片岡鶴太郎25年ぶりの舞台!しかも篠田麻里子と親子役!
ノンストップで突っ走る病院舞台のリアルタイムコメディ
俳優のみならず脚本・演出を手掛ける宅間孝行が主宰の“タクフェス”。一本筋の通った物語に人間模様が渦巻く良質な舞台のタクフェス=“泣ける”のイメージもあるが、“春のコメディ祭!”はそれとは一線を画すもの。徹底的にエンターテインメントに振り切った笑いを届ける。第2弾となる今回、宅間が選んだ『笑う巨塔』は、とある病院のロビーを舞台に、とびの親方ファミリー、極秘入院の次期総理総裁を目指す代議士一団、医師や看護師や見舞客を交えたとんでもない大騒動のコメディ作品。2003年、当時、宅間が主宰していた東京セレソンデラックスで上演した『HUNGRY』を『笑いの巨塔』と改題して2012年再演、さらに手を加えての再再演となる。ここに、なんと舞台は25年ぶり!という片岡鶴太郎(とびの親方)、コメディ初挑戦の篠田麻里子(その娘)を迎えることが公になった。役衣装をバッチリ決めた3人のクロストークは、本人たちも「初耳!」なネタが目白押し!
――片岡鶴太郎さんと篠田麻里子さん、出演が決まったお気持ちは?
片岡「宅間さんの舞台は一ファンとしてずっと見てきました。一客でしかないから、わたしが出るとしたら……、なんて思ったことは一度もないんです。今年の春も拝見して笑って、それからオファーがあって、ええ!と。そうか、あの親方か、これは宅間さんとおもしろくなるかもしれない。ちょっと遊びに行きますわ、てな感じで、ひたすら楽しみでしかないですね」
篠田「わたしはお話をいただいたとき、“タクフェスだ!”と。宅間さんの舞台の世界観、お客様に対する感謝、客席も一緒に作品を創り上げる気持ちにしてくれるところ、すごく好きなんです。ぜひやらせてください!と言いましたが、よく見たらコメディじゃないですか。コントみたいなのはあるけど、コメディはほぼ初。わたしで大丈夫かなという不安もありますが、これも挑戦です。自分の中に見つけられていないものを、宅間さんに引き出していただこうと思います」
宅間「僕の勝手なイメージですけど、お上手そうな感じですよ。よく言うのが、お笑いの人は笑いを取りにいって笑わせる、で、役者は笑われてナンボ。真面目に芝居すればするほどお客さんには滑稽に見えてくるから、コメディであることにこだわらなくていいと思いますよ。篠田さんにはコメディエンヌの匂いがしますし」
篠田「うれしい!初めて言われました」
宅間「だって、なかなか“(まりこ)様”で呼ばれる人、いないじゃない(笑)?」
篠田「確かに。実はわたし、いじられたいほうで(笑)」
――ところで、片岡さん、舞台出演は……?
片岡「25年ぶりです」
篠田「え、本当ですか!?」
片岡「そうなんです。絵を始めてからはぜんぶお断りしていたもので。20年は絵に集中しようと決めていたからそこまでがんばって、無事に迎えられました(2015年に画業20周年)。もちろん絵は続けるけれど、もっと自由な意識で描いていこうと思っていて、バラエティをまた始める状況・環境になった。と、そこに今回のお話ですよ。なんというタイミング!これが5年前だったら受けていたかどうかわからない。だから、もうこの役は俺しかないだろう!と(笑)。宅間さんとは、お酒飲んでいろいろ話したり芝居を観に行ったりの関係でしたから、こんどは舞台の上で2人で遊ぼうかなと思っているところです」
宅間「ぶっちゃけ言うと、絶対無理だろうとダメ元でお願いしました。まさか、やってもらえるとは思わなくて。でも、この役、鶴さんにぴったりでしょ?」
篠田「(強くうなずく)!」
宅間「鶴さんのことは小さいときからテレビでずっと見ていました。コメディアンから始まり、俳優であって、アーティストでもあってと、いろんな顔がある鶴さんの本質が、この親方の役で見せられるんじゃないかと。お酒の席などでご一緒するようになってから、ますます、鶴さんのままで、そのままで舞台に上がってもらえたらいいなあと。オファーしておきながら、OKをもらったときは、マジっすか!?とびっくりして大盛り上がりでしたよ。“片岡鶴太郎”という人が僕らの芝居に出てくれる。ちょっとやそっとのことじゃないですから」
片岡「ご指名を承り、拝受しました!」
――片岡さんと篠田さんの親子役、意外としっくりハマっていますね(笑)。
片岡「ね? あるな、って思いますでしょ(笑)?」
篠田「今日初めてお会いしましたが、鶴太郎さんは空気がやさしくて、一瞬で親子の絆ができたくらいの感じがしています」
片岡「ここ(取材スタジオ)に来たときに篠田さんの姿が見えなくて、あれ、いないのかな?と思いながら着替え部屋に行くと、鏡の前に座っていらした。で、鏡越しにね、目と目が合って、パンパンッとお互いを値踏みしているんです。目玉を上から下からこうやって(目で実演)、俺も同じ値踏みの仕方をしているなあと、鏡越しだからわかる(笑)。おや、こりゃ似たもの親子かなあと思いました」
篠田「動物的な警戒心かな(笑)」
片岡「それそれ(笑)。やったでしょ?俺、思わず(股間)隠したもん(笑)」
篠田「そんなに見てませんよ(笑)!」
宅間「(笑)」
篠田「わたしは、片岡さんと宅間さんの掛け合いが楽しみです。特に“貝”のくだりとか(舞台を見てのお楽しみ!)。これは長くなりそうだなあと(笑)」
片岡「宅間さんもあんまり笑いを欲しがる芝居じゃないですよね。2人とも東京の出で、下町っぽい雰囲気がよくわかるもんですから、この作品の下町ッ子のすこし照れた感じというんですか、テンポや間合いがいいんです。もしかしたら、わたし、お客さんよりこの人(宅間)を笑わせにいくんじゃないかと。お客さんを無視して遊んじゃうかも(笑)」
宅間「スイッチ入ったときの鶴さん、やっぱり違いますもん。ほんと、楽しみです」
――真面目に芝居すればするほど滑稽でおもしろくなるには台本の力もあると思いますが、宅間さんが台本に込めたもの、書く際に意識したこととは?
宅間「初演時(『HUNGRY』2003年)はほぼアテ書きでした。演じる役者のアテ書きですけど、“いま出ている人でいうと〇〇みたいな感じで”というイメージも強かったんですね。たとえば、“メガネのおばさん”は“柴田理恵さんみたいな感じ”という。その柴田さんが、いまは自分たちの舞台に出てくれるようになったからすごいことです。今回の親方も、“鶴さんみたいなの”と言っていました。あのときにイメージしていた人が実際に出てくれるようになるなんて。再演には本人が出てくれるよ!と、苦しかった当時の自分に言って励ましてあげたい」
片岡「へえ、そうだったの……!」
宅間「うーん、話しながらだんだん思い出してきましたよ。僕、『男女7人夏物語』の鶴さんの役がチョーおもしろくて大好きだったんです。貞九郎、でしたよね」
片岡「そう、貞九郎」
宅間「鶴さんの貞九郎で大好きなシーンがあるんです。貞九郎も結構頑固じゃないですか。一人で拗ねて、みんなにツッぱって、いたい、いたい!とかやっていて(笑)。あれがもう本当に大好きで、あれがいいんだよ、おもしろいじゃん、鶴さんのあの役のあの芝居をやってよと、親方役の役者にやらせたりしていましたよ」
片岡「そっかあ、貞九郎が入ってたんだ……!これは初耳ですね」
篠田「すごい。本人登場!」
――宅間さん演じる富雄というキャラクターにも思い入れがありそうな?
宅間「キャラクターのイメージは「寅さん」ですね。前回『わらいのまち』の元になった『JOKER』(2001年)が、寅さんをやりたくて作った最初でした。僕の作品のキャラクターは寅さんに準じているところが多く、時代に合わせた肉付けはするけど、基本的にめんどうくさいやつ(笑)。『笑う巨塔』と『わらいのまち』は山田洋二監督にもたいそうお気に召していただき、そのご縁で渥美(清)さんの話もいろいろ聞かせてもらいました。『笑う巨塔』には山田太一先生も観にいらしたんですよ。“こういう富雄みたいなめんどうくさい兄ちゃんが僕らの時代にはいた”と、わざわざ直筆のお手紙もいただいた。憧れの大好きな先輩たちをリスペクトして作っているんですが、その方々にも楽しんでもらえたキャラクターには非常に思い入れがありますね。麻里子さんはマドンナで、鶴さんは……」
片岡「おいちゃん、ですね。この親方が一生懸命に生きて、一生懸命に言っている言葉が、ハタから見たらおもしろいんですね。変なことをしないで、役として存在しようと思います。宅間さんに身も心も預けちゃいます」
――篠田さんは、そのめんどうなお兄ちゃんが好き、という設定ですが。
宅間「そういうことは聞かなくても……」
篠田「いいじゃないですか(笑)。ちっちゃいころにお兄ちゃんに助けてもらったいきさつがあってのことなんですが、そこからずっと恋している純粋さが、とっても素敵だと思いました。全体的にはコメディですが、個人的にはその部分を深めていきたいと思っています」
片岡「寅さんもだけど、要はカタギじゃない、アウトローなんですね。いまはなかなか描きにくくなっている。でもね、そういう人って厄介だけど、裏を返せば純粋で、きれいな部分を持っていて、そこのところをやっぱり女性は見逃さないんですねえ。クッとツボに入ったら惚れちゃう。見ればわかるから、親父としては遠くから見守ります……!」
篠田「富雄は乱暴な感じだけど、グイグイくる女性には弱いじゃないですか。そのギャップが女子としてきゅんとくるんですよ。宅間さんがやるから余計におもしろいんです。実際そうなんじゃないかと思って(笑)。嫌がるくらいグイグイいこうかなと」
――最後に意気込みと、お客さまへのメッセージをお願いします!
片岡「では、わたしから。25年ぶりの舞台で、25年ぶりにハッチャケます。舞台で遊ぶ姿をぜひ見に来てください」
篠田「コメディはほぼ初挑戦ですが、ぜひ皆さんに笑ってもらえるよう、真剣なお芝居をがんばります。個人的には、お2人のやり取りの“貝になりたい”あたりに注目してほしいです!(繰り返しますが舞台を見てのお楽しみ!)」
宅間「コメディ舞台ってチラシに並ぶキャストの顔ぶれでお客さんの期待感が高まると思うんですが、それでいうと、今回はその期待にそぐわないような(笑)、すごいメンバーと共に作り上げます。鶴さん、麻里子さんを筆頭に、いろいろなジャンルから集まって、普通の俳優さんはいないんじゃないの?という感じ(笑)。まあ、濃い。相当に、濃い。ぜひ見逃さないでほしいんです。鶴さんがおもしろがる姿を生の舞台で見られることはそうないですから」
篠田「ヨガの先生だと思っている人もいっぱいいそうですもんね」
片岡「パンイチ(パンツ一丁)で出てくると思っていたりして(笑)」
宅間「鶴さんってこうだったの!?と若い人はびっくりすると思います。人を楽しませようとする鶴さんの原点をぜひ見てください!」
■宅間孝行
タクマ タカユキ 1970年、東京都生まれ。’97年に劇団「東京セレソン」を旗揚げ。01年には「東京セレソンデラックス」と改め、主宰・作・演出・主演として活動。12年に劇団を解散後、13年「タクフェス」を立ち上げ、秋は“泣き”、春は“笑い”を届ける。原作・脚本を手掛けた映画『くちづけ』の好評など多彩に幅広く活躍。2018年秋には舞台&映画の同時公開「あいあい傘」(監督・脚本)が決定。また2月2日、3日、11日、12日と名古屋・東京・大阪でワンマンライブも開催決定!
■片岡鶴太郎
カタオカ ツルタロウ 1954年、東京都生まれ。高校卒業と同時に片岡鶴八に師事。その後、フジテレビ『オレたちひょうきん族』で人気を博す。役者としての活躍もめざましく、第12回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞した後は、ブルーリボン助演男優賞など多数受賞。その他、プロボクシングライセンスの取得、墨彩画家として平成7年12月には初の個展を開くなど多彩な活動で話題を欠かさない。また2017年5月にはインド政府よりヨガマスター、ヨガインストラクターの称号を授与され、第1回ヨガ親善大使に任命される
■篠田麻里子
シノダ マリコ 1986年、福岡県生まれ。AKB48劇場内カフェ「48’s Cafe」のスタッフ(カフェっ娘)時代にメンバー人気投票1位獲得をきっかけに、第1期生から1か月半後にAKB48に参加。14年卒業後は、映画『リアル鬼ごっこ』(15)、舞台『真田十勇士』(16)『BIOHAZARD THE Experience』(17)と精力的に活動。18年には本作と『アンフェアな月』の舞台出演が控える。
取材・文/丸古玲子