木村直軌

福田悠太(ふぉ~ゆ~)が主演、室龍太、松本明子共演の舞台「ボーイング・ボーイング」が、5月14日(土)から、東京・自由劇場で上演中だ。本作は、フランスの劇作家マルク・カモレッティによる戯曲で、1960年にパリで初演されて以降、世界中で幾度となく再演されてきた傑作コメディ。2008年度のトニー賞では「リバイバル演劇作品賞」や「主演男優賞」にも輝いている。今回は、本公演を観劇し、公演の様子を取材した。

 

福田が演じるモテない男・ロベールが、室が演じる二枚目のモテ男・ベルナールの家を訪れたことから巻き起こるドタバタ劇を描いた本作。舞台上には、ベルナールのおしゃれなリビングルームが広がる。そこで、ベルナールと恋人のアメリカ人CAのジャネット(大友花恋)が朝食を楽しんでいる場面から物語はスタートする。仲良さそうに話す2人だが、やたらとジャネットの予定を気にするベルナール。そこで働く家政婦のベルタ(松本明子)は、イライラしているかのように文句を言いながら動き回っていた。と、そこに田舎から出てきた旧友の“非モテ男”ロベールが訪ねてくる。

©️木村直軌

ジャネットがフライトのために家を出た後、ベルナールはロベールに、自分は3カ国の美女3人と付き合っていると自慢する。しかも、全員が国際線のCAなので、スケジュールをうまくやりくりすれば、バレずにその関係を楽しめるというのだ。まもなく、フランス人のジャクリーン(飯窪春菜)がランチにやってくる。ロベールにジャクリーンを紹介するベルナール。楽しい時間が過ぎた後、ジャクリーンは空港へと向かった。

その後、夜遅くにやって来るはずだったドイツ人のジュディス(愛加あゆ)が予定より早く着いたとやって来て、間違えてロベールにキスをしてしまう。人生初のキスに仰天し、何かに目覚めてしまうロベール。そこへ、フライトスケジュールが変更になったとジャクリーンが再び戻って来てしまい、ベルナールとロベールは、ジュディスとジャクリーンが絶対に鉢合わせしないように、なんとか切り抜けようとする。

3人のCAたちのスケジュールが変わったことから、次々とベルナールの元にやってくるというピンチを、ベルナールとロベールが機転を利かせてやり過ごそうとするドタバタを描いた今作。その場をやり過ごそうとすればするほど、事態がどんどん悪化していき、慌てふためくベルナールとロベールの様子が笑いを誘う。ロベールを演じる福田は、このモテない男を、女性に免疫がなさそうで、いまひとつ垢抜けず、鈍臭いけれども、どこか愛らしい男として演じている。登場時から大きなリアクションで驚き、喜び、あたふたする姿は笑わずにはいられない。福田のコメディセンスが存分に発揮された役どころだ。

©️木村直軌

一方、室が演じるベルナールは、スマートで、スラスラと言葉を紡いで女性たちとの関係を築いていく男性。関西弁を封印し(普段、室は関西弁を話している)、ちょっとキザで物腰柔らかく、女性に優しいベルナールを体現した室は、3股という嫌悪感を抱かれかねないシチュエーションをポップなものに変えていた。どこか「ベルナールなら仕方ないよね」と思えてしまう男だからこそ、今作の笑いを何も考えずに楽しむことができるのだ。そういう意味でも、室が果たしている役割もまた大きい。

実は、福田と室は、これまで同じ作品に出演した経験はあるものの、同じステージには立ったことがなかった。つまり、本作が本格的な共演は初めてということになる。しかし、ステージ上ではそうとは思えないほど、息がぴったりあった様子を見せる。稽古時から、一緒に稽古場から帰るなどして仲を深めたというが、まさにその成果が出ているのかもしれない。

©️木村直軌

ベルナールの恋人たち3人のキャラクターも個性豊か。持論に従って生きているジャネットは、大友の魅力も相まって可愛らしい女性に映った。飯窪が演じるフランス人女性は、「好きなものは好き」と言える素直さと強さを持っており好感が持てる。そして、愛加が演じるジュディスは振り幅が大きく、しっとりといい女を見せたかと思えば、全力で笑わせにかかる。愛加のコメディアンヌぶりは秀逸で、福田とのやりとりには笑わされた。

©️木村直軌

さらに、松本が演じるベルタの存在も大きい。時に男性陣と女性たちとの間のクッションになり、時に男性陣のフォロー役を務め、物語の潤滑油となっていた。ブツブツとグチを言ってばかりのベルタだが、松本の持つ柔らかい空気感がベルタを魅力あふれる家政婦に仕上げていた。

また、劇中には、何度もロベールやベルナールと3人の女性たちのキスシーンが登場するが、その演出の仕方も実にキュート。ファンの方も安心して楽しめる、何度も見たくなるキスシーンになっているので乞うご期待。

さて、ハッピーエンドにはなりそうもない、ドタバタが続く物語だが、ラストには急転直下のオチが待ち受けている。とはいえ、そこは“爆笑コメディ”。幸せな気分いっぱいで劇場を後にすることができること間違いなしだ。公演は、5月29日(日)まで東京・自由劇場で上演した後、室の地元でもある京都の京都劇場での上演も予定されている。まだまだ暗い気分が漂う社会情勢だからこそ、思い切り笑えて、ハッピーになれる本作を楽しんでもらいたい。

 

取材・文:嶋田真己