舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』 アルバス・ポッター役 藤田悠、福山康平 インタビュー

世界中で人気のファンタジー大作「ハリー・ポッター」シリーズの舞台版、「ハリー・ポッターと呪いの子」が間もなく上演を迎える。映画最終作から19年後、父親になったハリーたちの姿を描いていくこの物語。ハリーの次男、アルバス・ポッターをダブルキャストで演じる藤田悠、福山康平の2人はどのように作品に臨むのだろうか。話を聞いた。

――出演が決まった時、どんなお気持ちになりましたか?

福山「オーディションに賭ける気持ちがすごくあって、自分にとって大きなチャンスだと思っていたので、まずは良かったなと。やっぱり、23~24歳になって、同級生は社会に出てしっかり働き始めている中で、コロナ禍でどうしても家にいる時間が長くなってしまっていて…頑張らないといけない年齢なのに、という気持ちがありました。その上で、本当に立ち向かっていかないといけない役というのはわかっていたので、ここから気合を入れて頑張っていかなきゃいけない、と思いました。今までもいろんな作品に出てきましたけど、やっぱりこう一個スイッチが入ったというか、あの瞬間、前向きに頑張れる作品が目の前にあって良かったですし、本当に嬉しかったです」

藤田「僕はオーディション通過の電話を受けたのが、小劇場の舞台の稽古中のトイレの中でした(笑)。福山君と同じで、周りが社会人になって就職していく中で、自分がサラリーマンになるのが本当にやりたいことなのか、っていう気持ちがありつつも、役者に挑戦していくこともリスクが大きくて、親もそれを感じていたので、すごく悩んでいた時期でした。自分がやりたいことをやり続けられる、第一歩が繋がった喜びもありましたね。プレッシャーもありますが、とにかく俳優業、役者をやっていいんだな、と思えて嬉しかったです」

――藤田さんは本作がプロデビュー作となりますが、お芝居の魅力に気づいたのはいつでしたか?

藤田「僕は学生のサークルから始めたのですが、朝は9時から夜はてっぺんまで毎日毎日やり続けるようなところだったんです。でも面白いことのためにペイできるものが時間しかなかったので、そこを惜しまず、どうしたら面白いものができるか考え続けてきた6年でした。気づいた瞬間は…最初はキツイって思っていたのですが、お客さんが入って“今の瞬間、絶対面白かったでしょ”っていう瞬間を体感した時ですね。それがアンケートでちゃんと反応があって実感でき、その一瞬を求めるために常にやっています。それは役者にしかできないし、続けたいと思いました」

――福山さんが芝居の魅力に取りつかれたのはいつでしたか?

福山「僕は悠とは全く逆で、そういうことは1㎜も思っていなかったんです。あるとき、ご縁があって映画のオーディションに行ってみない?って声をかけていただいて、それが僕のデビュー作「予告犯」でした。オーディションも初めて、現場に行くのも初めてで、こんなに多くの大人が自由にワーワー言いながら一つのものを作っている姿を目の当たりにして、こんなに面白い世界があるんだと思いました。共演者にも恵まれましたね。僕の撮影は1週間だったんですけど、その1週間で面白さに取りつかれました。「予告犯」がデビューじゃなかったら、多分僕はこの仕事をしていないし、普通に大学生になって、普通に就職していたと思います。それと、出演した舞台の初日のカーテンコールは、今でもよく覚えています。何物にも代えがたいですね」

藤田「舞台、映画に限らず、ほかの形の作品でもそうだと思いますが、非日常を味わえるっていうのは本当に魅力ですね。。」

――「ハリー・ポッター」シリーズも、世界中の人々を魅了している作品だと思います。どのようなところが人を惹きつけていると思いますか

藤田「魔法を使うこと自体に憧れってあると思うんですよ。そこに加えて、学生たちが頑張っているというか、青春をシンプルに過ごしているような普遍的なところを結構持っていますよね。そういうところがファンを引き付けているんじゃないかと思います。僕は中学2年までイギリスの学校に通っていたんのですが、本当にあの感じのままなんです。結構、辛辣な瞬間もあるし、ちょっと不真面目な学生が好き勝手やっている感じとかも結構リアルなんですよね」

福山「作りこみからなのか分からないんですけど、本当に世界観にワクワクしちゃう作品なんだと思います。こういうファンタジーや魔法が出てくる作品はたくさんあると思うんですけど、すべての世代にわかりやすく刺さりますよね。今回の出演が決まってから小説も読みましたが、原作ももっと面白かったんですよ。あの原作があって、本当に誰が観ても楽しい映画になったんだと思いましたね。原作にパワーがありました」

――今回は舞台という形でその世界観をお届けしていくわけですが、どんなところが舞台ならではの魅力になりそうでしょうか。

福山「今までの物語の続きとして、新鮮に読める面白い話だなと思いました。そして、やっぱり舞台でやるっていうのがとんでもないことなんですよ。稽古をしていて、舞台と「ハリー・ポッター」の相性、すごいんです。舞台の可能性を広げていると思うし、舞台にしかできない表現がたくさん使われているので」

藤田「臨場感をもって魔法を体験できるのは、舞台ならではですね。映画のCGもすごくリアルですが、舞台だとそれが肌感としてすごく感じられます。稽古で、僕らは知っているはずなのに「ええーっ!」って驚くこともあって(笑)。なので初見のお客さんには絶対に驚いてもらえると思います。そういう驚きが常にあるので、飽きないと思いますよ。場面転換すら場面転換じゃないように見えるというか。すべて繋がって流れていくんです」

――これまでにない新感覚の舞台なんですね。今回演じられるアルバス・ポッターはどういう人物で、どんなふうに演じたいですか。

藤田「アルバスは結構、苦しんでいる瞬間が多いんですよね。もがいて、足掻いていて…認められたい気持ち、現状をどうにか打破したいけどできない、その繰り返し。それを、もう1度こうしよう、ああしてみようとする感じはハリーと似ていると思いました。そして、それを支えてくれる親友・スコーピウスの存在も大きいですね。彼が居なかったら、アルバス自身がどういう世界に行っていたかわからない。すごく苦しんでいる印象なので、最後に報われてほしいですね」

福山「ハリーらしさを受け継いでいるところはありますけど、ハリーの息子として産まれていなければ、本当に普通の男の子だったんだと思います。ハリーと相対するところは、僕自身にも覚えがありますし、親子の感情というのは自分の中に持っているものがたくさんある。そこをしっかりと忘れず、でも新鮮にやりたいですね。スコーピウスとの場面は割と自由度が高くて、そこも楽しんでいきたいです。僕は門田宗大くんと組むことが今は多いんですけど、お芝居の面白さを宗ちゃんから教わっているような感覚があります。もっと自由にやっていいんだよ、って。長い公演の中で凝り固まっていかないように、自由さも大切に演じていきたいです」

藤田「自分自身が何公演もするうちにこの感じで提供できたら大丈夫、というところに収まってしまいそうな気もするんです。でも、そうはなりたくない。だからこそ、日々のメンテナンスというか、感情をたくさん使う分、キープする努力が必要なんだと思います。実際に本番に突入してみないとわからないですがどこかで満足してしまったら終わりな気がするので、満足しないように模索し続けたいです。それが、僕ら子どもたちの役の立ち位置なのかな、とも思っています。また、そんな子ども達を受け止めてくれるお父さん(ハリー)がいるから僕たちが模索し続けられるのだと思います」

福山「全力で体を預けて、ね。何をしても、絶対に受け止めてくれる安心感があるから」

――予定調和を崩し続けて、また積み上げていく存在でありたいということですね。稽古の雰囲気はいかがですか?

藤田「シンプルに、友達に会うような感覚です。毎日ちょっとずつ仲良くなっていて、学校に行くみたいな気持ちになっていますね。オフの日があると、ちょっと寂しい(笑)」

福山「それはあるね。オフの日でも会ったりするし(笑)」

藤田「あと、常に新しいシーンと、新しい照明、新しい装置などを合わせてやっているので、ここはこうなっているんだとか、こういう風に見えるんだとか、新しい発見が稽古をしていく中でどんどん出てくるので楽しいですね」

福山「特に劇場入りしてからは、そういう驚きがすごくたくさんあって。僕らはダブルキャストだから、客席に降りられる瞬間があるんです。それを見るために、オフの日でも稽古に行ったりします。稽古自体、すごく楽しいんですよ。みんなに会えるし、本当に仲良くやっています」

藤田「でも、一番いい席で見ちゃっていて、特等席に慣れちゃっているんですよね(笑)」

――実に贅沢ですね(笑)。同じ役を演じているところを客観的に見ることで見えてくるものもありますよね。

藤田「それはあります。福山君のほうがデビューが先なので、稽古を先にやることも多くて、客観的にアルバスのシーンを見ることが出来ます」

福山「やっぱり僕のアルバスと悠のアルバスは全然違うものになっているんだなと思います。どうしても今は僕が先に稽古する回数が多くなっちゃっていますけど、基本的にいてくれることがすごく心強い。僕に何かあった時は絶対悠が立つわけだから。そういう意味での心強さは常に感じていますし、逆に悠が立っているのを見ていて、あ、俺は思ってなかったけど、悠はこういう風に思っているんだな、っていう違いを感じる瞬間もある。でも二人の間の距離を寄せようとは思わないですけどね。一番アルバスについて考えているのは僕らだと思うんで、その相方が、あ、こっちで考えてたんだみたいな、そういう面白さがあります」

――それぞれのアルバスがどんな姿になるか、楽しみです。いろいろとお忙しい中だとは覆いますが、普段のプライベートな時間はどんなことをして過ごすことが多いですか?

福山「美味しいもの食べるくらいですね。晩酌したり。美味しいおつまみ作りながらちょっと晩酌、っていうのが好きなんです」

藤田「僕もそうですね。あとは銭湯!」

福山「悠はそうだね(笑)」

藤田「銭湯行って、疲れた〜みたいな感じです。結構長風呂しちゃいます」

福山「整ってる(笑)」

藤田「本当に近所の銭湯に行って、広いお風呂に使って休憩するだけです(笑)。サウナブームが来ちゃって、ちょっと言うのが恥ずかしいんですよね(笑)」

福山「あと、僕は息抜きで将棋指したりとかしますね。将棋を指すのが昔から好きで、昼休憩が1時間あったら、ちょっと一回リラックスして頭を切り替えるために将棋を指したりします。負けて結局イライラすることもあるのであまり良くないんですけど(笑)。将棋は結構、真剣に取り組んでいる趣味なので、いい息抜きになります」

――晩酌のおつまみはどんなものを作るんですか?

福山「パパッとできるものですよ」

藤田「休みの日に、僕にも作ってくれたんです。豆苗と鶏のテールのところを中華炒めにしてくれて」

福山「そんな大したものじゃないですよ。冷蔵庫にあるものでパパッと作るだけです」

藤田「料理できる人じゃないとできないやつですよ。嬉しかったな」

福山「めっちゃ褒めてくれる! でも、例えば土曜は魚を食べる!って決めて、そのために2日間頑張る、みたいな食がモチベーションになっているところはありますね」

――そんなプライベートの時間を糧に、公演も頑張っていただければと思います。最後に、楽しみにしているファンにメッセージをお願いします

福山「今まで僕が出ている作品を見てきてありがたいことに応援してくださる方もいて、その人たちが今回すごい楽しみにしてくれているんです。僕が今まで出てきた作品の中で一番舞台にいる時間も長いし、やらないといけないことも多いし、気合を入れて臨まないといけない。頭から最後まで、どう成長していく、どう変わっていくのかっていうところを、どう作っていこうかなっていうことを今は常に考えているので、そういうアルバスの成長を見守っていただければなと思います」

藤田「僕は、その場その場で起きた感情を大事にやっていこうと思うので、毎回毎回ちょっとずつ違うアルバスを見せられたらと思います。外れすぎてはないけど、あ、今日こうきたのかみたいなそういう感じで、同じ役者だけど何回も見に来ていただけるくらい自分のアルバスを作っていけたらと思います。もちろん福山君も僕とは全然違うので、そこも楽しんでみて頂けたらと思います」

取材・文/宮崎新之

<スタッフ>
ヘアーメイク(藤田悠)/森本愛梨
ヘアーメイク(福山康平)/松村南奈
スタイリスト/西脇智代

<衣裳クレジット>
藤田悠
・パンツ ブランド:AS STANDARD × BIG JOHN(¥8,800込)
問い合わせ:ADONUST MUSEU 渋谷区鶯谷町4-1-B1F 03-5428-2458
・Tシャツ ブランド:AIVER(¥6,050込)
問い合わせ:Sian PR 〒150-000 渋谷区渋谷2-2-3ルカビルⅡ2F~4F
・シャツ ブランド:LIBERE(¥22,000込)
問い合わせ:Sian PR 〒150-000 渋谷区渋谷2-2-3ルカビルⅡ2F~4F

福山康平
・セットアップ ブランド:Et baas(¥20,900込)
問い合わせ:Sian PR 〒150-000 渋谷区渋谷2-2-3ルカビルⅡ2F~4F